みんなでバカンス! 6
シアのハイテンションが続くまま、僕は街中をかなり恥ずかしい姿で歩き続けている。
宿屋でシアにコーディネートしてもらってる時は感じなかったのに、街行く人の僕を見る視線に気付いてからは、なり恥ずかしい姿なのだという事が分かった。
靴は長めのブーツだから、肌の露出は全体を見ればそうでもないのだろうけど、太腿から上の肌率はかなり高い。
「ねぇ、シア外套とか無いよね?」
「はい! ありません!」
ハッキリと言いきられた。
この感じだと有っても無いと言われそう。
「レン様、この坂を上りきったら神殿が見えるはずです!」
「う、うん、分かった」
シア、嬉しそうだな。
ニコニコしながら軽やかに結構急な坂を歩いている。
そんなに僕のこの姿が気に入ったのだろうか?
「主様、とっても良い」
「あ、ありがとう」
アクアが僕の腕にギュッとしがみついて来る。
アクアも気に入ったみたい。
ま、まぁみんながこれだけ気に入ったなら、たまにはこんな格好をしても良いかも。
「レン様! 見えましたよ」
先を歩くシアが坂を上り切った所で立ち止まり手を振って教えてくれた。
僕は少し歩くのを早めてシアに追いつく。
「! うっわぁ~! す、凄い!」
思わず叫んでしまった。
だってそれだけの風景だったから。
僕が立つところはこのランタンの街の中でも一番海から高い場所で、そこから見えるのは海まで続く赤い屋根が多くみられる街全体と、その海までの道の途中に家々に囲まれる、一際目立つ白い石作りの大きな柱が立ち並ぶ建物。
「あれが神殿・・・なんだかギリシャの神殿に似ているかな?」
「ギリシャ?」
アクアが僕の呟いた言葉に聞き返して来た。
「ん? あ、なんでもないよ。昔僕が書物で見た建物が似ていてね。その建物のある地域の名前のことだよ」
「そうなんだ・・主様、博識」
「はは。ありがとう」
それにその神殿のバックには青く輝く海も広がっていて、神殿の白さと街全体の赤い屋根が、まるで絵画で刳り貫かれた景色みたいだ。
「確かにこれだけ綺麗な場所なら観光地として有名になるはずだな・・でも」
「主様、やっぱりあの神殿から変な魔力が流れ出ている」
アクアの言葉に僕も頷いた。
そう、この綺麗な景色とは真逆な異様な雰囲気を纏わりつかせた魔力が漏れ出ているのが分かる。
けど、即刻人体に影響があるとか、そういう毒素的な魔力じゃない・・どちらかと言うと念とか呪いみたいな感じがする。
でも、それほど深刻な感じはしないのは何故だろう?
「主様・・・」
アクアも感じているみたい。
でもアクアの感じは少し怯えている様に見える。
僕にはそれほどの恐怖みたいなものは感じないのだけど?
アクア、精霊にしか感じない何かがあるのかもしれないな。
「シア、アクア、取り敢えず先行したリーシェン達を待ってから神殿に向かおう」
「はい」
「・・・分かった」
僕の腕にしがみ付くアクアの体が小刻みに震えている。
そうか、僕にしがみついていたのは、この魔力が怖かったからか。
僕達は暫く、高台から見える風景を見ながらリーシェン達が戻ってくるのを待つことにした。
しかし・・周りはカップルばかりだな。
この人達は上手く告白出来て結ばれたのかな?
でもどう見ても初めから恋人同士と思える人もいるから、ただ単に縁結びとしての水神祭りに肖って来ているだけかも。
「レン様」
いつの間にか、アクアとは反対の僕の腕をシアが握り横に立っていた。
「どうしたの?」
「こうしてると私達も仲の良い恋人同士に見えるのでしょうか?」
頬を赤らめるシアの姿はとても可愛らしく綺麗だった。
「え? あ、その・・・う、うん、だと思う・・よ」
「レン様・・・」
な、何!? この雰囲気!
なんで顔を近づけるの!?
う、うわぁうわぁ! ドンドンシアの顔が近づいて・・く、唇が!!!
「シア様!! ずるい!!」
「あ~!! 抜け駆けは卑怯ですよ!!」
ナイス!! リーシェン、カーナ!!
「チッ!」
え? 今舌打ちしなかったシア?
「どうかしました?」
何食わぬ顔で聞いて来るシア。
なんだかシアが大人の女性に見えた気がした。
「シア様、抜け駆けはいけませんよ?」
「ふふ、ごめんね。ちょっと雰囲気が良かったから流れで良いかなって?
「駄目ですよ。するならみんなでしましょうよ」
こら、カーナどさくさに紛れてとんでもない事言わないの。
「それよりどうですか? レン様は?」
今度はシアがリーシェン達に尋ね始めた。
僕の事?
「レン様がどうかしま・・・・ブホッ!!」
「リ、リーシェン!?」
僕をマジマジと見たリーシェンがいきなり鼻血を噴き出して倒れてしまった。
「は、反則!! レン様それ反則!! 今すぐ襲って良いですか!?」
カーナの目が座ってる・・・・
身の危険を感じたので僕は脱兎の如く走り出した。
やっぱりこの服装は封印すべきかも・・・・
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