第4章 クリスと俺と
第12話 クリス・ファーレン
星座は言った。
お兄ちゃんを見ていると.....胸が熱くなる、と。
これは.....多分、直球で言わなかったけど.....恋だ。
俺は.....困惑したが。
星座はこの様に言ってくれた。
「私は義兄妹の関係を続けたい」
と、だ。
俺は、そうだな、と回答した。
そして俺達は.....元の義兄妹に戻り。
それから.....丁度、1日が経った。
☆
「お兄ちゃん。朝だよ」
「うーん。後5分!」
「そんな事を言っている場合じゃ無いよ。お兄ちゃん。遅刻する」
「うーぬ.....」
朝。
今日は.....決戦の金曜日。
テスト当日の朝だ。
うわ、面倒臭い。
思いながら.....布団に包まる。
「もー。起きないと。朝だよ」
「.....お前だけ学校に行ってくれ。俺は篭る」
「卑屈な事を言わない。学校大事」
「.....うー。意地悪」
可愛く言っても駄目。
と冷たい言葉をかけられて.....俺は仕方が無いと起き上がった。
そして.....目の前の星座を見る。
星座はニコッとしていた。
俺は頬を掻く。
「.....おはよう」
「.....」
「.....何?お兄ちゃん」
ジッと見ているとそう言われた。
俺は.....赤面で少し俯く。
そして.....苦笑した。
それから.....星座を見る。
「.....いや。ちょっと昨日の事を思い出してしまって.....」
「.....!.....もう。恥ずかしいからやめて」
「.....ハハハ.....」
はにかみ笑いする俺。
そしてもう一度、もう、と頬を膨らませて言いながら星座は駆け出した。
それから.....俺に向く。
早く降りて来てね、と笑みを浮かべて、だ。
俺はその言葉にゆっくり答える。
「.....はいよ」
「うん。.....じゃあね」
そして星座は去って行った。
後に残された俺は.....着替える為に棚を開ける。
その際に.....親父の写真立てが見えた。
俺は.....少しだけ悲しげな表情を浮かべ。
そして頭を下げる。
「親父。有難う。きっとアンタのお陰もあって.....星座に巡り合えた。七島さんに巡り合えた。.....感謝している」
ニコッと歯を見せて病室で微笑んでいる親父を撮影したものだ。
何も言わなかったけど.....親父ならこう言うだろう。
お前なら.....しっかりしているから大切に出来る筈だぜ、とだ。
俺は.....少しだけまた悲しくなりながらも.....挨拶して。
そしてドアを閉めた。
☆
思えば、ここまで星座と仲良くなれるとは思って無かった。
これもきっと.....親父のお陰なのかも知れない。
俺は.....笑みを浮かべながら.....星座を見る。
星座は一生懸命に鮭の骨を解体していた。
それを見ながら.....七島さんが星座の頭を撫でて俺に向く。
「.....君達がここまで仲良くなってくれて良かったと思ってる」
「.....七島さん?」
「.....佳代子のお陰だと思う。そして.....君と和子さんの.....御二郎さんのお陰だ」
「.....はい」
俺は少しだけ柔和な笑みを見せて。
そして母親を見た。
母親は俺に向いてから七島さんに向き、そうですね、と呟く。
それから.....俺と同じ様な笑みを浮かべた。
「.....テスト頑張って」
「.....はい」
「星座も頑張って」
「.....うん。パパ」
そして、じゃあ.....先に行くね、と立ち上がった。
食器を片付けてから俺達に手を挙げてドアから出て行く。
七島さんは最近、業務が忙しくて朝が早い。
それだけ.....俺達の為に頑張ってくれているという事だ。
良い人を見つけたもんだな。
「お兄ちゃん」
「.....何だ?」
「.....昨日の事は.....秘密にして」
「.....!.....だな」
なになに?何の話かしら?
と母親が首を突っ込んでくる。
俺達は首を振って、何でも無いです、と答えた。
そうだな.....家族関係を壊すのも如何なものかと思うしな。
だから秘密にした方が良いだろうな。
時計を見てから、行くか、と思う。
「.....遅刻しちまうな.....」
「あ、そうね。早く準備してから出なさい」
「.....うん。行こうか。お兄ちゃん」
食器を片してから.....リビングのドアを開ける。
そして.....玄関ドアを開けると。
目の前に.....中学生ぐらいの.....いや。
この辺の中学の制服を着た、直毛のロング金髪少女が立っていた。
碧眼でかなり可愛い顔で童顔だが重みが有る。
まるでその、風格が相当有る様な。
俺を見て腕組みをしているが.....って?、え?
そんな光景に俺達は顔を見合わせてその娘を見る。
するとその碧眼少女が口を開いた。
「.....貴方が田中耕作さん?」
「.....そうですが.....誰.....かな?」
「私は.....クリス・ファーレン。14歳、アメリカ人です。.....でもペンネーム、七色、と言った方が分かり易いですかね。ラノベ小説家です」
「.....七色.....え、七色!!??!」
七色。
単純な名前だが.....この名前は.....確か。
あの有名レーベルの1000万部売れたラノベ、異世界の手紙、の作者か!
確かに知っている名前だが.....また少女かよ!!!!?
こんな中学生が1000万部の作者だったのか!?
と俺は驚愕しながら.....見つめる。
すると少女は不愉快そうに俺を見た。
「.....単刀直入に言います。.....飯島先生を渡しなさい。私の小説の挿絵を描いてもらいます。貴方の様な人では駄目ですから」
星座も俺も目をパチクリした。
そして.....新たな風が吹こうとしている。
少女を中心として、だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます