え? 神様? 1
大聖堂を出た僕たちは、母様に連れられてお城に併設されている近衛師団の宿舎や演習場がある一画にやって来ていた。
その中でも雨天時に練習出来る室内演習場に僕とメイドのカーナとリーシェン、そして母様の4人に、何故かクウェンディ様とババ様がおられた。
「ババ様、クウェンディ様どうしてここに?」
「まあ、それは後で話すとして、久しぶりじゃのう、レンや」
そういえばババ様とあったのは半年くらい前だったかな?
僕が転生者として覚醒する前だ。
「そうですね。僕も久しぶりに会えて嬉しいです」
そう言うとババ様が満面の笑みを返してくれる。僕はこのババ様の笑顔が大好きだった。
何か凄く安心できるのだよね。
「クウェンディ様、先程はすみませんでした。僕の加護の件でご迷惑おかけしました」
僕は今一度お詫びしお辞儀をした。
「あら、良いのよそんな事。ちょっと想定していたよりも凄かったから一瞬戸惑ったけどね。取り敢えず予定通りよ。それよりレンちゃんは優しいわね。誰かさんと違って」
クウェンディ様の目は母様に向けられている。
それを真っ正面から受け止め、にらみ返す母様。
「大きなお世話です。それよりここなら大丈夫でしょう。さっさと話しなさい。今ならレイナードの部下達がこの屋内演習場の外を警護して、誰も中に入れさせないから」
「そう、取り敢えず問題なさそうだね」
周囲を見て他に人が居ないことを確認すると僕の前に立つクウェンディ様。
「まず、私は誰か解るわね?」
唐突に予想外の事を言ってくるので一瞬戸惑ってしまう。
「え? その、クウェンディ様ですよね。エルフ族の神官で、この世界の神々のお言葉を聞き留める事が出来る上級神官。その中でも、頂上神オーディ様に最も近しい大神エグラシル様の御言葉をお受けできる世界でも数少ない大神官のお一人、で宜しいでしょうか?」
「何かそこまで丁寧に言われると恥ずかしいわね。特にレンちゃんに言われると余計に恥ずかしいわ」
本当に少し顔が赤くなっているみたい。
そんなに恥ずかしい事言ったかな?
「このエロ神官・・・」
母様声に出ています。
「とにかくその通りよ。で、私はそのエグラシル様から言葉を受けたのよ、レンちゃんの事についてね。それもあなたが生まれる前の時点で、天啓を頂いていたの」
「て、天啓ですか?」
「そうよ、その内容をこれから話すからちゃんと、聞いておくのよ?」
「は、はい」
そう言われた後、僕が生まれる前にあった天啓の話をされ始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ~、なんと言いますか、僕が神様の可能性ですか・・・」
エリオン様とフォルセ様が話されていたから、神様達とかなり関係が深い立場何だろうとは分かってはいたけど、生まれる前からそんな話になっていたのか。
「なんじゃ、レンよ、あまり驚いておらぬな?」
僕があまり取り乱さず聞いているのが拍子抜けしたのか、ババ様が不思議そうに聞いてきた。
「え? まあ、昨夜、僕の所にエリオン様とフォルセ様が来られてお話しましたから、おおよそは、予想していましたから」
「なんじゃ、そうなのか? エリオン様とフォルセ様がのぅ・・・・・」
「「「「「えええええええええ!!?」」」」」
皆が一斉に驚きの声をあげていた。
そう言えばまだ話してなかったかな?
「レンちゃん! お母さん、そんな話聞いてないわよ!?」
「はい、話してませんから」
「レンちゃんが、冷たい・・」
「違いますからね? 神様の相談の事をそう人にポンポン話す事ではないと思っただけですからね? いずれ母様に一番に相談しようとは思っていましたよ?」
「本当に?」
「はい」
僕はなるべく一番の笑顔で返事をしてみた。
「でへへへへへへへ」
「剣聖ともあろう者が、どれだけ緩み切った顔してるのじゃ?」
「システィーヌ、あなた子離れできそうにはないわね?」
ババ様とクウェンディ様が交互に呆れた言葉を投げつけるが、全くそれに動じる様子も無くデレデレする母様だった。
「それはさておき、レンよ、エリオン様とフォルセ様の事詳しく聞かせるのじゃ」
「は、はい!」
ババ様、そんな凄んで僕を睨まないで下さい。怖いです。
僕はその後、みんなに昨夜の神様との相談等の話を聞かせることになった。
・・・・・・・・・・・・・
「つまりじゃ、レンの神名、神対応とは、神に対応できるほどの相談役? ということなのかの?」
「まあ、そんな感じでしょうね」
「う~んんんんん」
あ、ババ様が頭を抱えてしまった。
「でも、それなら私が見たあれは何だったのかしら?」
今度はクウェンディ様が不思議そうな顔で、僕に聞いて来る。
「何を見られたのですか?」
「レンちゃんの神の加護、私はオール神って適当に言った様に思うでしょ?」
「あ、まあそうですね。どなたも知らない神様の名前ですから、いくら新しい神様と言っても不自然ですよね?」
「そうね、じっさいオールなんて神様は居ないわ」
やっぱりそうなんだ。
「でも、意味がない訳じゃないの。あのオールと言う言葉は、昔、ハイエルフという古の種族がこの地で文明を築いている頃の古い言葉で、全て、という意味があるのよ」
「?」
「ん~、つまり、私はレンちゃんの加護を見た時、複数の神の名を見たのよ。大神エグラシル、剛神アトゥナ様、速神エルアネス様、剣神バトラウス様、心意の神エリオン様、優愛の神フォルセ様、そして問題なのはその神々以外にも空白のスペースが多数存在しているように見えるのよね」
クウェンディ様曰く、神様の加護をいただくと、その神の名が心に刻まれるのだが、個人によってその刻まれるスペースと言うのが決まっているとの事で、そのスペースの数だけ、神様の加護を受ける許容、数が決まるそうだ。
ちなみに、母様の神様の加護は現在3柱だけど、まだ3柱分のスペースが残っているそうだ。
まだ、強くなるというのだろうか?
でもそのスペースの数が僕の場合いくらあるのか分からなかったそうだ。
「つまり、かなり多くの、いえほぼ全ての神様の加護を心に刻む事が出来るという事」
「・・・・・・・・・・クウェンディ様、それってやばくないですか?」
「ええ、かなりやばいわ。それはもう、頂上神オーディン様のように全ての神の力を使えるという事。それってもう立派な神としての存在と変わらないということ」
頭痛くなってきたぞ。でも今の話だと、僕の神の加護はまだ6柱。
いや6柱でも人類史からみれば異常な数なんだろうけど? それ以上加護を授からない可能性もあるんだよね?
「で、レンちゃん?」
「は、はい、クウェンディ様」
「今レンちゃんが授かってる神様って、みんな身近な人の神様じゃない?」
あれ? そう言えば・・・エグラシル様以外は、母様に加護を授けていただいている3柱の神様と、昨晩直接会った2柱の神様・・・・まさか・・・
「まさか、僕が出会ったり、縁が出来た神様の加護を授かる・・とか?」
「・・・たぶん、そうじゃないかしら?」
深いため息と共に、僕と、クウェンディ様、ババ様と母様の全員が、肩を落としていた。
カーナとリーシェンは何事かと、驚くばかりの様だ。
僕は、これから神様が訪れて相談に乗るたびに、加護が増え人間から離れていくのだろおうか?
う~ん、地球の管理神様、ちょっとやり過ぎじゃないですか?
僕は心の中でちょっと愚痴を言ってみたくなった。
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