加護の儀式 8


皆が、驚きの顔でクウェンディ様を見つめている。

新しい神様? やはりその神様が全ての神様の相談役ということか? でも新しい神様がそんな大役を務めているのか?

・・・・・・・それとも、もしかして、僕の加護を隠すつもりなのか?


「それは、また前例の無い、お話ですな? システィーヌ様の時も前例が無いほどの複数神持ちで驚きましたが、これはこれで、前例が無い次第ですな」


どことなく馬鹿にしたもの言いをする、ジルデバル辺境伯。


「そうですな。まさか新しい神とは・・・それでは上位神どころか中位神にもならない、低位の神ではないですか」

「さようですな!」


ジルデバル辺境伯に同調するように声をあげる貴族達。わざとらしいな。


「して、どのような神様なのですかな? 低位といえど、ブロスフォード家の嫡男に加護を与える神なのですから、それは素晴らしい能力の神なのでしょうな?」


追い打ちをかけに来るジルデバル辺境伯。

その言葉に、冷静さを保ち、何事もないかのようにふるまっているクウェンディ様。


「いえ、まだ新しい神である為、どういった力を秘めておられるかまでは判りません」

「つまり、今は無能なる神だと言うことですな?」

「・・・・・・・・・」

「ほほう、左様ですか。それは面白いですな。レンティエンス殿は、あのブロスフォード家の跡取りだというのに、無能神の加護を授かってしまうとは、この先大変でしょうな。ハハハ。」


「!!!」


ジルデバル辺境伯の言葉に、リーシェンとカーナの顔が鬼の様な形相になっている。

僕が、馬鹿にされたと思って怒ってくれているのだろうけど、その勢いで跳びかかっちゃ駄目だからね。


「カーナ、リーシェン、僕はこの程度大丈夫だから、冷静にね。」

「し、しかし、あからさまにレン様の事をけなされて黙っているわけには、」


僕はそれでも抗議しようとするカーナの唇に指を当てて言葉を制して前にでる。


「ジルデバル辺境伯様、誠にありがとうございます。この若輩者、ジルデバル辺境伯様のご忠告を胸に刻み、将来、このフォレスタール王国に貢献出来る人材となるよう心掛けてまいります。」

「そ、そうか良い心掛けだなレンティエンス殿。期待しておるよ。」


ジルデバル辺境伯は僕というより、母様に仕返しがしたかったのだろうけど僕の対応にそれ以上言い出せなくなってしまった。

これも対応力の成せる技かな?


こうして加護の啓示の儀式は終わった。

そして殆どの人は大聖堂から退出し、帰路に着く。しかし別室での平民の加護の啓示式は、まだ終わってないようで、時々歓声等が聞こえ漏れてきていた。

この中から将来有望な人も出てくるのだろうなと思い考えていると、カーナとリーシェンが僕の両脇に並んできた。


「レン様、先ほどは軽率な行動をしてしまい申し訳ありません。」


カーナとリーシェンが二人揃って頭を下げてきた。


「どうして謝るの? 僕の事を思っての行動でしょ? 有難うって気持ちはあっても謝って欲しいとは思ってないよ。」


僕は素直な気持ちを二人に伝えた。


「こら、レン、あんまり二人に優しすぎると大変な事になるわよ。」

「あ、母様。大変な事ってなんですか?」

「二人を良く見てご覧なさい。」


僕は、良く判らず母様の言う通りに二人を見てみると、なぜか二人とも瞳をウルッとさせて僕を見つめている。


「ちゃんと男として最後まで面倒みなさいよ。」


母様の言葉の意味が今ひとつ判らなかったけど、二人をこれからも大切にするのは当然だね。


「レン、それじゃあこれからお城に向かうけどその前に話しておきたい事があるから、ちょっと別室に行くわよ。」


母様のお話ってなんだろう?


「では、私達は別室の前で警護いたします。」


カーナとリーシェンが、何か特別な内容だろうと察して部屋に入らない事を告げてくれる。


「カーナ、リーシェン、あなた達も入りなさい。ただしこの先、レンと共に歩く事を少しでも出来ないと思っているのなら辞退しなさい。」


二人は母様の言葉に驚いていた。今の言葉で話の内容が相当、覚悟する必要があることを促しているし、その内容を知ったからと言って僕から離れる事を簡単に許さない事を突きつけられたからだ。

でも二人が驚いたのは一瞬だった。


「システィーヌ様、あまり私たちを見くびらないで下さい。」

「そうですよ。どんな事があってもレン様と離れる事は一生有りません! 問題にもなりませんよ。」


二人の真剣で真っ直ぐな答に、母様は微笑んでいるようだった。

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