第4章 クリスと俺と

第12話 クリス・ファーレン

星座は言った。

お兄ちゃんを見ていると.....胸が熱くなる、と。

これは.....多分、直球で言わなかったけど.....恋だ。

俺は.....困惑したが。

星座はこの様に言ってくれた。


「私は義兄妹の関係を続けたい」


と、だ。

俺は、そうだな、と回答した。

そして俺達は.....元の義兄妹に戻り。

それから.....丁度、1日が経った。



「お兄ちゃん。朝だよ」


「うーん。後5分!」


「そんな事を言っている場合じゃ無いよ。お兄ちゃん。遅刻する」


「うーぬ.....」


朝。

今日は.....決戦の金曜日。

テスト当日の朝だ。

うわ、面倒臭い。

思いながら.....布団に包まる。


「もー。起きないと。朝だよ」


「.....お前だけ学校に行ってくれ。俺は篭る」


「卑屈な事を言わない。学校大事」


「.....うー。意地悪」


可愛く言っても駄目。

と冷たい言葉をかけられて.....俺は仕方が無いと起き上がった。

そして.....目の前の星座を見る。

星座はニコッとしていた。

俺は頬を掻く。


「.....おはよう」


「.....」


「.....何?お兄ちゃん」


ジッと見ているとそう言われた。

俺は.....赤面で少し俯く。

そして.....苦笑した。

それから.....星座を見る。


「.....いや。ちょっと昨日の事を思い出してしまって.....」


「.....!.....もう。恥ずかしいからやめて」


「.....ハハハ.....」


はにかみ笑いする俺。

そしてもう一度、もう、と頬を膨らませて言いながら星座は駆け出した。

それから.....俺に向く。

早く降りて来てね、と笑みを浮かべて、だ。

俺はその言葉にゆっくり答える。


「.....はいよ」


「うん。.....じゃあね」


そして星座は去って行った。

後に残された俺は.....着替える為に棚を開ける。

その際に.....親父の写真立てが見えた。

俺は.....少しだけ悲しげな表情を浮かべ。

そして頭を下げる。


「親父。有難う。きっとアンタのお陰もあって.....星座に巡り合えた。七島さんに巡り合えた。.....感謝している」


ニコッと歯を見せて病室で微笑んでいる親父を撮影したものだ。

何も言わなかったけど.....親父ならこう言うだろう。

お前なら.....しっかりしているから大切に出来る筈だぜ、とだ。

俺は.....少しだけまた悲しくなりながらも.....挨拶して。

そしてドアを閉めた。



思えば、ここまで星座と仲良くなれるとは思って無かった。

これもきっと.....親父のお陰なのかも知れない。

俺は.....笑みを浮かべながら.....星座を見る。

星座は一生懸命に鮭の骨を解体していた。

それを見ながら.....七島さんが星座の頭を撫でて俺に向く。


「.....君達がここまで仲良くなってくれて良かったと思ってる」


「.....七島さん?」


「.....佳代子のお陰だと思う。そして.....君と和子さんの.....御二郎さんのお陰だ」


「.....はい」


俺は少しだけ柔和な笑みを見せて。

そして母親を見た。

母親は俺に向いてから七島さんに向き、そうですね、と呟く。

それから.....俺と同じ様な笑みを浮かべた。


「.....テスト頑張って」


「.....はい」


「星座も頑張って」


「.....うん。パパ」


そして、じゃあ.....先に行くね、と立ち上がった。

食器を片付けてから俺達に手を挙げてドアから出て行く。

七島さんは最近、業務が忙しくて朝が早い。

それだけ.....俺達の為に頑張ってくれているという事だ。

良い人を見つけたもんだな。


「お兄ちゃん」


「.....何だ?」


「.....昨日の事は.....秘密にして」


「.....!.....だな」


なになに?何の話かしら?

と母親が首を突っ込んでくる。

俺達は首を振って、何でも無いです、と答えた。


そうだな.....家族関係を壊すのも如何なものかと思うしな。

だから秘密にした方が良いだろうな。

時計を見てから、行くか、と思う。


「.....遅刻しちまうな.....」


「あ、そうね。早く準備してから出なさい」


「.....うん。行こうか。お兄ちゃん」


食器を片してから.....リビングのドアを開ける。

そして.....玄関ドアを開けると。

目の前に.....中学生ぐらいの.....いや。

この辺の中学の制服を着た、直毛のロング金髪少女が立っていた。

碧眼でかなり可愛い顔で童顔だが重みが有る。


まるでその、風格が相当有る様な。

俺を見て腕組みをしているが.....って?、え?

そんな光景に俺達は顔を見合わせてその娘を見る。

するとその碧眼少女が口を開いた。


「.....貴方が田中耕作さん?」


「.....そうですが.....誰.....かな?」


「私は.....クリス・ファーレン。14歳、アメリカ人です。.....でもペンネーム、七色、と言った方が分かり易いですかね。ラノベ小説家です」


「.....七色.....え、七色!!??!」


七色。

単純な名前だが.....この名前は.....確か。

あの有名レーベルの1000万部売れたラノベ、異世界の手紙、の作者か!


確かに知っている名前だが.....また少女かよ!!!!?

こんな中学生が1000万部の作者だったのか!?

と俺は驚愕しながら.....見つめる。

すると少女は不愉快そうに俺を見た。


「.....単刀直入に言います。.....飯島先生を渡しなさい。私の小説の挿絵を描いてもらいます。貴方の様な人では駄目ですから」


星座も俺も目をパチクリした。

そして.....新たな風が吹こうとしている。

少女を中心として、だ。

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