第23話捜査方針

夜自宅に帰った一平と美優はお互いの情報が聞きたかった。

一平は柏崎由希子がラブホテルで錦織議員と密会していた事実は認めたが、ボイスレコーダーの事は認めなかったと話した。

美優が何か気に成った点は?の質問に、桂木常務が何故殺されたのかが理解出来ない様だったと答えた。

「私の疑問と同じ部分で柏崎さんも、不思議に思っていたのだわ」

「それはどう言う事だ?」

「柏崎由希子さんがボイスレコーダーを忘れたとして、それが原因で足立伸子が強請ったのなら?と思ったのよ!桂木常務と柏崎さんが知り合いなら?その錦織議員との仲は深い関係では無かったら?」

「えっ、美優は二人の関係が深い仲では無いと?」

「人身御供なら?」

「人身御供?柏崎由希子が錦織議員を取り込む為の道具?」

「それも有るかも知れない、もう少し詳しくホテルの聞き込みをしてみて、二人が帰った後誰かが忘れ物を捜す電話をした可能性も有るわ」

「美優は何を考えているのか俺にはさっぱり判らない」一平が美優の考えに付いていけなく成った。

美優は自分が行ったマンションの近くに在るハイツ茜の、昔の住人リストを管理会社に頼んで有るので、静岡県警から話して貰う様に頼んだ。

「そんな小さなマンション在ったかな?でも何故、関係無いマンションの住人の?」

「そのマンションから、かつみさんが308号室を見ていたかも知れないの」

「えーー風俗嬢のかつみが、そのマンションに住んでいたのか?」

「可能性が有るのよ!武蔵小杉駅は品川まで十分、もし大学が国立なら半時間で行けるのよ」

「成る程、流石は美優だ!」と褒めた一平。


だが翌日届いた書類には、自宅の住所と名前で職業欄は殆ど学生と書かれている。

取り敢えず資料を自宅に持ち帰るが、学生が多いので殆ど四年ないしは三年で変わっている。

中には一年とか二年で転居している学生も居て、人数は相当多い。

美優は取り敢えず遠方の学生から調べる事にした。

二十軒のワンルームマンションの住人が、これ程沢山居る事に驚きながら調べる美優。


翌日の捜査会議では横溝捜査一課長が、一連の事件に方向性が見えてきたと説明。

ただ関係者が現役の国会議員なので、もう少し証拠を固めてから錦織議員と柏崎議員を事情聴取すると発表した。

①事件は国会議員の不倫が基本に成っている。

②桂木常務がこの不倫の情報を手に入れる為に、足立伸子に近づいていた。

③日頃から女遊びの多かった桂木常務は静岡方面で度々遊んでいた。

④情報を掴んだ二人が錦織議員と柏崎議員を強請った

⑤結果次々と二人が殺されてしまって、偶然殺害に使われた青酸性の毒物が桂木常務の持って居た物ではないかとの証言で、我々は勘違いをした様だ。

⑥錦織議員が裏の組織を使って殺した可能性も有るが、その辺を慎重に調べる事。

⑦木南信治はこの二人のどちらかを強請に行って、逆に殺されたと思われるが、裏組織の犯行に手口が似ている。

「以上の点の裏付け捜査を今日から全員で行なう事にする」

一平が「美優が桂木常務と関係の有った風俗嬢、かつみを捜していますが?それはどの様に致しましょうか?」

「今回は奥さんの推理が少し違っていた様だが、桂木常務が初島とかに一緒に行った女性が見つかると、毒殺された経緯も知っている可能性が有るので、引き続き捜して貰いたい」

「しかし、自分達の不倫で人を三人も殺しますかね?」佐山が言う。

「錦織議員は将来の総理候補だ!今のタイミングで不倫が世間に知られる事は大きな問題だろう?」

「それと錦織議員は若い時から柏崎由希子のファンで、ファンクラブにも入っていたとの情報も入っています」

「やはり、その様な行動をして、後援会の会長もしたのだから、間違い無い!ボイスレコーダーが見つかれば総てが判明するのだが、誰が持っていると思う?」横溝捜査一課長が全員に尋ねた。

「木南信治はコピーを持っていたので、自宅を荒らされて本物を探したのだと思います」

「それでは元のボイスレコーダーは足立伸子が、錦織に渡して殺された?」

「僕が柏崎由希子に聞いた時、彼女は桂木常務が殺された事に対して、不思議そうな感じだったのです」一平が発言した。

「それは錦織議員が桂木常務を殺すとは思っていなかったのだろう?」

「課長、カジノ構想の話しはどの様に繋がるのでしょう?」佐山が尋ねる。

「佐山君、それは柏崎由希子が殺人事件をカムフラージュする為に、流したデマだよ!たまたま桂木常務が女性と初島に遊びに行ったのが、事件に結び付いて全く存在しないカジノ構想に成ったのだ」横溝捜査一課長は自分の話に酔い、物証と裏付けを今日から徹底的に捜す様に指示して会議が終了した。

錦織議員が神奈川県警の管轄に成る為、一応横溝捜査一課長は神奈川県警に仁義を通す事を忘れなかった。

神奈川県警からは、政界の大物だから完璧な証拠を掴むまでは、手出しは控えて欲しいと言われ、監視等は神奈川で行ない状況はお知らせすると丁重に断られる。

その為静岡県警は柏崎由希子の身辺を徹底的に調査する。

特に柏崎由希子と桂木常務に接点が無いか?徹底的に調べ始める。


数日後美優は数人の女性のリストを作成して、一平に「この中に須藤瑠美、加山かつみが居ると思うのだけれどね」と見せた。

渡辺操(島根県)工藤香奈(秋田県)大木志保(北海道)

「近所にも候補の女性が数人居たのだけれど、最後まで学校に行ってないから、外したのよ!少なくても無理してでも最後まで国立なら行くでしょう?だから二年で退学した学生は除外」

「美優の高学歴に対する偏見じゃあ無いの?国立でも途中で辞める人居るよ」

「とにかくこの三人が風俗で働いていた実績が有るか、調べて貰える?」

美優はかつみと加山かつみが同一人物なのか?に焦点を絞っていた。

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