第31話聡子の死

話が戻って

翌日一平は美優に聞いている横須賀の堂本聡子の自宅付近に行く。

「この辺りに堂本さんってお宅在りませんか?」知っているのに近所の主婦に尋ねる一平。

二月の下旬の昼間は寒いので、人通りは極端に少ない住宅街。

「ああー堂本さんなら、次の角から二軒目の家ですよ」

「済みません、ありがとうございます。処で娘さんいらっしゃいますよね、聡子さんでしたか?」一平の質問に変な顔をする主婦。

「貴方、保険屋さん?警察?」と尋ねられて「保険屋です」と答える一平。

「保険金出るのですか?出ないって聞いたけれど!病気じゃあ無いでしょう?」

「はい?」不思議そうな顔をする一平。

「娘さん去年亡く成ったから、今頃調査ですか?」

「えっ、。。。。。」驚いて声が出ない一平、次の質問が出来ずに「いつでした?」と口走ると

「保険屋さんが知らずに調査に?変な保険屋さんね、秋だわ!九月かな?十月だったわ」

「えっ、九月か十月ですか?」そう言うと女性は一平を変な人だと思ったのか自宅に入ってしまった。

「美優!堂本聡子は居ないよ!」そう言って電話をする。

「居ないって?」

「亡く成ったって、近所の奥さんが話してくれた」

「いつなの?」

「去年の九月か十月だって」

「えっ、じゃあ桂木常務より早くに亡く成ったの?」

「そう成るから、事件とは関係無い様だな」

「そうなの。。。。。。」落胆の溜息が電話口に聞える。

「もう少し詳しく調べるか?直接自宅に聞きに行くか?」

「関係が無いのなら、聞かなくても良いのでは?思い出させるだけでしょう?」

結局一平はそれ以上の事を聞くのを躊躇い横須賀を後にした。

近所の叔母さんの記憶の違いが、美優の推理を大きく妨げていた。


自宅に遅い時間に戻った一平に美優が頭を抱え込んでいた。

「どうしたの、難しい顔をして?」

「須藤瑠衣が何処にも居ない?それがこの事件を判らなくしているのよ!あのピックアップした二人が関係無いなら、もう最後の手段ね!」

「最後の手段って?」

「大村茂樹を脅すのよ!参考人として県警に来て貰うかも知れないと脅すのよ!それしか須藤瑠衣を捜す方法が無いのよ」

「俺に嘘の電話を?」そう言うと大きく頷いて笑顔で、頬にキスをする美優。


翌日一平は大村茂樹の会社に電話をすると、妻には絶対に内緒でお願いしますと断って「横須賀の堂本聡子さんです」と答えた。

「えー大村さんがお付き合いされていたのは、堂本聡子さんで間違い無いのですね」

「はい、一年程の付き合いでしたが、お父さんが大腸癌を発症されて、彼女水商売をしながら学校に通っていました。忙しくて会う機会も減って自然に別れてしまいました」

「堂本聡子さんは亡く成られています。ご存じでしたか?」

「えーーー」今度は大村茂樹が絶句した。

一平は「その後の彼女の事はご存じでしょうか?」

「いいえ、私が瑠衣と付き合い始めたのも有って、話もしませんでしたし、マンションを引き払って会う事も無く成り、自然消滅です」

「深い付き合いでしたか?」

「。。。。。。。。。。は、い」と躊躇いながらも認める茂樹は「彼女病気ですか?」

「それは判りません、私も亡く成った事しか知りませんので、これから調べる予定です」

「先方のご両親に、よろしくお伝え下さい」流石に大村茂樹も元気が無い電話で終わった。

電話が終わると直ぐに美優に伝える一平は、推理力に改めて感服した。

「至急、彼女がいつ亡く成ったか?原因は?事故?病気?仕事は何をしていたのかを調べて頂戴!一気に事件が解決するかも知れないわ」矢継ぎ早に話す美優。

美優の頭の中に仮説の推理が纏まりつつ有ったが、まだ正確には繋がってはいない。

①堂本聡子がかつみで、風俗品川ゴールドに勤めていた。

②桂木常務は加山と名乗って、堂本聡子に会った。

③初島に宿泊したのも桂木常務と堂本聡子の可能性が有る。

④堂本聡子も桂木常務も亡く成って、足立伸子の死の真相が不明。

⑤初島カジノリゾートに関連した事件に間違いは無い。

美優は堂本聡子の死因に注目をしていた。


夜に成って一平が「美優!大変な事が判ったぞ!」そう言って帰って来た。

「どうしたの?何か進展した?」

「堂本聡子は桂木常務の秘書だった」

「えー、東南物産の秘書に成っていたの?品川ゴールドの須藤瑠衣=かつみも同一人物?」

「それは明日森繁さんに、この写真を見て貰えば判るかも知れない」一平が写真を携帯から見せた。

「この写真は東南物産の時の写真ね」

「前に東南物産に尋ねた時、もう一人秘書が居るとは言ったが、具体的に話さなかったのは、既に亡く成っていたからだった」

「死因は?いつ?」

「死因は睡眠薬自殺、時期は桂木常務が亡く成って直ぐだよ!足立伸子が死ぬ一日前だ!正確には朝起きてこなかったので、翌日には睡眠薬を飲んだと思われる」

「それなら、桂木常務は殺せたのね!」

「理屈は合うな!でも桂木常務を慕っていて、常務が亡く成ってショックで発作的に死んだのかも?」

「私は品川ゴールドのかつみも、初島のかつみも同一人物だと思うわ」

「明日初島の民宿鳴海屋の柴田さんにも、この写真を見て貰う予定だ!同一人物なら秘書と深い関係だった事に成る」

「明日、大きく進展するわね!でも足立伸子さんの殺害は誰だろう?遺書とかは無かったの?」

「(お父さん、お母さん!ごめんなさい!もう生きて行けません。 聡子)」だけだったらしい」と寂しそうに言う一平。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る