第14話 クリスの頼み

「諦めないから!」


「.....いやいや、だからって家に来るなって.....」


「私こそ飯島先生の作品を煌めかせれるのよ。だから飯島先生を渡すまで帰らないわ」


「.....お兄ちゃん.....困るよね」


まさにその通りです。

ってか、もうどうしろってんだ。

今現在、クリスが居候している。


このお方を.....どうしたら良いか案が欲しいな。

どうやったらこの家から追い出せるのかを、だ。

思いながら.....目の前に仁王立ちしているクリスを溜息混じりで見る。


「.....お前さ、取り敢えず帰って着替えたら?制服のままじゃ無いか」


「馬鹿言わないで。私はぜっったいに帰らないわ」


「.....ハァ.....」


面倒臭い.....。

そうしているとインターフォンが鳴った。

俺は、まさか、と思いながら立ち上がってそして玄関から出る。


そこには飯島先生が立っていた。

絵を教える為に来た様だが.....。

何というバットタイミングなんだろうか。


「えっと?どうしたんですか?山田先生」


「.....いや.....何でも無いです」


「今日も星座さんに絵を教えに来ました」


「有難う御座います.....」


するとクリスが、何事よ?、的な感じでリビングから覗いてきた。

それから驚愕の眼差しを向ける。

そして俺の胸ぐらを掴んで、何で飯島先生が居るのよ!?!?!、的な感じで俺を見つめてくる。


「星座の為に絵を教えに来てくれているんだ。わざわざ。ってか離せ」


「星座?.....ああ。貴方の妹さん.....」


「.....そうだ。だから飯島先生が来ている」


「.....」


顎に手を添えるクリス。

俺はその姿を見ながら飯島先生を招き入れる。

そしてクリスを玄関から放っぽり出して.....という事をしたらクリスが怒った。

何をするの!的な感じで、だ。


「.....良いじゃねーか」


「ハァ!?.....良いじゃねーかじゃ無いわよ!貴方!」


「分かったけど取り敢えず邪魔をするなよ」


「.....ったく」


俺は部屋に戻る。

そしてクリス、俺、星座、飯島先生が揃った。

それから飯島先生がクリスに向く。

そうしてから頭を下げた。

自己紹介の様だ。


「.....初めまして。クリスさんですよね?私は.....飯島餡です」


「は、はい。初めまして.....お顔をモニターじゃ無くて拝見するのは初めてです」


「.....ですね。私も初めてです」


是非とも宜しくです、とクリスに手を差し出した飯島先生。

それから.....握手をしてから俺を見る。

何でいちいち俺を見るのだ。

クリスは顎に手を再び添える。


「妹さんの為に.....飯島先生が来るなんて.....信じられないし有り得ないわ」


「まあそうだな。.....邪魔するなよ」


「しないわよ」


「お前の事だからどうだか」


貴方は私を何だと思っているのかしら。

ビシッと俺に指を立てながら.....怒る、クリス。

そうしてから.....クリスは飯島先生と言いながら見た。

心の底からの願いを言う感じで、だ。


「.....はい?」


「.....私の作品の作画を担当して下さりませんか」


「え?」


「いや、おま。.....いきなりだな」


何をやってんだコイツ。

思いながら俺は額に手を添える。

飯島先生も困惑しながら.....目をパチクリした。

そして.....でも.....クリス先生は良いイラストレーターが居ますよね?と言う。

でも先生の絵が良いんです、とクリスは頼み込んだ。


「そうなんですね.....でもすいません。私は.....今度は山田先生の絵を担当したいのです」


「.....そう.....ですか......」


クリスは俯く。

その事に.....俺は少しだけ複雑な面持ちになる。

でも.....これはもう決まっている事だしな。

思いながら.....クリスを見る。


「.....でもその熱意はしっかり受け取りました。私は.....クリス先生の件も何とかします」


「え?ほ、本当ですか!?」


「.....はい。でも.....まだちょっと待って下さいね。調節しないといけないからです。日程とかをです」


ですね!とクリスは笑顔を見せた。

こうしていると可愛いなコイツ。

思いながら.....星座を見る。

星座は、.....良かったね、お兄ちゃん。的な顔をしていた。

するとクリスが.....星座の絵を見る。


「.....でも飯島先生が認める絵.....確かに上手いわね。.....そうだ!星座さん。貴方、今だけ私のラノベの絵を担当しなさい!短編集を出すの。今度」


「.....ハァ!!!!?」


「え?私.....え!?」


この野郎!

次から次に変わりやがって!

って言うかそんな事させるか!

俺の義妹だぞ!

クリスの絵を担当しても良いけど嫌がるだろ。


「.....え.....でも私は.....まだ素人なのに?」


「関係無いわ。飯島先生が認める人だもの。絶対に大丈夫よ」


「.....ハァ.....お前と言う奴は」


「何かしら?」


俺に眉を顰める、クリス。

星座はマジに困惑している。

どうしたもんか、という感じで、だ。

そもそもお前.....星座は仕事をした事が無いんだぞ。

それにコロコロ変わりやがって.....。


「.....星座さん。如何でしょうか」


「.....でも私.....ご迷惑になるんじゃ.....」


「そうですね.....」


でも、と星座は顎に手を添えた。

そして.....俺を見てからクリスを見る。

?を浮かべるクリスに.....星座は頷いた。

そして.....俯いてから顔を上げて言葉を発する。


「.....私、やってみます」


「.....え?.....え!?星座!?」


まさかだろ。

言葉に俺はかなり目が丸くなった。

俺に向いて.....星座は言う。

何故その様な感じで決めたのか的な感じで、だ。


「.....私、お兄ちゃんの本の挿絵を描くにはやっぱりそれなりに経験が不足していると思っています。だからもし描くなら.....学習してから描きたいです。クリス先生の所で勉強がしたいです」


「.....貴方.....」


クリスは笑みを浮かべた。

ええ。.....勉強して良いわよ、的な感じで頷く。


「でも手抜きはしないでね」


「はい」


俺は.....少し不安だったが。

星座が.....自分で指し示した道を.....歩もうとしている。

俺は.....改めて星座を見る。


「.....じゃあこれは本格的に七島さんに話さないとな。今までは教えてもらうだけだったから良かったかもだけど.....」


「.....だね。改めてパパに許可を貰って.....それからだね」


そんな会話をしていると。

クリスが溜息を吐きながら苦笑した。

そして.....俺達をそれぞれ見る。


「.....本当に貴方達は仲が良いのね」


「まぁ.....仲が良いっつーかって感じだ。当たり前だろうしな」


「だね。うん」


こうして。

クリスに一応、予定として雇われた形になった星座。

取り敢えずは.....鍛えるという事で雇われたのだ。

この先がどうなるかは分からないけど。

取り敢えずは良い感じなんじゃ無いだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る