みんなでバカンス! 4

「今からお出掛けかい?」


僕達は水神様の神殿に向かう為、宿を出ようとすると、受付にいた宿を切り盛りする女将さんの言葉に振り返った。


「ええ、ちょっと水神様の神殿に行ってみようかと思いまして」

「ああ、お客さん達も祭りに参加するんだ?」

「祭り?」

「あれ? 違うのかい?」


突然思ってもいない言葉が出て来たので少し興味が出てしまった。


「あのう? 祭りって水神様の祭りという事ですか?」

「そうだよ。知らずにこの街に来てたのかい?」

「ええ、リヒテルに向かう途中だったのですが、このランタンは観光地として有名だと聞いたものですからちょっと寄ってみようかと思いまして」

「そうかい。ならお客さん達、この水神様の祭りの時に来られて運が良かったじゃないかい」


へぇ、そんなに有名な祭りなのか?


「それほど有名な祭りなのですか?」

「そうだね。この祭りの為に国外からもお客さんが来るくらいだからね」

「へぇ、そうなんですね?」

「あんた達を見て私しゃてっきり、祭り目的かと思ったんだけどね。それなら余計に運が良かったさ」

「それはどう言うことでしょう?」

「その昔、この水神祭りで街の女の子が出会った男性に一目ぼれしてね、思い切って告白したら結婚できたんだよ。その上その男性は最終的には一国の主にまで登り詰めたっていう言い伝えがあるんだよ」

「それ以降、この祭りの最中に女性が男性に告白すると、かならず結婚出来ると言われているんだ。だからこの時期女性達はこぞってこの街にやってくる」

「必ず? ですか?」

「まあ、それはそれ、言い伝えだからね。だけどこの祭りの本当の目的は水神様を称え海運事業の繁栄や航海の安全祈願をする祭りだからね、有力な海運業者や、貴族達も集まるからその事業主や、関係者、中には貴族様もいるからね、玉の輿に乗ろうと考える女性達が着飾って祭りに参加するんだよ。なにせ告白すると必ず結婚出来ると言うんだからね」


と言って僕に向かってウィンクする女将さん。

ん? もしかして僕のこと女の子と思ってる?


「みんな綺麗な女の子だからね、貴族様でも案外娶ってくれるかもしれないよ?」


やっぱり僕のこと女の子だと思っているみたい。


「もし良かったらうちでも貸し衣装しているから、着て行くかい? みんな目立とうと奇抜な衣装を着ているからね、目立たないと有望株の男性の目に留まらないよ?」

「あ、別に僕達は・・・」

「「「「はい! 是非衣装をお願いします!」」」」


え? 何? みんなが女将さんに迫ってる?


「はは! 良いね! やっぱり女の子だね。この祭りの為に可愛い衣装を揃えているからね。選ぶと良いよ」

「「「「はい! お願いします!」」」」


あ、アクアまで・・皆が乗り気だ。


「えっと、レンさんだったかね?」

「はい?」

「あんたは衣装どうするんだい?」

「え? 僕は・・」

「「「「はい! 一緒にお願いします!!」


え?!


「ぼ、僕はおと・・」

「レン様! 大丈夫です!! 私が見繕ってあげます!」


シアの勢いが凄い。


「で、でも僕は・・」

「郷に入っては郷に従えです!! 衣装を着ましょう!」


リーシェンの圧も凄い。

それに郷に入ってはって何だよ! 使い方がおかしいって!


「だから僕は・・」

「み、見てみたい・・・・」


カーナ、怖いってその顔。


「だからね、僕は・・」

「・・・・・・主様駄目?」


アクアの上目使いのお願いは卑怯だよ。


「ま、まあみんなが言うなら・・・でもあまり無茶しないでね?」

ま、まあ衣装の中には男物も有るだろうしそっちを選べば・・


「はい! お任せを!! みんな! レン様を世界一可愛く見せますよ!!」

「はい! 腕がなります!」

「ウフフフフフフ・・・レン様の・・・フフフフフフ」

「・・・・・主様・・・・・・フ」


アクアが笑った!? 

その笑い怖いよ!!


まあ、奥さん達が仲が良いのは結構な事だけど・・・・これも神様になる為の試練?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る