第3話青酸性の毒物

晴之は聡子に自分の会社には就職しないで欲しいと言い。

社内恋愛が聞こえると、直ぐに転勤をどちらかが銘じられると言った。

自分が風俗に勤めていた事を悟られない様に注意して付き合い、身体の関係も中々許さない。

晴之も国立大卒の頭デッカチ女性だが、比較的美人でインテリの感じを表に出さない所が良いと思う。

簡単に誘いに乗らない事が興味をそそった。

晴之は私立大学で聡子の学校に比べると多少劣る事も二人の関係を親密にさせた。

付き合い始めて三ヶ月目のある日、レストランのテーブルに携帯を忘れてトイレに行った時に運悪く加山が電話を掛けてきた。

加山が一番多く聡子を呼んだので、聡子も加山には電話番号を教えていた。

他の二人にはメールアドレスのみを伝えている。

「加山さんって男の人から、電話が入っていたよ!」

その言葉に一瞬驚くが冷静を装うと「親戚のおじさんが何かしら?」と惚けた。

加山の叔父様と着信時に判る様にした事が、窮地に立たされた聡子。

その後の二人が少し変な空気に成った事を聡子は後悔した。


翌日メールで毎日の様に挨拶してくれる関西の北畠に、自分がメールする迄挨拶メールも送らないで下さいとお願いした。

何故と聞かれて、彼氏が出来たので困るのよ、また機会があれば自分の方から連絡しますと、事実上の決別を言った。

赤木には個人的に会いたいと再三誘われていたが、本番行為は嫌だから無理と断り続けていた。

そしてお付き合いをする男性が出来ましたので、もうメールも出来ませんと一方的に断った。

二人には何とか決別をしたが、問題は加山の存在だった。

赤木以上に定期的に会いたい、月に幾らかの小遣いを払うから考えて欲しいと必要に迫られていた。

聡子は風俗のバイト中も一切本番行為は拒絶して、必要に迫る客には店に報告して出入り禁止にしますと脅していた。

少しの間、家族の為に苦渋の決断で風俗のバイトをしていたので、どうしても自分に対して許す事が出来なかった。

三人の叔父様は優しくて、可愛がってくれたが一線は守ったのだ。

加山にも赤木と同じ様に話すと「彼氏と別れた時に例の件承諾して貰えるなら、ここは引こう!」とまるで晴之と別れるのを予想している様に言った。

「お父さん、前田機械だしな!」と話した事も無い父の会社の名前を言った。

電話を切られて、顔面から血の気が引くのを聡子は生まれて初めて知った。

何度か会う間に色々と話してしまった事を後悔したが既に遅い。

父に自分のバイトの話でも伝わったら大変な事に成る。

そう考えているとメールが届いて(聡子さんが約束を守れば、絶対に私も守ります!聡子さんが幸せならそれが一番だから、安心して下さい!彼氏と仲良く幸せに!)と書いて有った。

冗談とも本気とも思えるメールだが、その日を境に三人の叔父様からは、電話もメールも届かなく成った。


話しが戻って

梅林公園の死体、中年の女性以外には身元が判明する様な持ち物が全く無い。

死体の解剖で毒物が同じだと判明した以外には、桂木洋三との共通点は何も無かったが、青酸系の毒物が昭和三十年代のメッキ工場で使われていた品物だと判明したので、同一犯の犯行だと決まった。

「一平ちゃん!梅林公園の死体の身元が判明したの?」自宅に戻った一平を待ち兼ねて尋ねた。

「全く判らない!届け出も無いし服装は質素で桂木さんの家族に写真を見て貰ったが知らない人だった」

「服装が質素なら、桂木さんとは住む世界が違うわね、相手は大会社の重役さんだからね!」

「そうなのだよ、同じ場所で殺されていたらともかく、場所も全く違うからな!」

「モンタージュ公開まで、手掛かりが無い様な感じね」

美優は一平からの情報を元に推理をするのだが、今回は全く共通点が無いので偶然?とも思うが青酸性の毒物が昭和三十年代の物で、最近では全く無いし手に入らない。

桂木は缶コーヒーを飲んで、女性は缶の緑茶どちらも大手の自販機で販売されている。

「缶コーヒーとか、缶のお茶を近くで買ったのでしょう?殺害現場の近くで不審な人が買った形跡が無いの?」

「どちらも大手の自販機で、町中に沢山有るよ!それに今の季節はホットもアイスも飲むからな」

「お茶はアイス用とホット用は違うわよ」

「そういえば、これはどちらだ!」写真を手帳に挟んだ中から、選び出して見せた。

「これはアイス用だわ!朝からアイスを飲むかな?もう朝は少し寒いのに!」

「そうだな!死亡推定時間は、夜の二時から五時の間だ」

「十月の下旬の夜明け前は、寒いから絶対にアイスを飲まないわ」

「でもこの茶は自販機専用の形なのだよ!」一平が頭を抱える。

「桂木さんの事件の目撃者は居ないの?」

「多分殺害現場は別の場所だと思う!」

「運転席に座って死んで居たけれど?運転して来た感じが少し変だった」

「それは一平ちゃんの感?」

「刑事の勘!」

「一度資料借りてきてよ!」

「えー、美優がまた首を突っ込むの?」

「静岡県警さんに任せておけないでしょう?犯人の頭の良さが見える様な感じがするからね!」

「東南物産って、何でも扱う総合商社で桂木さんは筆頭常務で、今年中には専務昇格は間違い無いと噂が有った様だ!」

「出世争いの殺人?」

「でも無い様だけど、敵も多いだろうと思う!」

「人間関係は?例えば女性関係?」

「特別な人は居なかった様だが、遊びは好きだった様だ」

「愛人とかは面倒くさいと思う人ね」」

その後も二人の話は夜中まで続いた。



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