第13話予期せぬ妊娠

しばらくして柏崎由希子の本題に入って、静岡で国家的プロジェクトを行なう為に力を貸して欲しいと云う内容で、具体的な事は敢えて言及しないで、食事が進み芸能界の話しとか国会での出来事に終始した。

桂木常務は柏崎の仕事の内容は既に知っているので、敢えて聡子に聞かせる事をしなかったのだ。

そのプロジェクト事業を東南物産が総元請けに成って、関係先に振り分ける事に成る様だ。

一手に引き受けると言う確約の様な今夜の招待の様相だった。

二時間の会食の後、お酒が入った桂木常務は柏崎を見送ると時計を見て「少し行くか?」とタクシーの手配を仲居に頼んだ。

「私はそろそろ。。。。」

「付き合えないのか?」恐い顔に成る桂木常務。

そこにタクシーが到着したと云う連絡に、料亭を降りるエレベーターに乗り込むが、同乗者が居るので紳士的に成る桂木常務。

タクシーに乗り込むと早速ラブホの名前を言って、タクシーは走り出すが聡子はその名前がラブホだとは知らない。

「運転手さん、中まで頼むよ」そう言って万札を小さく畳んで渡す。

上機嫌の運転手は少し酔っている女性を無理矢理連れ込んで、強姦するのだと解釈した。

少し酔った聡子はこの後この常務とどの様にすれば良いのだろうか?明日からの事を考えていた。

「何処でも良いので最寄りの駅で降ろして下さい!今夜はもう遅いですから」と言うがタクシーは地下道の様な場所に入って止った。

「降りて」そう言って急かす桂木常務、タクシーを降りて直ぐにここがラブホだと気が付いたが、桂木が降りるとドアを閉じて走り去ってしまう。

「ここまで来て、子供じゃあ無いのだから、入るぞ!」隣の扉に向かうが、聡子の手首を持って離さない。

「今夜は嫌――」その様に言って叫ぶが「彼氏が中国から帰られなく成るぞ!」と言われて急に項垂れる。

そのまま室内に入り、後は桂木常務の思うまま衣服を脱がされて、二人は初めて関係を持ってしまった。

「風俗の時と違って、色っぽく大人の感じに成ったな!初めてだったが中々良い道具を持っているな!昔に無理矢理でも使うべきだったな!」そう言って笑う桂木は満足して、タクシーで横須賀まで帰れとチケットを渡した。

聡子は虚しい思いをしながら自宅に戻って、シャワーを浴びて桂木の臭いを消し去ろうとした。


数日後、夕食の時「驚くよ!あの孝一が未だ入社僅かで、主任に昇格したらしい」父の浩が半分驚き、半分嬉しそうに語った。

聡子はまた、桂木常務の計らいか?あのノー天気の兄が出世するって考えられない出来事だった。


その後月に一度程度の割合で身体を求められる聡子、桂木が言うには中々の持ち物だと気に入っている様子。

夏頃から月に一度は必ず静岡に同行する様に成り、一流の旅館に宿泊の時も有ればラブホテルの場合も有った。


年末に成って、漸く恋人の植野晴之が中国から一時帰国した。

何故か盆には帰って来なかった晴之を、待ち焦がれていた聡子はもう寂しくて我慢が出来ない状況に成っていた。

晴之が帰って来ればあの桂木常務と別れる事が出来る。

「何故?夏には帰られなかったの?待っていたのよ」

「それが支店長に急な仕事を頼まれて、北京に飛んでいたのだよ!中国は広いから仕方が無かった!ごめんな!」

そのまま二人はラブホテルに向かって、久々の時間を過した。

桂木常務とは風俗嬢の様なベッドだが、晴之とは本当に心の底から燃える聡子。

だが晴之の日本滞在は僅かで、一月の四日には日本を発って上海に向かってしまった。

もう一年と少しで戻って来るので、結婚出来ると指折り数える日々に成る聡子。

相変わらず、月に一度程度桂木常務に身体を求められるが。。。。。。。。


二月の下旬に成って身体に変調を感じ始めた聡子。

生理が来ない事を不思議に思っていたが、桂木常務とは必ずゴムをする事を忘れない聡子だから、年末晴之とのSEXで妊娠したのでは?と思い始める。

市販の検査薬で調べると間違い無く妊娠を示す。

半分は嬉しい、半分は困ったと思う聡子は思い切って桂木常務に話して、別れて欲しいとお願いする事にした。


数日後頃合いを見て「実は子供が出来た様なのです」と切り出すと「えー、私の子供が出来たのか?」驚く。

「違います、彼氏が正月に戻った時に宿ったと思います」

その言葉が桂木の嫉妬心を呼び起こしてしまった。

「それで彼氏は知っているのか?」

「いいえ、まだ病院に行ってないので、話してはいません」

「どうする気だ!」語尾が荒い桂木常務。

「私は産みたいと思っています、来年彼が帰って来ると三人で生活出来ますから喜ぶと思います」

「だが本当に彼の子供だと何故判るのだ!私の子供かも知れないだろう?」

「多分それは無いと思います」

「そうか、しかし妊娠検査薬だけでは判らない部分も有るな、一度病院で診察を受けなければ母子手帳も貰えないからな!」

「常務さん、産んでも良いのですね」嬉しそうな顔をする聡子。

だが、桂木常務は全く異なる事を考えていた。

自宅に帰っても家族に、来年彼が帰って来たら直ぐに結婚しても良いでしょう?と話す。

「植野君はどの様に言っているの?」

「来年帰って来たら結婚したいと、言っているわよ!家族も賛成だから、直ぐに子供を、、、産休を取って三十歳までには二人は産みたいわ」

「もう子供でも出来た様に言うな」浩が聡子の喜び様に笑顔で話した。

「大きな会社は福利厚生がしっかりしているから、安心だわね」母もそう言って喜んでくれた。

「産休と育休で二年近く休めるわ、その間に二人目が宿れば働かなくても直ぐに三十歳に成るわ」

「その様な贅沢を考えたら罰が当たるわよ!世の中その様な有給を取れない企業が多いのよ!」昭子は子供を戒めるが、既に妊娠している聡子には馬耳東風の様だった。



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