帝国へ 2
「どうしてまた、僕達なんですか?」
素朴に先ず、なぜ僕らなのか聞いてみた。
「簡単な事です。相手が人間じゃ無い可能性があるかもしれないからよ。」
ん~? 今何かものすご~く引っ掛かる言葉を聞いたような?
「クウェンディ様? 相手は人間じゃ無いのですか?」
「可能性としてね」
「それを僕達が相手するんですか?」
「そうね。」
「帝国騎士とか、Sクラス冒険者とか他の方もいるのでは?」
「大丈夫、全然歯が立たないから最初から考えてないわ」
「そんな相手を、人間で女性と子供しかいない僕達が相手するんですか?」
「そうよ?」
「無理でしょう!」
「なんで?」
「なんでって、どう見てもそうでしょう?!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
手に顎をのせ、首を傾げて物凄く考え出してしまったぞ?
そんなにおかしな事を言った覚えはないんだけど?
「おかしいわね。最高神オーディ様からレンちゃん達、かなり神域に足突っ込んで、人間ほぼ卒業しているからって聞いていたのだけど? だいたいさっきの大神エグラシル様の力を使わせてもらった攻撃をあっさり防いだんだからもうあなた達に勝てる人間なんて数える程しかいないわよ?」
あの神様、何を勝手な事言っているんだ?
でも数える程でもいるんだ。
まあ、クウェンディ様もそうだし、母様やルル様もそうか?
「もしかして、シアや皆の力が大幅に向上しているのって、オーディ様が何かしたのですか?」
「それは違うと思うわ」
クウェンディ様が、首を横に振り否定した。
「これは、レンちゃんが神域に到達しそうになるほど、力が向上している為に、その眷属、お嫁さんズも引っ張られるように力が向上しているのよ。たぶん上位精霊並みにはなっているかもね?」
アクアと同等以上? もう人外の領域じゃない?
「やはりそうか」
アクアが話に割って入ってきた。
「何がそうか、 なの?」
「いえ、私が主様の眷属になった時、シア様を初めとした奥様方が私の力に呼応するように光ったので、もしかしたら私と同等の存在なのではと思っていたのですが・・・そのようだったようです」
「え? という事は本当に今は、シアやリーシェン、カーナにフル姉は、上位精霊と同等の力があるの?!」
「そのようです」
つまりカーナ達も人外の力を持っているということなの?。
強くなるのは悪くないけど、僕のせいで皆も人の力を外れるのはどうなのだろうか?
僕が不安そうに皆の顔を見ているのが分かったのだろう、シアを始めとしてみんなが微笑みながら頷いてくれた。
「私達は、レン様に守ってもらうだけなのは嫌です。だからレン様と肩を並べて戦える力を持った事は物凄く嬉しいです」
シアがそう言ってくれる。それに合わせてみんなも、頷いてくれる。
僕は改めて、この子達と一緒に歩んでいける事が嬉しくなった。
「で、そんな僕達が対応しなければいけない相手って一体何なんですか?」
僕は少し諦め気分で、クウェンディ様に相手の事と事情を聞いて見ることにした。
「相手は、悪魔。数千年前に、神の軍勢と戦って異空間に閉じ込めた悪魔がどうも復活し始めてるみたいなの。それを大神エグラシル様がスバイメル帝国領内で感知したので調査と出来れば討伐して欲しいと神託があったの」
続けてクウェンディ様は話をする。
「レンちゃんも最近、スバイメル帝国には色々と関係しているのでしょ?」
確かに、最近の不穏な出来事はスバイメル帝国絡みがばかりだな。
「そうですね。つい一昨日もフル姉が酷い目に合わされてしまって、あ! ゴメンなさい! クウェンディ様。僕がついていながらフル姉を辱めに会わせてしまいました」
「何、言っているの。どういう状況だったかは知らないけど、あの子の顔を見たら今は幸せそうな顔しているわよ? だからレンちゃんは何も謝る必要は無いわ。」
「・・・そうですか?」
「そうよ」
優しく微笑んでくれるクウェンディ様を見て僕は少し安堵する気持ちになれた。
「それと、これは私からの情報だけど、スバイメル帝国もかなり内情は不安定らしく、第一王女から私宛てに注意喚起の知らせがあったわ。エルフの里とグローデン王国を含めた周辺諸国に対して戦線を開く可能性があると」
クウェンディ様が物騒な話をしてきた。
戦争? スバイメル帝国周辺諸国に対して開戦してくる?
「その件で、私はスバイメルの姫様の助力していただきながら潜り込んで情報の収集をしていたんだ。」
今度はフル姉が僕達のところに来て事情を話してくれる。
「つまり、この一連のスバイメル帝国で起こっている事は、悪魔が関与していてると神々は思っているということですか?」
「そういう事になるわ」
う~ん、一気に国家レベルというか、神界や魔界のとんでもない話になってしまった。
これは僕が勝手に動いて良い問題じゃないぞ?
「リーシェン、カーナ。僕は一度本国に戻って、母様と王妃様に御報告をし、そのまま相談するので、どちらかに付いて来てもらうよ。あと残った人は、フル姉と共にグローデンに向かって欲しいんだ。そこでスバイメル帝国に向かう準備をしてもらう。あと、シアはせっかくだからクウェンディ様に魔術の操作や加護の力の制御力を指導してもらっておいてほしんだけど、クウェンディ様は急なお願いですが宜しいですか?」
「問題ないよ。ファルシア様がどれだけ成長されたか見ておきたいと思っていたからね」
シアも近づいて来て大きくお辞儀をする。
「クウェンディ様、お願いします。私レン様とずっと一緒に歩いて行きたいんです。守られるだけではそれは叶わないと思っていますので」
「良い、顔をつきになられたね。大神エグラシル様の眷属である私が期間は短いけど、できる限りの事は教えてあげるからね」
「はい! お願いいたします!」
さて、後はリーシェンとカーナだけど。
「レン様、私が残って準備をしておきましょう」
リーシェンが自ら申し出てくれた。
「良いの?」
「はい、レン様にはアクア様もおられますし、それに準備をするのにカーナでは適任ではないと思いますから」
あはは、直球な言い方だなあ。
カーナが頬を膨らませて怒っているけど、文句は言わないんだ。
自分でも、頭を使う仕事が苦手なのを十分に知っているからね。反論しようにも出来ないのだろう。
「その、レン様?」
リーシェンがモジモジとしている。
こういう時は何かおねだりなんだろう。
最近のリーシェンは結構、積極的なんだよね。
「どうしたの?」
「はい、あの今度帰られましたらまた、その、ですね、一緒にですね、添い寝をですね・・・」
顔もそうだけど体中を真っ赤にして一生懸命にご褒美のおねだりをしてくるのは、僕もちょっと恥ずかしいけど、添い寝だからね。それぐらいは問題無いと思うんだけど」
「あー!!! 先輩ばかり狡い! 私だって添い寝したいんですからね!」
「カーナはこれから当分レン様と一緒じゃないですか。別れて過ごす私の身にもなって下さい!」
「リーシェンさん、カーナさん、私を差し置いて勝手にレン様と約束しないで下さい!」
ああ~3人で何か取っ組み合いみたいな話し合いが始まったぞ。
「レンちゃん、モテるわね?」
「クウェンディ様、面白がって言わないで下さい」
「あら、フルエルちゃんは交じらないの?」
僕の横で、カーナ達の話し合いという名の戦闘モードに静観しているフル姉に姉であるクウェンディ様があなたも加わりなさいと、けしかけてるみたいに言ってきた。
「え? べ、別に私は、レンちゃんと、どうこう、な、ろうとか・・・」
「あら~赤くなってるわよ? 我慢しなくても良いのよ? お姉ちゃんとしてはレンちゃんとなら、何にも文句はないわよ?」
「ば! 馬鹿やろう! 私はレンのお姉ちゃんなんだからな! 弟にそんな、事・・」
「あら、王国の貴族なんか血を重んじて結構近親での婚姻は流行っているわよ? だいたい血が繋がってないんだから問題にならなわよ、やっちゃいなさい」
完全にからかっていますねクウェンディ様。
あんまりフル姉を虐めてあげないで下さい。
「あーーーーー! くそ! 姉貴! 言いたい放題言いやがって! ぶっ殺す!」
あ、こちらでも大規模殲滅戦級の姉妹喧嘩が始まってしまった。
「ディクスさん! 皆さん! ここはちょっと危険地帯となりました! 僕が先導しますので避難しましょう! アクア手伝って。」
「はい、主様。」
僕達は、丘を一つ超えたあたりまで避難して事が治まるのを待つことにした。
「レン様クラスの嫁さんとなると、これぐらい喧嘩出来ないと務まらないんだな。」
ダルガンさん、しみじみ言わないで下さい。
君達、もうすぐ夕方だから程々にお願い。
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