帝国の闇 6

「ラバス、シシリア、剣を収めなさい。あなた達では相手にもなりませんよ?」


そういえば僕と皇妃様との間で固まっている二人がそのままだった。

皇妃様の声かけでリーシェンとアクアが攻撃の体制を解いて僕の横へと移動すると、ゼンマイが切れた人形の様に二人はその場に崩れてしまった。

さすがに可哀相に思ったのか、リーシェンとアクアがシシリアと呼ばれた修道女に肩を貸して皇妃様の後ろにいるルーシーの所まで連れていく。

ラバスさんには? あ、二人とも首を横に振っている。

ごめんなさい! 自力で移動してください。


「ルーシー、このお方をレンティエンス殿と教えてくれたのは貴女ですよ?」

「は、はい? そうですけど?」

「もっと勉強しなさい。我がスバイメル帝国にとってこの方の情報は今最も重要ではなかったではありませんか。それにこのタイミングでの理由を考えてご覧なさい。」


ちょっと皇族の各国情報分析の授業みたいになってきたぞ?

ルーシーがんばれ! リーシェンも握り拳を作って応援しているよ。


「え、現れる理由ですか? 現れるというより私達は助けていただく方を求めクウェディ様におすがりしてはいますが・・・もしかして、先輩、あ、レンティエンス様が? あれそう言えば、このお名前どこかで聞いた気が・・・あ、ああああああ!? 兄アフムを変わり果てた姿にした人の名前が確か!」


「はい、レンティエンス・ブロスフォード子爵にございます。ルーレシア・スバイメル皇女殿下。」


僕は改めて、膝を着いたまま向きをルーシーに向き直り礼をとる。

それにならって、リーシェンも傅く。

アクアはそのまま僕の横に来てぼーっと立っているだけだ。

 

「な、なんだその態度は! 子供だからといって皇妃様の御前なのだぞ! レンティエンス殿!保護者の監督責任で打ち首になりますぞ!!」


顔を青くしながらも、皇妃様に忠実であるラバスさんがアクアの態度に怒り出す。

まあ、普通はそうなのだけどね。


「皇妃? 私も傅いた方がいいの?」


アクアは、別に厭味ではなく世間に疎いだけなので、そうしなければいけないかどうかが、分からないだけなんだ。

でもこの場合。


「い、いえ! そのような必要は、ありません! こうして対峙しているだけで圧倒されそうな雰囲気をお出しになっているアクア様方に傅いてもらう事こそ本来なら有り得ない事ですから。」


あれ? 今、アクア様方と言ったように聞こえたけど? それって僕やリーシェンも入っている?

僕が不思議そうに思っていると皇妃が答えてくれた。


「クウェディ様からお聞きしております。こちらのお方は、上位精霊のアクレリア様でいらっしゃいますよね?」

「そう、初めまして。アクレリアです。」


皇妃の言葉にアクアがペコッと頭を下げて挨拶をした。

一応、挨拶だけはちゃんとするように言っていたけど、なんとも可愛らしい挨拶をされたので皇妃もニコニコしてとても嬉しそうにしながら傅かれた。

皇妃が傅いたのを見て驚いたラバスさん達。

一瞬呆気にとられて身動きできなかったが、徐々に把握出来たのか、段々顔が青ざめた後一斉に土下座を敢行されました。


「上位精霊アクレリア様、こ度は我がスバイメル帝国の危機の時に訪れていただき感謝いたします。レン様もわざわざお越しくださり誠にありがとうございます。」


そう言って皇妃が僕とアクアに深々と頭を下げられた。


「ちょ、ちょっと待って下さい! アクアならいざ知らず僕にまで頭を下げられるのは困ります!」

「そ、そうですぞ! 皇妃様が何故一階の子爵程度に頭を下げられるのですか!」


土下座をしながら小声で、皇妃の行動を諌めるラバスさん。

本当に職務に忠実ですね。


「ラバス、アクレリア様は、このレンティエンス様の眷族だそうです。」

「は? レンティエンス殿がアクレリア様の眷族と違うのですか?」

「逆です。アクレリア様の主がレンティエンス様なのです。つまり神にも等しい方と云うことです。」

「・・・!ひ!」


そんな、まだ神にはなっていませんから。

そんなに怖がらなくても。

って、ラバスさん、どうも土下座したまま気絶したようだぞ?

あれ? シシリアさんだったかな? あの方も土下座しているけど背中が上下に激しく動いているような?


「はあ、はあ、レ、レンティエンスさ、ま な、なんとお美しく、気高い お、か、た。神に召されるのが我が願いここに成就!! 」


おお? なんか変な息遣いと言葉が漏れ聞こえてきたぞ! 

あ、リーシェンが思いっきり睨んでいる!

見、見なかった事にしよう。


「まあ、何か皆さん、レンティエンス様の神々しさにあてられたのかしら? ルーシーも改めてご挨拶しなさい。」

「・・・・・・」


あれ? 反応が無いよ?


「あら、この子ったら立ったまま気絶しているわ。」


皇妃も困った顔をされておられる。


「ごおほ! ごほ!!」


そこに部屋中に響く様な咳がしたので、僕達はベッドの方に久しぶりに目を向ける事になった。


「あらあら、お兄様の事すっかり忘れておりましたわ。」


そうだった。初めはこの方の毒素を取り除く事が目的だったはず!


「さ、早速お身体を診させてもらいます! アクア!」

「うん!」


そして、皇妃の兄であり、ルーシーの叔父にあたる、ローエンベルク将軍をアクアの治癒術で、体の毒素、全てを取り除き、体力以外は全てを完治されたのだった。

なんだかとってもすみません。

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