第2話インテリ風俗嬢

翌日静岡県警に合同捜査本部が設置された。

理由は毒物が全く同じ成分の青酸性の毒物と判明したので、捜査本部が静岡県警に置かれ殺人事件に成った。


話しは数年前に戻って

聡子はお酒が飲めない事がスナック勤めに向かないと思い仰天の決心をして、風俗で働かなければ難しいと思い始める。

大学入学と同時に一人暮らしのマンションに住んでいたが、引き払い自宅に戻った。

そして家族にも友達にも内緒で、品川の風俗店に電話をすると直ぐに面接の日取りが決められた。

大学一年生の時、友人の知り合いの男性と付き合いその学生と初体験から数回のSEXは体験していたので、勇気を振り絞っての風俗挑戦に成った聡子。

顔は目を見張る程の美人では無いが、持ち前の頭の良さで相手に話しを合わせる事は上手だ。

(品川ゴールド)と呼ばれているデリヘルはチェーン店で系列店が多く、一度風俗に足を踏み入れたら六十歳まで働く事が出来る店舗構成に成っていた。

最近では若い女性が小遣い稼ぎの為に、数ヶ月の間仕事をして去る場合も多かった。

面接官の森繁は聡子を一目見ると、全くの素人娘だと判る。

話しをしていると、とても長い間この仕事が続けられる女性では無い事が理解出来た。

森繁は「半年でも真面目に働けば結構なお金に成りますよ」と不安を取り除く。

「私、全くの初めてなのですが働けますか?」

「当店は他店と異なり、オープンなチェーン店ですから、墨を入れた女性でも大丈夫ですし、全くの素人の方でも専門のスタッフが実地指導を行ないますから、大丈夫です!勿論本番行為は行ないませんので、安心して下さい」そう言って安心させた。

パンフレットを見て「沢山お店が在るのですね、マッサージ店も?」系列の店が多いのだと思った。

「はい、そのお店で働くにはマッサージの練習を約一ヶ月しなければ働けないので、堂本さんには時間的に難しいと思いますよ」

「はい、直ぐにお金が必要なのです」

「当店はその日に支払いますので、お客様から頂いた金額から車代を差し引いた金額の半分が堂本さんに支払われます」

「その日払いなのですか?」

「そうですよ、例えば五万の客三人なら半分の七万五千円が最終で支払われます、時々一日で合わないと辞める人も居ますが、その場合でも減額に成る事は有りません」

その日払いは聡子には最高に嬉しいシステムだ。

スナックを辞めたので、直ぐにでもお金が必要な聡子。

「もし働くなら、写真撮影をしてアップすれば明日からでも働けますよ」

聡子は今日思い切って働かなければ、二度とこの様な場所では働けないと「お願いします!」と言ってしまった。

「隣のスタジオで撮影するから、行って下さい係が居ますよ!」マンションの隣の部屋に案内されると、カメラマンの男性と中年の叔母さんが「撮影ね、そうね!貴女ならこの清楚系の服が似合うよ!適当に写せば修正で綺麗に出来上がるし、知り合いが見ても判らない程変わるから、安心すれば良いわよ」

簡易の衝立の奥で着替えると、自分では無い様な感じに成って撮影が行なわれる。

「次はこの下着で撮影だよ」女は白のレース柄の下着を差し出す。

驚き顔に成る聡子に「どうせ修正で殆ど元の姿は無いのだけれど、一応元を作らないとね」

そう言われて、恥ずかしそうに着替えるとポーズを要求されて、十枚程度の下着姿の撮影が終わった。

帰り道もう後戻りは出来ないと心に決めて横須賀の自宅に戻った。

相変わらず母は病院の付き添い、兄は何処かに行って留守。

勉強の遅れを取り戻す為に夜遅くまで机に向かい、深夜の二時に終わった。


翌日昼間は大学の授業に出て、夕方からデリヘルの事務所に向かい今日から客を。。。そう考えると気が重くなる。

彼氏以外で初めての男性の相手を出来るだろうか?その心配が頭を過ぎる。

事務所に行くと「名前はかつみちゃんにしよう」森繁が言った。

そして仕事の前に練習をしましょうと、今度は右隣のマンションに連れて行かれて、そこでテキストを見ながら実地練習が始まったが、恥ずかしそうに裸に成ると基本だけ教えるから、後は恥ずかしそうにしていたら男が勝手に遊ぶよ!と教えてくれた。

しばらく練習をして事務所に戻ると「今夜のお客は紳士的な赤木さんって人にしたから安心して、六十歳のおっさんだけれど、誰からも好かれている人だ」と言われてホテルにドライバーが送って行った。

名古屋から来た赤木は、本当に紳士的でお風呂に一緒に入って殆ど話をして二時間が終わる。

これで二万五千円貰えるなら簡単だと思う聡子は、風俗の仕事を甘く見て始めてしまった。

それでも働ける日にちは週に一度か二度、スナックよりもたった二日、目を瞑れば数万円から数十万円が稼げる。


その後特に赤木さんと、関西から来る北畠さん、東京の加山さんの三人は年齢も近くて紳士で、聡子が入ると必ず呼んでくれるのが加山だった。

赤木と北畠は遠方なので、月に一度だが加山は月に最低二度、多い時は三度も呼んでくれたのだ。

その為三人には気を許してしまう聡子は、自分が横須賀の出身で国立大学に通っていると話してしまった。

数ヶ月して父治の大腸癌の進行が止り、職場復帰が出来る状態に体調が戻った。

聡子は夜のバイトの時間を大きく減少させて、三人が呼んでくれる時だけ出勤する様に成り、今年で風俗の仕事を辞めて来年から就職活動をする事にした。

三人にはラインで話しをして、今年限りでもう会えませんと伝えて、最後の夜を三人三様で過した。

長い時間の加山は三時間以上、他の二人も三時間の時間を楽しく過した。

「良い大学卒業するから一流企業に勤めるのだろうな?」三人が同じ様な事を聞いた。


勿論上場企業で難関と言われている企業に就職したいと考えて、年が変わると聡子は企業説明会等々に積極的に参加して、四月からの四回生に成ったら直ぐに内定が貰える様に頑張ろうとした。

二月に会社訪問をした時、柳井工業と云う上場会社で、聡子に親切にしてくれた社員に一目惚れをしてしまう。

以外と彼、植野晴之も聡子に興味を持ち付き合いを始める事に成った。

年が変わって急に運が向いてきたと嬉しく成る。

去年の今頃は最悪の状況が、今年は父の病気も快方に向かい、就職活動も出来て彼氏も出来たと大喜びに成っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る