加護の儀式 5
ジルデバル辺境伯のちょっとした、いざこざで出鼻をくじかれたが、ようやく僕にも加護の儀式を受けると時がやって来た。
今回この儀式に参加している子供は平民も合わせ、130名くらいになる。
そのうちこの大聖堂に来ているのは、貴族が中心で他に大商人等の富裕層の子が15名位来ているそうだ。
こうして見回すと、それぞれ幾つかのグループに固まっているのが判った。
「リーシェン、あのグループって、もしかして派閥毎のグループだったりするのかな?」
僕は何となくそんな気がしたのでリーシェンに尋ねてみた。
ちなみにカーナでなく、リーシェンに聞いてみたのは、ただ単に母様付きとしてよく王城へも行っていたのでその辺りのことが詳しいと思ったからだ。
「はい、良くお判りですね。レン様の言われます通りで、それぞれの派閥に別れております。」
「そうか、じゃあ簡単に教えてもらえる?」
僕は少し小首を傾け微笑みながらお願いする。
「え?! リ、リーシェン! 大丈夫?!」
突然、リーシェンが鼻血を出したものだから、びっくりしてつい大声を出してしまった。
「だ、大丈夫でございます。逆にご褒美にございます!」
「そ、そう?」
まぁ、本人がそう思うなら別にいいか。
それより、今の大声で一斉に周囲にいた他の貴族等が僕らの方に視線を向けて来た。
「だ、誰? あの女の子?」
「物凄く可愛らしいけど、あんな女の子初めて見ましたわ!」
などなど、ヒソヒソ話にしては良く聞こえるなあ。
「レン様、少し諌めてまいります。」
と言って、カーナが腰の刀に手を掛けながら、さっき僕の噂をしていたグループに怖い顔で向かおうとしていた。
「ちょ、ちょっと待って!カーナ。そんな事で怒らなくて良いからね。」
カーナは僕の事を女の子と言って噂したのが気に入らなかったみたいだけど、そんな事で一々気を立てていたらきりがないよ。
「いい?カーナ。僕のこの容姿の事は気にしてないいから。今はどっちかと云うと嫌じゃないよ? でも小さい時はそれで虐められた事もあったから、カーナが僕を心配してまた虐められると思って言ってくれているのは解るよ。でも今日からは社交界にも出なくてはいけないし、多くの人と会う事になるからね、虐められたからと言って逃げる訳にはいかないから。だから大丈夫だからね。」
僕は、幼い頃そうやって虐められた事が多くあって引きこもっていた事があったみたいだ。
転生者として覚醒した時には、もう立ち直っていたみたいだけど、相当に辛かった記憶が残っている。
だからそれを知っているカーナは、僕が女の子と言われるのを特に気にしてくれている。
逆に、自分のように気にして思ってくれているカーナが側にいてくれたから立ち直ったのかもしれないな。
カーナには感謝しないと。
そんな風に考えていたら、カーナとリーシェンが涙を流して大きく頷いていた。
「ど、どうしたの?二人とも?」
「い、いえ! レン様があまりに立派になられていて、私もカーナさんも感激してしまって!」
う~ん、ちょっと言い過ぎじゃない?
それにさっきより注目を集めているよ。
カーナ、リーシェン、泣くの止めてね。
母様!あなたもなんで一緒に泣いているんです!
僕は三人を引っ張り、柱の影に隠れるように移動する事にした。
「それで、リーシェン派閥の事、教えて欲しいのだけどいいかな?」
「は、はい、グス・・・はい、大丈夫です。えーとですね、私達から見て右の集団が、先程レン様に突っ掛かってきた、ジルデバル辺境伯のグループです。辺境地の広大な領地から集まる資金源を元に、多くの貴族を買収してのし上がった一派です。」
そうか、どうりで金満家らしく、きらびやかな服装だと思った。
「それから反対の左手の集団が、ボルドール侯爵の一派です。こちらは古参の集団で古くから王家に対立しています。官庁に息の掛かった者が多く、政治に自分たちの意見をごり押ししてくるような事が多々見られますね。」
うーん、プライドは一番あるのかな? 誇りの無い貴族も問題だけど、プライドが邪魔しすぎるのもどうかと思うね。
「最後に正面の奥にいる集団がダナン公爵様の一団ですね。ダナン公爵様は、フォレスタール王の弟君で王家を影で支える1番の功労者ですね。ただ派閥の中では1番勢力が小さいですね。」
「ん?と言うことは王家の力は、思ったより弱いと言う事なのかな?」
「はい、仰る通りです。」
「なるほどね。そうしたら母様はどの派閥になるのですか?」
「私? ん~、無所属? かな?」
え? ダナン派じゃないんだ?
「我がブロスフォード家は、代々、王家の為だけに存在する家であり、王家以外の貴族家に興味はないわね。それに、王妃様は私の幼なじみだし、姫様は私のお友達だからね、この二人が最優先だね。」
「え?では王様や王太子様は違うんですか?」
「ああ、それは父様が警護されているから大丈夫でしょう」
なるほど、ブロスフォード家は他の貴族と違って、王家直属の家臣みたいなもので、他の貴族を牽制する意味で重要な位置にいるということか。
すると僕の立ち居振る舞いが、色んな事に影響する可能性もあるということだ。
十分注意しなきゃね。
僕が一通り今の貴族情勢を聞き終えた時、大聖堂に声が響き渡った。
「これより、加護の啓示式を始めます。対象のお子様方は係が誘導する場所までお越しください。
加護の儀式の宣告と僕たちを呼ぶ声がした。
僕は母様を残し、カーナとリーシェンと共に係の誘導に従い大聖堂の中央へと向かった。
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