冒険者ギルド 5

「パーティークラスの表し方は次の様になります」


そう言ってパラディオ本部長は、パルワさんにお願いして何処から取り出したのか一抱え程の黒板を用意して説明を始めた。

それによると大体、こんな感じだった。

冒険者のクラスは個人がGから始まり最高がSで、パラディオ本部長なんかは国に5人もいないSクラスだそうだ。

ちなみに、母様や父様は冒険者登録していないのでクラス表記は無いけど、近衛騎士というだけでA以上と解釈されるらしい。

ただ母様はSどころではない、剣聖、の肩書があるのでそれこそ神領域らしい。

話は戻ると、その冒険者で個人では手に負えない案件を受ける為に、複数が集まりパーティーを組むのだが、複数居るからと言ってどんな依頼でも受けれるなんて事にすると、依頼料に目が眩んで低級クラスでのパーティーが高難度依頼を受け、全滅と云う事が起こりうるらしい。

実際にそういった取り決めがされる前は結構そういう話も多かったようだ。

そこで、複数人でも冒険者個人の資質をギルドが計り、人数的制限も設けてパーティークラスを設定する様になったようだ。

僕達はBが三人、Cが一人となるが、Bとは言ってもA以上の実力があるリーシェンとカーナがいるので、CのシアがいてもBクラスの最上位扱いとしてくれるそうだ。

パーティーはクラス毎に三段階あってBなら、Bマイナス、B、Bプラスと分けるそうだ。

Bプラスは、ほぼ全ての依頼が受ける事が可能らしい。

ちなみにAクラスパーティーはこの国で3パーティーしかいないらしい。

あと、Sクラスパーティーと云うのは存在しない。

Sなら単独で行動した方が効率が良いとの事らしい。

それなら僕達のパーティーは、リーシェンの様にSクラスのパラディオ本部長に勝つんだから実力はSなので単独行動も出来るから、みんな単独で行動しようかと冗談でいったら、あの冷静なリーシェンが大粒の涙を流して泣き出してしまったのですぐさま却下となった。

その後シアに僕は、コンコンと説教される事になりました。

僕は確信する。絶対、加護の神様は女神様だ。


その後も冒険者としての制限事項等を書かれた書類をパルワさんが色々と出して来ては、パラディオ本部長が僕に説明を続けた。

その間、本部長の横にパルワさんが寄り添って時には本部長の横顔を見つめていたりするので、まさかと思って聞いてみた。


「パラディオ本部長とパルワさんって御夫婦ですか?」


驚く二人だがその反応は対照的だった。


「いえ、お恥ずかしながら未だ独身です。このみてくれですから大抵の女性は怖がってしまいますから」


岩男のような強面に、熊の様な厳つい身体は確かに普通に立っているだけで人を近付けさせない迫力があるので解らないでもないけど。


「でも、パルワさんはそんな感じでは無いと思いますけど?」


「は、は、パルワ君は本当に私の事を良く補助してくれますし、秘書の様な事までしてくれますけど、私みたいな厳ついおじさんに。こんな若くて可愛らしい女性が好意を持ってくれるなんて幻想、当の昔に無くしてしまいましたよ」


あ、駄目だこの人。若い時に何かあったのかも。

相当女性に対して気後れしてる。

顔は強いけど不細工では無いんだから、その証拠にパルワさんの本部長を見る目が違うもの。


「パルワさん! 何で!此処で押し倒さないんです!」


今まで黙って聞いていたシアがいきなり立ち上がって、ビシ! とパルワさんに指を指して大声で叫んだ。

僕もついビクッとしたんだけど、押し倒すってシア、御下品だよ?


「あ! 押し倒すなんて、つい口が滑ってしまいましたわ」


と言いつつあまり反省はしてないようだ。


「とにかく! こういう輩にはビシッと自分の気持ちを伝えたらイチコロなんですよ!」


イチコロって、いつの時代の話ですかって、ここは別世界だからいいのか?

とにかく、そうパルワさんに言ってのけるシアに対して、そのパルワさんは目線をそらしてボソッと呟くように話す。


「私なんて、まだ20歳になったばかりのお子様で、顔も丸顔で太ってるって皆に言われるし、胸は人よりも有ると思うけど、背が小さいから、コロコロしてるね、って言われますし、そばかすだって無くならないし、こんな良いとこ無い女なんか本部長には不釣り合い過ぎて。」


俯いて自虐的な言ばかり宣うパルワさんだった。

もしかしてこの二人ずっとこんな感じだったのか?


はっきりいってこんな図体ばかりでかい気弱なパラディオ本部長なんか、パルワさんがはっきりと告白したら一発だと思う。

だって、パルワさん物凄く可愛らしくて素敵だもの。

小さくてコロコロって言ってるほど太ってないし、逆にこの歳の割に幼さが残る顔立ちに、このお胸は殺人的な魅力だと思うんだけどな。

と、思いつつ、ついパルワさんの胸を凝視してしまっていたらしく、いつのまにか横に居たカーナに顔を両手で強制的に振り向かされ、自分の胸に僕の視線を固定させてきた。


「カ、カーナ! く、首が!」

「レン様、そんなに女性の胸が見たければ私のを、いつでも見せますから!」


カーナの爆弾的な言葉に、リーシェンとシアも手を挙げそうになっていたが、視線を落とし自分の胸を見て二人とも手を挙げるのを止めてしまった。

う~、何故かとても居た堪れない気持ちになってしまう。

とりあえず、そのままカーナを抱きしめてあげて、ゴメンって言ったらキャ! とか言って喜んでくれて解放してもらえた。

何故だろう? 僕ってこんなにキザッたらしい事をしていたかな?

加護を受けたのはいいけれど、この加護ってそっち方面に最強なんじゃないか?と思え出してきた。

とにかく!話を戻して。


「お二人とも、お互い好意的であるのは明白なのは、判りますか?」

「「え? そうなんですか??」」

「やっぱり、判ってなかったんですね」

「シア、二人の今の気持ちは判る?」


僕の言葉に、今まで自分の胸に手を当てながらうなだれていたシアがパッと顔をあげて毅然とした態度に戻った。

王女様の威厳のある顔だけど、今のを見たら普通の女の子にしか見えなくなって来たな。

その方が余計に可愛く見えるから僕としては嬉しいし限りだけどね。


「だ、大丈夫です! 判ります! お二人ともお互いを異性として意識されておられますね。特にパルワさんは相当にパラディオ本部長の事をお慕いされているようですよ」

「ええ!?」


パラディオ本部長はパルワさんを凝視して驚いている。

そして見つめられているパルワさんは、真っ赤な顔をして俯いている。

うん、可愛い。

これで何とも思えない男は不感症だろう。


「パ、パルワ君、その本当なんだろうか? こんなオッサンで女性だけでなく男性からも見た目だけで怖がられている私なんかを?」

「そ、そんな事ありません! 私は幼い時にパラディオ様に森で魔獣に襲われているところを助けられて以来、ずっとお慕いしておりました!」


勢いのある言葉に乗せてパラディオ本部長に迫るパルワさん。

なんと幼い頃からって、どんだけ一途なんだ? まさかとは思うけどパラディオ本部長、光源氏作戦なんかしてないだろうな?

まあ、人柄からしてそんな事は無いと思うけど。


「その、私なんかでいいのか?」

「パラディオ様でないと嫌です!」


あ~あ、二人で手を取り合って見つめ合ってるよ。

これはカップルの出来上がりだな。

シアや、リーシェンにカーナまで羨ましそうに二人を見てる。

ああいう事をして欲しいのだろうか?


「レン様!」

「は、はい!」


いきなりパラディオ本部長が机に手をバン!と勢い良く突いて僕に迫ってきた。


「有り難うございます! この私にこの様な春が訪れるとは今の今まで思っておりませんでした! これもレン様のおかげでございます! この御恩一生忘れる事無くこのパラディオ、御身の為に尽くすことを誓わせていただきます!」


おお、何か凄く喜ばれてしまってるけどちょっと鬱陶しいかも。


「いや、パラディオ本部長、そこまで言って貰わなくても良いんだけど?」

「いいえ! システィーヌ様にお許しを頂き、レン様がブロスフォード家の家督を継がれた暁にはこのパラディオ臣下として馳せ参じさせていただきます!」


うわ~、この顔で迫られるとやっぱり怖い。


「レン様、おめでとうございます。将来の優秀な臣下が加えられたこと本当にお喜ばしい事でございます。」


リーシェンが、少し目の周りを赤く残したまま僕にお祝いの言葉をかけて来てくれた。

う~んまあ良いことなんだろう。

Sクラスの強者でギルドの本部長も勤める程だから頭も相当にきれる傑物だしね。

それより、リーシェンには後でもう一度謝っておこう。


「あの~少し宜しいですか?」


パルワさんがパラディオ本部長の裾を引っ張って質問をしてきた。


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