社交界 4
「父上、あまり人の欠点を大声で言うのは宜しくないですよ。」
今度は、ジルデバル辺境伯を父と言ってくる男の子が現れた。
カルロとは、正反対の色白で金髪の少年は僕と同じくらいの背格好かな?
美少年なのは間違いないが、何か僕を見る目が凄く嫌らしく感じるのだけど。
「父の、行き過ぎた言葉に謝罪申し上げます。僕はデューラン・ジルデバルと申します。父もこの国の事を思うあまりの行き過ぎた言葉ですので、ご容赦下さい。」
優雅な動作でお辞儀をするデューラン。
しかし、何だろうこの悪寒めいた感じは?
「解りました。謝罪は受け入れましょう。但し今後、このような容姿に関して非難するのは止めていただきたい。」
「もっともです。それに僕としては彼の様な美しい方は、女であろうと男であろうと関係ないと思っておりますから。」
お!何だこの感じ!危険信号が鳴りっぱなしだ!
「レンティエンス君でしたね。僕はデューラン・ジルデバルです。デューとお呼び下さい。」
そう言って僕の手を取り、口づけをしてきた。
ぞわぞわぞわ~~~!!!
思わず、10メートル程後ろへ瞬間移動した。
何だ?こいつ! 僕が男だって判っていながら、僕の手に口づけしてきやがった!
鳥肌が過ぎて蕁麻疹が出てきそうだ!
「何をなされるのか!デューラン・ジルデバル様!」
カーナとリーシェンが僕とデューランの間に入り立ち塞がってくれる。
その顔は汚物でも見るような酷い顔をしている。
多分僕も同じような顔しているから問題ないというよりカーナ!もっとそいつを蔑んでいいぞ!
「はて? 僕が何か? もしかして口づけの事ですか?」
デューランは、何故それほど毛嫌いされるのか判らないといった感じに手を横に広げる。
「僕は、ただ単に綺麗な方には全てに致しますよ? 僕にとって女とか男とか関係ないですからね、美しいものは美しい、それを愛でるのになんの垣根がありましょうか!」
ああ、駄目だこいつも。
「デューラン・ジルデバル様は男ですよね?」
リーシェンが改めて質問する。
「当たり前じゃないですか。ただ愛する者に男女間の差別は無いだけです!」
言いきったよ、こいつ両刀だ! 7才で両刀に目覚めている?
駄目だ体が勝手に拒絶反応みせているよ。
つい自動防衛で自分の体を手で隠そうとしてしまう。
それを見たリーシェンが、鼻血を出しているのは無視。
デューランはそんな僕を見て舌なめずりしている。
僕の同期はろくなのがいやしないのじゃないか?
「父上、どうです? 彼、僕が貰っても宜しいですか?」
良いわけねえだろう!
「おお、そうか別に構わんぞ。只たまにはわしにも貸してくれると良いがの。」
何だ!この親子?
そういえば貴族って若い男を囲って、そういう事をする輩も多いと前世の話では聞いた事があったような。
しかし、ボルトールといい、ジルデバルといい、大貴族って云うのは人の話を聞かない動物なのか?
権力や地位があると何でも出来ると勘違いしたないか?
それより、母様とカーナやリーシェンが僕を囲って完全防御の体制になっている。
「何を警戒なさっておられる? そんな話は冗談に決まっておろう? 真剣に受け止めるとは真面目な方々ですな?」
「父上、そのように社交界のジョークを判らないのは純真無垢だからですよ。」
そう言ってデューランが僕に向けてウインクしてきた。
絶対に冗談ではないぞ。
「それでは、息子の紹介も済んだ事ですし、ここは一度退散させていただきますぞ。」
ジルデバル辺境伯とデューランはそろって僕たちの前からホールの奥へと立ち去って行った。
「・・・・・・・ぷっはあ! 気持ち悪かったあ!」
僕は大きく息を吸って深呼吸してようやく気持ちが落ち着いてきた。
「申し訳ありません! レン様。さすがにこの場では抜刀も出来ませんので完全に防ぎきれませんでした!」
「え?良いよそんなこと。カーリーとリーシェンは充分頑張ってくれていたよ?」
「レンちゃん! 私は、私は!?」
母様が自分も褒めてと言ってくる。
「はい、母様もありがとうございました。それより本当にあんなのがいるのですね?」
「まあ、そういう噂は有名だったけど、ここまで明け透けに言ってくるとは思いもしなかったわ。今後はそっち方面も警戒しないといけないはね。」
本気で考え出す母様。
もっと本気で考えても良いですからね。
「それでは皆様、これよりフォレスタール王国、国王ディルエ・ラル・フォレスタール陛下のご入場であります!」
会場中に司会の方のアナウンスが流れる。
かなり広い会場だが、どんなに奥の方に居ても、人同士の会話が盛り上がっていようと、その声は確実に会場にいる人間に伝わる。
これは伝送魔法によるものらしい。
魔法は、戦争や魔物討伐以外にも、生活に根付く物にも多く関わっていて、その中の一つがこの伝送魔法なのだそうだ。
こういう便利機能が出来るなら、科学の進歩はそれほど重要では無いのかも知れない。
「母様は国王様に、良くお会いになっておられたのですよね?」
「まあ、元近衛師団長だったし、お妃様は私の幼なじみだからね。」
「どんな方なのですか?」
「ん~、そうね。優しい方かな?」
「それ以外は?」
「ん~、無いわね。」
「え?そんなはず・・・・」
「無いのよ。とことんお人好で人を疑うのが苦手な人だね。その優しさが国を救う事もあるけど、確実に滅亡に向かって行っているような国だね。」
「大丈夫なのですか?」
「大丈夫な訳ありません! なんとかこうしていられるのは、王派と反王派で睨み合いが続いて、お互いが牽制し合っているので、内乱とかが起こらないのが救いでしょうか? あとはお妃様が頑張っているおかげかな?」
ちょっと苦笑い気味な笑みを作る母様。
相当、この国の王は王に向いていない王なのだろう。
僕は奥の扉が開き、会場より一段上に設けられたステージの中央に向かって一人の男性が歩みを進めていた。
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