神になる? 3

「あ、そうそう言い忘れていましたわ。レン君の身体の治療する時に、私の身体の一部を移植しているから、思ったより早く神化するかもしれないですわ。それに合わせて色々出来るようになっていると思うから徐々に身体の方、慣らしていってさいですわ。」


はっ!?


今、何て言っていた? あの神様は?

う~ん、物凄く悪い夢を見て、目覚めの悪い朝を迎えた感じがする。


僕は、天井を見ていた。

あ、この天井見慣れた天井だ。

ここは、僕が赤子の頃から使っていた部屋の天井だ。

小さな傷や、格天井の木質部分の色むらまで、見覚えのある天井だった。


そうか、僕はここで寝ていたんだ?

ゆっくりと天井を見渡し視力に問題が無いのを確認すると、起きようと身体を動かすけど、何故か物凄い重りでも付けられているように、思うように動いてくれない。

僕は起き上がるのを断念すると、せめて手、腕とかだけでも動かせないか右腕で試してみる。

すると、指、手とゆっくりとだけど動かせた。

腕の方もなんとか動かせるが、スムーズにはいかないようだ。

それでもなんとか、自分の目の前に掌を持ってくる事が出来、天井にかざす様にその手を見つめる。


うん、自分の腕だ。

それじゃあ、左腕は? あれ?

全然、動かないぞ?

まさか、腕がどうにかなってしまったのか? 

でも、怪我をしたのはお腹辺りのはずだったんだけど?

もしかしてあの後、何か不足の事態でも起こったのか?!


僕は不安に駆られ、天井を見ている視線を左の方へ移して見る。

首辺りもかなり重い。

結構筋肉が固まっているのか?

それより僕の左手は?


「あれ?」


僕は自分の左腕にしがみつく様にしてベッドの上に顔を乗せているシアの寝姿が見えた。

シアは泣いていたのだろうか? 目の回りが少し赤く腫れているように見える。


「心配かけたんだろうな。」


僕は、左腕を動かすのを止めた。

まあ、何となくだけど、シアの温もりと重さを手に感じる事が出来るので、問題無いと思えたので動かして確認するのを止めた。


それから右側も気になったので首を右に傾けると、やはりそこには、もう一人僕の好きな顔がシアと同じように顔をベッドの淵に乗せて、眠っているようだった。

リーシェンも目元周りが腫れている。泣いているのもそうだけど、寝ずに看病してくれていたんだろうか?

そもそも僕ってどれだけ寝ていたんだ?


カチャ


あ? 扉の開く音だ。

誰か入って来たみたいだ。

その人物は、足音を出さないよう慎重に歩いてこちらに近づいているようだ。

まさか暗殺者とか?


それは無いか。

この香りと気の感じとか、彼女しかいないと断言出来る。

ん? 途中で止まったのかな? 

いっこうにこちらにカーナが来ないぞ?


「レン様。」


悲しそうなカーナの声だった。


「あれから、もう5日も眠ったままで、いっこうに意識がお戻りになられない・・私を信用して命まで掛けて下さったのに・・・っ!」


カーナが泣いている。

多分ベッドの下の方で佇んだまま、小さな声で泣いているのが見えなくても判った。

神様にも言われているし、地球にいた時に田舎で暮らす爺さんが良く口癖の様に言っていたのを思い出した。

女の子を悲しませるのは男のやることじゃないって。

僕もそう思うよ、爺さん。


「カ・・・・ナ・・」


5日も寝ていたせいなのだろう。身体も重いし声もお腹が痛くてはっきりと言えない。

それでも、なんとかカーナに聞こえるよう、めいいっつぱいな声を出してみる。


「!!ッ! レンさ、ま?」

「ご、めん、しん、ぱい、かけた、ね。」


「!! そ、そんな、わ、私は! ウッ、す、すみません! 私が未熟な、ん、ばっかりにレン様、を、グス、こんな酷い目に、会わせてしまって!」


カーナが佇むその場で、必死に泣くのを堪えながら、僕に謝って来てくれる。

それが僕には辛かった。

カーナをこんなに悲しい思いをさせてしまった僕の未熟さに。


「カーナ、こ、こに、来て。」

「で、でも。」

「いい、から、来て、お願い、だから。」

「でも、こ、んな顔、」

「じゃあ、僕が、そっち、に、い、く!」


僕はなんと起きようと、頭を持ち上げるが、お腹回りが痛くて思うようには動けない。


「お止め下さい! せっかく治療した傷口が開いてしまいます! 今そちらに行きますから!」


僕は起き上がるのを諦めると、寝ているリーシェンの直ぐ近くまでやって来て、恐る恐るといった感じで身体を強張らせ僕に近づいてくれるカーナ。

こんなに彼女って小さかったかな?

その不安げな感じがいつもの活発なカーナのイメージと掛け離れていて、こんなにもか弱い女の子だったんだと思い知らされた。

僕はカーナに向けて右手を差し出す。


「?!」


カーナは咄嗟に僕の右手を、両の手で優しく腫れ物にでも触るように握ってくれる。


「カーナ、こんな事、頼んでしま、って、辛かったよね。でも、カーナ、だから頼めたんだと、思うんだ。それは、今でも間違って、無いと思う。僕の命を掛けても、カーナは信頼、出来るパートナー、だと思っている。これからも色々な、事が起こると思うけど、僕のパートナーで、居続けてくれないかな?」

「・・・・・・・・・」

「まだまだ未熟な、僕を、見捨てないでくれ、ないかな?」

「見捨てるなんて! 私は! 私は!」


僕はカーナの手を強く握り返す。

絶対に離さないと言っているように。


「! レン様?」

「辛かったね、良く頑張ったね・・・そしてありがとう。」


「うわあああ!! レン様! レン様!!」


カーナはベッドに肘を付いて握った僕の右腕を額に付け泣き出した。

今までの不安を全て吐き出す様に、泣き続けていた。



『寝たふりも大変です。』

『そうですね。』

『でも、レン様と良い感じになって羨ましいですわ。』

『まあ一番辛かったのはカーナですからね。今回はこれくらい多めに見ましょう。』

『そうですわね。でも今度は私もレン様と一緒に戦って褒めてもらえるよう頑張りますわ!』

『いえ、姫様が戦うのはどうかと? でもこれでカーナも立ち直るでしょう。さすがレン様です。』

『そうですね。でもやっぱり羨ましいです。』

『はい、それは私も同意見です。』

『今度、何かおねだりしてみましょうか?』

『良いですね。私も協力いたします。』

『フフフ、じゃあ二人で色々考えましょう。』

『はい、姫様。』


レンの知らないところで、難題が襲いかかろうとしていた。

なんてね。

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