第7話 飯島餡(イイジマアン)(編集済)
俺の住んでいる街から3駅離れた先の眼下に海の見える街。
そこの.....丁度、丘の上に俺の小説を出版してくれている出版社が有る。
名前は海丘出版という名前だ。
それ以外にも色々とお世話になっている出版社でも有る。
俺の意見を尊重してくれて.....とても助かっている。
ビルの並びもそこそこには有る街の中だが基本的には田舎の出版社に近い。
何故ならビルの並びはそこしか無いから、だ。
それで有りながらも日本全国に融通を利かせている本を出版をしている。
大きな都会とかに有る訳では無いのに、だ。
それはかなり凄いと思う。
従業員30人の小規模出版社で有りながらも中身はしっかりした海丘出版。
俺は前日から1日経って月曜日になってその出版社に高校の放課後、赴いた。
そして事務の人に奥まで通され.....待っていたと思われるその人に会う。
会議室の中でスーツ姿で笑みを浮かべて立っている.....佐藤真実(サトウマナミ)という名前の俺のマネージャーの様な人。
顔立ちとしては少しだけ凛としながらも砕けた感じの性格で、そして何事も突っ込んで行くタイプだ。
それから.....栗毛色の髪の毛のロング。
化粧しているがしなくても美人という感じの人だ。
俺とは正反対の性格の佐藤さんに少しだけ控えめの笑みを浮かべる。
それなりには対応はしているが元気が良過ぎて俺も困惑する様な相手だ。
でもしっかりした.....良い人だ。
佐藤さんが俺に手を挙げてこっちにやって来る。
「久しぶりですね。.....山田先生」
「.....ですね。佐藤さん。.....お久しぶりです」
「.....えっと.....事務の方からそれなりには聞いていますが.....新たに本とか出したいんですよね?」
「.....はい。.....それと.....連絡した通りの提案を持ってきました」
会議室の前の方の椅子に佐藤さんから座る様に促される俺。
頭を下げて腰掛けてからそのイラストを出す。
イラストは.....星座が描いたものだ。
それなりにはしっかり描いて欲しいとは頼んだがかなり真剣に描いている。
そして更にそれよりも奥に入っているエッセイの原稿を通学鞄から出す。
これは全部、改稿版で有る。
それぞれを佐藤さんに手渡した。
興味津々でそれらを見つめる、佐藤さん。
そして.....笑みを浮かべる。
「.....此方のイラストが噂に聞く.....君の小学生の義妹さんのですか?」
「.....ですね。結構上手いですよね。.....小学生ながら」
「.....ふーむ.....」
うん。分かります。
そして.....しっかり描けていると思います。
でも.....分かりますか?
少しだけまだ蕾。つまり.....幼い感じですね。
と苦笑いする、佐藤さん。
だけど.....この熱意は分かります、と直ぐに苦笑では無い笑みを浮かべる。
俺は.....頷きながら熱意を一生懸命に伝えた。
経験をした事、これらに出会った幸せなどを、だ。
そして最後に言葉を発した。
「俺としてはその子にエッセイの絵を描いてもらいたいんです。本の.....挿絵を。.....星座の成長にも繋がると思っています」
「.....成る程ですね」
「.....でもそのやっぱり色々と少し.....無理が有るとは思いますけど」
「.....そうですね.....うーん.....無理が有るかも知れないです.....が」
でも実はですね。
君の挿絵を私も描きたいって言う、未成年ながらもデビューしている人が他にもいるんです、と佐藤さんは言った。
目をパチクリして、え?、と思いながら.....奥の会議に使われている様なテレビを点けた佐藤さん。
それから佐藤さんは俺に向いた。
「.....イラストレーターの名前は飯島。飯島餡(イイジマアン)さんって人なんですが.....。私も推薦しています」
「.....飯島餡.....ってまさか!?.....有名な美少女中学生イラストレーターですか?!」
「.....ですね。2000万部売れたあのラノベもそうなんですが.....描いている人で。実は.....彼女は君のファンらしくです」
「.....え?.....ちょ。.....え?.....まさかですよね?」
分かりますその動揺。
でも一切、嘘は言ってないですよ?
と佐藤さんはニコッと笑みを再び見せてテレビで中継らしきものを結ぶ。
ノイズ混じりに映った人物は.....飯島先生だった。
そして.....一礼する。
「.....飯島先生。.....えっと、お話は聞いていますか?」
『.....はい』
「.....」
俺は驚愕しながら圧倒されていると。
飯島先生が俺にニコッと笑みを浮かべた。
そして.....自己紹介をする。
『初めまして。.....飯島餡です。山田先生』
その姿は俺が2年前、写真で見た頃と変わらない姿の飯島餡だ。
茶髪のウェーブながらも.....清楚感が有り。
そして.....ふわふわな顔立ち。
更に.....おしとやかさが有った。
自室で撮っているのだろう、後ろにはぬいぐるみが見える。
恐る恐る、どうも、と頭を下げる。
すると飯島先生は、敬語はしなくて良いですよ先輩、と話す。
私の方が年下なんですから、と柔和な笑みを浮かべた。
俺は恐れ多いです、と返事をした。
でもちょっと.....伝説のイラストレーターが挿絵担当に候補?冗談だろ.....!?
『山田先生。.....私.....是非とも先生の挿絵を担当したいんです』
「.....いや、光栄ですけど.....その、私よりもベック先生(2000万部ラノベの先生)の仕事の方は.....」
『彼方の方は物語が完結してから少しだけ落ち着きました。最終アートを描きました。だから.....次回作を描こうと思っています。今待機しています』
「.....マジですか.....いや、うん.....」
俺は顎に手を添えて考え込む。
小説をもしかしたら世界的に有名な飯島先生に描いてもらえる。
それは千載一遇のチャンスだ。
飯島先生の絵はエッチでも無いのに.....人を惹き付ける力が有るのだ。
それなりに神と言われている絵だ。
ネット上では.....天下一品と崇められているのだ。
だから.....これ以上のチャンスは無い.....が。
俺は息を整えて飯島先生に向く。
すると俺の答えを待つ間、飯島先生は佐藤さんに向いて控えめに言葉を発した。
『でもその.....先生は.....別の人に描いてもらいたいんですよね?佐藤さん』
「.....ですね」
『.....』
「.....」
何だこの沈黙は。
困った。
かなりの沈黙が流れている。
どうしたものかと汗を流していると。
飯島先生が何かを決意した様に顔を上げた。
そして心に秘めたものを解放する様に提案をしてくる。
『私、その.....山田先生の妹さんの星座さんと何方が山田先生の小説にふさわしいか.....比べてもらう為に対決をしたいです』
「.....は.....え!!!!?.....ちょ!?」
そんな.....まさかだろ。
予想外の言葉だ。
俺は目を驚愕で丸くする。
そして.....佐藤さんが、ですね、と言葉を発した。
「.....どうですか山田先生。.....この件はそれなりに対応致しますから。是非共に考えてみて下さい」
「.....いや、それは.....ってか、え!?佐藤さんも仕組んだんですか!?」
いや、マジに仕組んだのかこの人!
平然と、はい、とニコニコしながら返事をする、佐藤さん。
いや.....ちょっと勘弁してくれよ。
世界的アーティストだぞ、中学生ながらも、だ。
飯島先生に向いてみる。
そんな飯島先生は俺を見て頭を下げた。
『もし山田先生が良かったらお願いします』
「で、でも.....」
いやいや、マジかこれ?
2000万部のラノベの挿絵を描いた先生と素人に近い星座が対決?
そんなの勝てる訳が.....無い。
俺は直ぐに佐藤さんに許可を貰ってからメッセージを星座に送った。
すると直ぐに返事が有った。
そこに書かれていた文面はこうだ。
(私は構わないよ。.....というかやります)
「.....いや、マジですか」
まさかの返事だが.....。
良いのか?これで本当に。
俺は思いながらもその全てを佐藤さんに告げた。
すると.....ニコッとしてから、じゃあ飯島先生、と佐藤さんは向く。
それで良いですか、的な感じで話した。
飯島先生は頷いた。
納得した様だ。
そして柔和な表情になっていく。
『.....それでは今週の土曜日。会うのを楽しみにしています。.....山田先生』
「.....」
こうして星座VS飯島先生。
つまり、イラスト素人VS2000万部の世界的に有名なイラストレーターのバトルが始まろうとしている。
俺は少しだけ考え込みながら良いのかこれ?と思ってしまう。
事態はかなり深刻な様な気がする。
世界的に有名なアーティストは忙しいと思うのに、だ。
そして.....俺の為に動いてくれる事に、だ。
星座も星座だろ。
何でそんなに俺の為に、と考えてしまう。
「.....あ、因みに.....この執筆されたエッセイの方はこれで大丈夫だと思います。山田先生」
「.....あ.....はい」
「.....いやいや、そんなに萎縮しなくても大丈夫ですって。あはは。何とかなります」
「.....」
いやいや.....何だそれ軽すぎるだろ。
しかも俺とズレが有るぞ。
あはは、じゃ無いし勘弁してくれよマジで。
そう言うのは2回目だけど.....。
振り回されるのはよく有るけど.....。
でも今回の件は相当に.....本当に胃が痛い。
参ったな.....マジに。
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