神になる? 1

「無茶し過ぎですわ」


僕は、可愛らしい女の子の声が聞こえた様な気がして目を覚ました。


「あれ? ここ何処です?」


目が覚めたはずなのに、周囲が真っ黒で自分がどうなっているのかも判らなかった。

あれ? でもこれって何処かで見たような?


「気付かれましたか? ちょっとレンティエンス様に色々伝えたい事がありましたので、魂の一部を神界にお呼びいたしましたのですわ」


先程の女の子の声が今度は、はっきりと聞こえた。

それもすぐ目の前で。


「え?! 今、居ました?」

「そんな事はどうでも良いのですわ。ちょっとそこに座って下さいなのですわ」


僕はなんだかお姉さんに言い付けられている様な感じを受けながら、示されたパイプ椅子に座った。

この感じ前もあったよね?

僕が座ると机、うん事務机だね。だけど全部白いのってやっぱりここがあの世だからだろうか?

と、云うより黒い空間なのにどうして、この机を中心とした僕の周りははっきりと見えているんだ?


「レンティエンス様、貴方は先程まで死の淵を彷徨っていたんですのよ? 本当なら死んでいてもおかしくない状態だったんですがね、あなたの周りの女性達が必死に看病し、この私に祈ったので、助かったんです。目覚めたら彼女達に感謝するのですわよ?」


ああ、そうか。やっぱりあの時、血、出し過ぎたような気はしていたから、そうか、カーナが上手くしてくれたんだ。

リーシェンにも謝らないと。


「本当なら、いくら祈ってもそう簡単に命を繋ぎ留めるなんて、この私でも滅多にしないのですからね。今回は特別ですからね。特別サービスですわ。」


少し苦笑いして、僕に人差し指を立て、注意してくる幼い女の子。


「あの? あなたはどなたでしょうか?」


あまりにも根本的なところを聞いていなかったと思い、聞いてみる事にした。


「あら、そういえば自己紹介まだだったかしらね。始めまして、私はこの世界の頂上神にて管理伸のオーディと言いますわ。」

「あ、そうですか。僕はレンティエンス・ブロスフォードと言います。お初にお目に・・ん? 管理神?」

「そうですわよ?」

「あの、頂上神であり管理神様なのですか?」

「あの、が、どのあの、なのかは分かりませんがそうですわ」


はあ、なんと言うかこんな簡単に神様に会えても良いのだろうか?


「普通は会えませんですわ。地球の管理神に特に見守って欲しいと頼まれていましたし、私も色々と興味がありましたので転生時に色々手を加えましたの。で、何かと気になるレン君が瀕死の状態でしたから特別に手を出させていただきましたのですわ」


「えっと、その、ありがとうございます」


心の中の考えまで聞きとられていてちょっとびっくりしたけど、神様だからと割りきって、取り敢えず僕はお礼を言っておいた。

それと地球の神様にも、お礼言えたら良いのに。本当に良くしてもらっていたみたいだし。


「オーディ様? 地球の神様にもお礼を伝える事なんて出来ませんでしょうか?」


一縷の望みにかけて聞いてみた。


「え? 出来るわよ? 伝えてあげても宜しいですわ?」

「は? 出来るのですか?」

「別に問題はありませんわよ? それぐらい未来の旦那様になる可能性のある方の望みくらい聞いて差し上げますわよ」

「そうですか。それは良かったです。それではお言葉に甘えてお願いします。」


僕は、案外にもあっさり了承してもらった事に少し驚きながらも、お礼が伝わることを喜んだ。

神オーディ様が気さくな方で良かった。

僕の事を未来の旦那様だなんて、冗談を言うような・・・・


「じょ、冗談ですよね?」

「神が冗談なんて言うわけありませんわ」


真顔の神様。

僕は今多分、冷や汗をダラダラとかいている自信があった。


「ど、どう云う事ですか!? 僕って普通の人間ですよ? ただの子供ですよ? 神様の旦那様って何なんですか!?」


僕の抗議の言葉に、全く動じる事無く何故か笑っている神様。


「えへへ、それがね、地球の神が君の事を凄く褒めていたから、つい私も興味が湧いてしまって、私の旦那様になれるかもと思って神の対応力を授けたんですわ。それでずっと見ていましたら本当に良い子じゃないですか!これは超有望株と思いまして、こうしてお話しているのですわ。」


う~ん、話が飛躍しすぎて付いていけないけど、ここは頑張って話を聞こう。


「えーと、色々ツッコミ所は多いのですが、簡単にいうと僕がオーディ様の夫になる可能性があると云う事ですか?」

「そうです。さすがに理解が早いですわ。」

「いえ、理解した訳ではないのですけど。」

「まあ、良いですわ。とにかく私の旦那様に成るには、神として認められなくてはいけませんのですわ。」


それって物凄く大変そうな気がします。


「あ! そんなに心配しなくても大丈夫ですわ。その為の神の対応力なのですわ。」

「そうなんですか? クウェンディ様は神の出来る事を僕も使えるのでは? と言っておられましたけど?」

「ん~ちょっと違うかな?」

「確かに私の力の一部は使えるかもしれないけど、それは神に成るための修練に対応出来る力と云うのが正解ですわね。」

「そうなんですか?」

「そうなんですわ。」

「そうなんですね。それなら普通の神様になる場合ってどうなっているんです?」

「え? そうですわね、何十年と自分の力や知識を磨き、人々の為に身を粉にして働き、その上で偶然の出会いに賭けて、中級神以上の神と巡り会う必要がありますね。殆どの場合そこに到達するまでに亡くなられますわ。」


何か凄い話を聞いてしまった様な? つまり人が神様に成るためには死をも覚悟して修練を積まなくてはいけないと云うことか?


「で? 神の対応力が有ると、どうなるんですか?」

「簡単ですわよ。必要な知識や力は神の対応力で完璧に達成できますし、こうして上級神どころか頂上神の私と巡り会っていますから、後は人々の為に良き行いをすれば、神への昇格は出来ますわ。」

 

自信満々といった感じのオーディ様だけどそれってどうなの?


「オーディ様? それってつまり、解答が3分の2は書いてあるテスト問題を貰って、あと3分の1だけを頑張れって事なんですか?」


大きく頷き肯定するオーディ様。


「それって物凄くえこひいきじゃないですか?」


僕の言葉に少し考える振り? をするオーディ様。

そして、僕に向けてサムズアップしてきた。

自覚はあるんですね。

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