第25話お強請

一平と伊藤が柏崎由希子の自宅に到着する時間に、美優の元にも宮本の奥さんが「少しの間家庭教師に来ていた男の子は大村茂樹君で、国立大の学生さんでした!遅く成ってごめんなさい」と知らせてきた。

律儀な子で年賀状を送って来ていたので、判ったのだと言うので、美優は住所を教えて欲しいと頼み込んで金沢の住所を教えて貰った。

早速電話番号で調べ様としたが登録が無い。

美優は先日の失敗も有るので、直接本人に聞いてみる事にする。

冬の金沢見物?でも寒そう!そう思いながら、この大村茂樹と云う学生が今回の事件の鍵を握っているのでは?美優の頭の中に何か閃く様な物を感じていた。


一平と伊藤が柏崎由希子の自宅に行くと「私と桂木常務の事が知られてしまったのね」と開口一番言い始めた。

「そうです!前回何故知らないと答えられたのですか?」

「だって、桂木常務さんが毒殺されたので、関わりたく無かったのよ」

「でも今は疑われていますよ」

「冗談は辞めて下さいよ!桂木常務さんとは一緒に仕事をしている関係なのよ、何故殺さなければ成らないの?常務さんが亡く成られて一番困っているのは私なのよ」

「それはどう言う意味ですか?」

「。。。。。。。。。」急に喋らない由希子。

「警察は私か錦織議員が犯人だと思っているの?もしその様に考えていらっしゃるなら、大きな間違いですよ!確かに先生と私は不倫の関係ですが、お互いに桂木常務さんにはお世話に成っていたのですよ!何故その様な大切な方を殺すのですか?」

「では足立伸子さんは?お互いに邪魔な存在でしょう?」

「。。。。。。。。。。。。」

「私は足立さんとは面識は有りません、前にもお話しましたが、ヨーロッパに行って留守でした」

「足立さんから強請られた事は有りませんでしたか?」

「。。。。。。。。。。。。それは、有りました」ぼそっと答えて「でも一度だけで、海外に行きましたので、その後は亡く成られました」

「その事、強請られた事実を誰に話しましたか?」一平が言う。

伊藤が「錦織議員も強請られたのですか?」と尋ねた。

「それは知りません、聞いていません」

「話しをされなかったのですか?錦織議員と?」伊藤が尋ねた。

一平が美優の言った言葉を思い出して、この由希子が誘惑を?

「カジノ構想が有るのですか?」

「えっ、カジノ構想って猿渡議員の?」顔色が変わって「今回の事件と関係が有るのですか?」そう言って惚ける由希子。

一平は口には出さなかったが、美優の推理が的中している事を肌で感じていた。

県警の見込みが間違っている可能性が高いと思う一平は、美優の考えを確かめ様と考え始めた。

「栢崎由希子さんと錦織議員との仲が、深い関係に成られたのはいつ頃でしょうか?」

「変な質問ですね、県警は芸能記者の様な事も調べるの?」

「いえね、私の妻がその様な話しが好きでね!」微笑みながら言うと「貴方、確か野平さんだったかしら?」逆に尋ねる由希子。

「そうですが?」

「奥さんが有名な美優さん?そうでしょう?」急に笑顔に変わって尋ねる。

「そうですよ!」そう答えると「奥様は私の事をどの様におっしゃっているの?」

「それはお答え出来ませんが、質問から察して頂きたいですね」

「判りました、お答えしますわ」

そう言って、錦織議員とは自分が女優の時から、懇意にしていて後援会の方でも世話に成っていましたが、関係を持ったのは一度だけで、それが神奈川のラブホテルだったと答えた。

付け加えて「運が悪かったのよね!その一回がこの様な事件に巻き込まれる何て!」と言った。

桂木常務との関係も認めて仲間だと証言したが、その仲間がカジノ構想で有る事を公言は避けたが、的中していると二人は思って自宅を後にした。

「美優さんの推理は、課長の意見とは真逆だったのですね」

車に乗り込むと伊藤が尋ねたので「課長の顔が有るので、今暫くは内緒で頼む」一平は伊藤に頼み込んだ。

「確かに今回の事件は複雑で、判り難い部分が多すぎます、桂木常務を殺して徳をする人が少ないですよね」

「柏崎由希子が言った仲間を殺す訳無い、特にカジノ構想は常務が亡く成って頓挫したと思う、有る程度まで根回しをしたので、口外出来なく成ったのは事実だろう」

「でも足立伸子が柏崎由希子を脅したのは、今日の証言で確実に成りましたね」

「普通なら、由希子は直ぐに足立伸子の話は桂木常務に伝えるだろう?」

「桂木常務はお金を払ってでも取り戻すだろう?事実百万が足立伸子の口座に入っていましたよね」

「その金は誰が出したのか?桂木常務、栢木由希子、錦織議員の中の誰か?」

「木南は誰に殺されたのでしょう?」

「残った二人のどちらか?でも常識的には錦織議員の可能性が高い、裏社会にもコネクションが有りそうだ」

二人はその様な話しをしながら県警に戻って行った。


自宅に戻ると一平が美優の推理が的中の様だと言うと「実は重要な事を調べる為に、金沢に行きたいのよ」微笑みながら言う。

「金沢?何それ?」

「実は武蔵小杉のマンションに家庭教師で来ていた学生は、金沢の人だったの?」

「行かなくても、警察で捜せるだろう?」

「いいえ、どうしても実際に話を聞かないと判らない事が有るのよ」

「今頃の金沢って雪で大変だろう?」

「そう、そうなのよ、だから日帰りは難しい!一泊!」

「えーー一人で一泊旅行に行くのか?」そう言うと天井を指さしている美優。

「えーー久美さんと行くの?」

「そう!もう決めたの!今頃久美さんも伊藤君にお強請りしているわ」そう言って微笑む。


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