みんなでバカンス! 5

「ねぇ、シア」

「どうしたの? レン様」


僕は今、ランタンの街の中をシアとアクアを連れて歩いていた。

ただ、僕達とすれ違う人の様子がおかしい。

まあ、その原因は分かっているんだけどね。


「この格好、目立ってない?」

「そうですか? とてもお似合いですよ?」

「いや、僕じゃなくて、シアとアクアがだよ?」

「私ですか?」


シアは一度立ち止まり、自分の姿をクルクルと回りながら確認し始めた。


「「「お、おお!」」」


突然、僕達の周りにいた数人の男性から感嘆の声があがった。

それは踊る様にクルクル回るシアの姿とその衣装があまりにも綺麗だったからだろう。

うん、僕もそれは分る。

分るんだけど、それだけ目立っているってことなんだよね。

今のシアとアクアは、一枚一枚は先が見えそうな程の薄い布を重ね合わせ、背中の部分からは同じような布で作られた大きな羽根が4枚生えている服を着ている。

それはまるで妖精か精霊の様だった。

いや、シアとアクアの元々の容姿が美しいので、どう見ても妖精か精霊にしか見えない。

しかもかなりのミニスカートなので、動き回ると薄い布がヒラヒラと舞い上がり、スカートの中が見えそうになってしまう。

その光景にオッサン共が騒がないはずがなかった。


「シア、そんなに動くと見えちゃうよ?」

「え? 何がですか?」

「そ、その、スカートのね・・・中がね?」

「・・・・・・・・大丈夫ですよ? 認識阻害の魔法を掛けましたからレン様にしか見えませんので大丈夫ですよ」


あ、そうですか。

じゃあこの白い物は僕だけにしか見えてないって事か・・・・。

なんだかとっても恥ずかしい気がする。


「でも、この服、かなり目立ってない?」

「え? そうなんですか? でも周りの人も相当に目立ってますよ?」


そう言えば歩いている女性の服装が奇抜と言うか何んと言うか・・・・

あ、あの女性の服凄い! 体にフィットしているのに横のスリットが胸近くまで空いてる!

綺麗な何本かの細い紐で結んではいるけど、歩くと横から見えそうだ。

あ、こっちの人の服、殆ど透けてる?!

下着が丸見えじゃない?

え?! あの人下着のまま・・・あ、あれ水着か。

でも下着みたいなデザインで、まぎらわしくない?

はぁ~、シア達の服装が普通に見えてきた。


「痛! いたたたたたた!! シ、シア! 急に耳を引っ張らないで!」

「だ、だって! レン様、私の事より他の見ず知らずの女性ばかり見てるから・・・」


う、うわあ~!! シアの瞳が潤んで来た! 


「主様、私を見る」

「な、何? アクア・・・って!! こら! スカートをめくらないの!! ごめん! もう他の人は見ないから!」

「本当ですか?」

「うん! 絶対に誓う!」

「分かりました。アクア様、これくらいで勘弁してさしあげましょう」

「・・・うん、分かった」


なんとか許してもらえたみたい。


「シア」

「はい?」

「別にいやらしい目で他の女性を見たわけじゃないから。ちょっと珍しかったから見ただけで、シアやアクアの美しさには誰も敵わないから心配しないでいいからね」

「レン様・・・・」


うん、シアの機嫌が治ったみたい。


「それにしても未だに周りの視線がみんなこっちに向いてる。やっぱり二人の姿に目を奪われるのは当然だよね」

「違いますわ」


シアが突然真顔で否定してきた。


「何が違うの?」

「あの男共の群れが見ているのはレン様の方ですわ」

「え? 僕?」

「はい」

「主様、鈍い」


二人の言葉がいまいち分からなかったけど、よく見ると確かにおじさん達の目は僕の方を見ている様な・・・

そう思ったら何だか体中を見られている様な・・・


「さすがレン様です! 私のコーディネートも一因でしょうが、これほどの魅力を出してしまうとは、私の旦那様は世界一可愛い!! ちょっと嫉妬してしまいそうです」

「その意見、肯定」


か、可愛いって言われても・・・でも改めて自分が着ている今の衣装は・・・見られていると思うともの凄く恥ずかしくなってきた。

さすがにスカートは断固拒否したけど、代わりにと言われてショートパンツを履いたけど、これってちょっと小さすぎたかな? 太腿の付け根ギリギリだし、お尻が少しはみ出てない?

それにおへそは丸見え、なのに何故か胸はバンドみたいなもので巻かれて・・・・・よく考えたらこれって女の子にしか見えないんじゃ・・・・・は、恥ずかしい!!


「シア、これ脱いでも・・」

「駄目です! このまま先に向かったリーシェン達と合流します。その間どうかその美しく可愛らしいお姿を目に焼き付かさせてください!!」


仕方ない。

シアが喜んでくれるなら少しは我慢しよう。

僕は気になるお尻に手を当て、隠しながら神殿にむかった。

歩き辛い・・・・

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