加護の儀式 7


「そ、それじゃあ、神の加護の確認、ちゃっちゃとやっちゃいましょうか」


なんかとっても軽い気がするのだけど、ようやく本題に入れるから突っ込まないでおこう。

ここまで長かったですから。


僕の額にクウェンディ様の手の平が当たると小声で呪文を唱えだした。


「汝に、加護を授ける神の真名を告げ、心の記憶に刻み込まん」


額の部分に小さな光のサークルが現れ、一瞬光の強さが上がったと思った瞬間、サークルは音もなく消えていった。

クウェンディ様は、僕の加護を確認しているようだ。少し他の人に比べて間があるような気がする。

あれ? 結構考えておられるような? 沈黙が少しの間、大聖堂に流れた。


「レン・・・」

「はい!」

「加護を授かる神の名を伝えます」

「は、はい!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・これは・・・想定していたよりも、凄い・・・」


何か、クウェンディ様、小さな声で呟いている? 近くにいる僕とババ様にしか聞こえない程度だけど。

ババ様もその呟きが聞こえたので、クウェンディ様の方を見ている。

何か睨んでいるような。

あれ? なんだか僕の顔を見ながら、難しいな顔をされているのだけど?


「と、取り敢えず、考えていた名前を言っておくとしましょうか・・・」


どういう事だ? 小声でブツブツと呟くクウェンディ様。息を大きく吸って深呼吸をしている。


「レンティエンス、あなたの加護を与える神の名を伝えます。その神の名はオール様です!」

「・・オール様ですか?」

「そうです」

「・・・そうですか・・はい、ありがとうございます」


僕は、深々と頭を下げてお礼する。

聞いた事が無い神様だな。そんなお方が居られたとは、僕も勉強不足だな。その方が僕を神の相談役としての加護をお与えになる神様なのかな?


「クウェンディ様!ご質問宜しいかな?!」

「な? なんでしょう?」


加護の啓示を全ての子供が終わったところで、ジルデバル辺境伯が声を上げた。


「我の不勉強さゆえ、神オール様とは一体どういう神なのでしょうか? 私の知る限りでは、その様な神は存在しないと思っておりますれば御教授願えませんかな?」


ジルデバル辺境伯は、にこやかにでも何か企んでいるような顔つきで問い掛ける。

その問題に、クウェンディ様は怪訝な表情を一瞬見せるが、直ぐに笑顔に戻る。


「ジルデバル辺境伯、お久しぶりですね」

「は、このジルデバルの名を覚えていただいており、感謝いたします。それでどうなのですかな?」


うやうやしく右手を胸に当てお辞儀するジルデバル辺境伯に、鬱陶しそうな顔のクウェンディ様だった。


「ジルデバル様、神の加護についての詳細については後日、王国新報で各貴族、氏族の皆様には通達され、そこにどなたがどの様な神様に加護を授かっているのか、その内容についても通達されるはずですが?」

「はは、それはそうなのですが、王国でも屈指の騎士を輩出するブロスフォード家の嫡男であるレンティエンス殿の加護については、私ども興味がありますのでな、少しでも早くお聞きしたいのですよ。そうですよね皆様方!」


下手な演技で周囲の貴族にアピールすると、他の貴族達が頷き始めだした。


「そうですな、王国を政治を預かる身としても、将来の英雄になるかもしれない若者の加護がどのようなものか早くに知りたいものですな!」


派閥としては、敵対関係のボルトール侯爵も何故か僕の加護を知りたがる。

う~ん、何かわざとらしいね。

しかし、この二人の声に多くの貴族が賛同し始めていた。

これは話してもらった方が良いのじゃないかな? でも神様の相談役


「クウェンディ様、僕も知りたいですし構いませんので、皆様に教えて差し上げて下さい」


僕がそう言うと、クウェンディ様の眉毛がピクピクと動いた気がしたけど、それ以降は冷静なクウェンディ様に戻っていた。

? 何だったのだろう?


「分かりました。お答えしましょう! オール神様とは・・・」


とは?


「新しくお生まれになった神様です!」


「「「・・・・・・・・・・・・」」」


大聖堂のホールに集まる人々のざわめきが止んだ。

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