冒険者ギルド 4
「お帰りリーシェン」
長槍を次元収納に収めながら帰ってきたリーシェンを僕達は迎え入れた。
「はい、ありがとうございます。さすがはギルドの本部長ですね。結構ぎりぎりでした」
汗一つかいていない涼しい顔のリーシェンがそう言っても誰も信用しないと思うよ。
「いやあ、私の感じた以上の才能だよ! 私の完敗だ」
厳つい体に強面の以下にも武闘派のイメージが強い本部長が、白い歯を見せながら爽やかに笑っている様子は違和感でしかなかったけど、本人は気にしている様子は無かった。
「いえ、パラディオ本部長様こそ、小娘相手に本気で対戦して下さってありがとうございました」
リーシェンは、深々と頭を下げて本部長さんにお礼を言うが、その本部長の額には青筋が立っている様に見えた。
「は、は、手厳しいなあ、私の本気をあんな簡単に打ち返されてしまっては立つ瀬が無いよ」
笑ってはいるけど、相当悔しそうだな。
「さて、これでリーシェン君はSクラスの実力がある事が証明されたんだけど、さすがにいきなりSクラスとはいかないし、規定でのAもBもできないからCクラスと云う事になるんだがそれで良いかな?」
体の厳つきに比べて喋り方はかなり腰が低い物言いで、リーシェンに尋ねてきた。
それをリーシェンは直ぐに答えず、僕の方に視線を送ってきた。
「はい、特に問題ありません」
リーシェンは主である僕に決定して欲しかったんだろう。
僕が返事をするとリーシェンが微笑んでくれた。
「そうか、何分冒険者としての実績が無いと、国王直轄に騎士と同じ待遇のSクラスには出来んからな」
決定権が一応僕にあると確認した本部長さんは今度は直接僕に話しかけてきた。
この辺の身のこなしは流石、ギルドの本部長だ。
あれ? ちょっと待てよ? 今国王直轄の騎士とか言ったよな? 僕達一応姫様の近衛騎士となっているから国王直轄と同等の扱いのはず。
ならSでも良いのか? でもそうすると本部長は僕達の事を知らない? のか?
「あのう、パラディオ本部長? 母様から何か聞いてませんか?」
「母様?」
僕の言葉の意味が解らないのか、腕を組大きく首を傾げている。
なんか頭の上に?マークがいっぱい飛んでる様に見えるぞ。
「はい、母様です。僕達の素性を知っていたから、このクラス試験を買って出たんですよね?」
「ん? なんの話だ? 私はパルワ君から、かなり強そうな人材が登録に来たと聞いてな、それとなく影から見ていたら、この女性があのカーナ君に匹敵しそうな雰囲気を出していたから興味本位で立ち会っただけなんだが?」
んんんんんんん?? 何か話が合わないぞ?
「一つお伺いします」
「何かな? え~と・・・・・すまん名前なんといったかな?」
あ、やっぱりこの人僕達のこと全く気づいて無いぞ。
「レンです。ちょっとお耳をお貸し願えませんか?」
「お!? おお、良いぞ!」
パラディオ本部長はそう言って僕の背丈まで腰を落としてくれて耳を僕の方に向けてくれた。
ただ、その顔が少し赤いのは何でだ?
「僕は、レンです。レンティエンス・ブロスフォードです」
本部長さんだけに聞こえる程の小さい声で、僕の本名を聞かせてあげる。
何故かその間、カーナを始めとして4人の女性陣も顔を赤くしているのが気になったけど。
「え? え?? ええ?? えぇえー!」
ガバッ!!! と云う擬音が目に浮かぶような速さと勢いで僕の足元に頭を付けて土下座をする本部長の姿がそこにあった。
訓練場全体に静かになる。
それはただ一点に皆の視線が集中した為に起こった、僕にとっては血の気が引く状況だった。
「な! 何してるんですか!! リーシェン! カーナ! この人を連れて此処から脱出する!!」
「「はい!!」」
僕の号令と共に、土下座したまま固まってしまっている本部長をリーシェンとカーナが担ぎ上げ、訓練場を脱兎のごとく出て行く。
そのあとをシアの手を引いて僕達も急いで此処から立ち去る。
シア、今はそんなに嬉しそうな顔しないで良いからね。
「すみませんでした!!」
今、僕達は冒険者ギルド本部長の執務室に併設されている応接室に通されていた。
此処に今居るのは、パラディオ本部長、僕、シア、リーシェン、カーナ、そしてパルワさんの6人だけでだ。
ただ、パルワさんは何が何だかって困惑の表情で固まっているけどね。
「それで、母様からは事前にお話が無かったのですか?」
「いえ! 事前にはお話を受けております。その為の準備や偽装工作も万全でした!」
しかしこれは話しづらいな。
僕とシアは通された応接室の真ん中にあるソファーに二人並んで座っていて、その後ろにリーシェンとカーナが僕達の背後を守る様に並んで立っている。
本当はリーシェンとカーナにも一緒に座るよういったんだけど、ガンとして首を縦に振ってくれなかったので仕方なく立ってもらっている。
ただそれはさほど大きな問題では無かったが、その問題は僕が座っているソファーの横で床に頭を付けて土下座のままで話しているパラディオ本部長にあった。
「あのー本当に普通に座って貰えませんか?何か酷く悪い事してるように感じるので」
「それは出来ません! この様な失態、このパラディオ! 腹を切ってでも償わせていただく所存!」
「ですから、多分母様が面白がって僕達がこちらに伺う日程をわざと間違えて報告していると思いますので、気になさらずにお願いします」
「いえ! どの様な状況であろうと、対処出来なければシスティーヌ様に教えていただいた者として許されるものではないと思っております!」
なんて頭の固い人なんだ?
人柄は悪くないのは解るんだけど、これでは話が進まないよ。
もしかして母様の元部下ってみんなこんな感じなのかな?
「レン様!」
僕とパラディオ本部長が押し問答していると、背後からパルワさんが僕の名前を叫んでそのまま、パラディオ本部長の隣にやって来て一緒に土下座し始めだしたぞ?
「パルワさんまで、何やってるんですか! それに様ってなんですかさっきまで君だったでしょう?」
「いえ、何で本部長がこれほど謝っておられるのか解りませんが、これは私が本部長に正確な報告をしなかった為に起こった事ではないのでしょうか? それならば私も同罪です! どうか本部長を虐めないで下さいませ!」
パルワさん、目に涙いっぱい浮かべて必死に訴えかけて来る。
もしかして僕って物凄い悪人に見えてるのでは無いだろうか?
「パ、パルワさん!別に虐めて無いからね? 僕はそんなに謝らないでって言ってるくらいだからね。どちらかと言うと僕の母様の悪戯が原因だから、謝るなら僕の方だから、ね!」
「ほ、本当ですか?」
パルワさん僕との位置的に下から覗く様な上目使いで言ってくるから物凄く可愛らしく見えてしまい、つい顔を赤くしてしまった。
それを見逃さなかった、リーシェンやカーナが僕に視線を突き刺して来る。
僕の加護の力って、対女性には全く効力が無いのかもしれないと思った瞬間だった。
加護を与える神ってもしかしたら女性なのか? 女神様?
そんなこんなの押し問答が続いて
申し訳なさそうに大柄な体を縮めてソファーに座るパラディオ本部長を両手で抱える様に支えながら隣に座るパルワさんに相対するように僕とシアがソファーに座っている。
リーシェンとカーナは相変わらず僕達の後ろに控えて立っている。
「それで、パラディオ本部長、僕達の冒険者登録の件ですが、」
「は!はい! 当初の予定通り、シア様を除く御三人方をBクラスと認定し、シア様はCクラスとさせていただきます。よってパーティーのクラスはBプラスとなります」
「Bプラスですか?」
僕はまだ聞いていないパーティーのクラスについて聞いてみることにした。
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