初めての相談 3

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「それは、どういう事でしょうか?」


エリオン様、悲しそうな顔をしている。神様でも悲しい事もあるのか・・


「私が・・ファルシアちゃんに、何も考えずに加護を与えてしまったの。そのせいで、彼女の心を痛めつける事になって、悲しい思いをさせてしまった。それは今でも彼女を苦しめ続けている。フォルセが加護を与える程の優しい子なのに、私が余計な事をしたせいで・・・」


話が途切れる。俯いたまま、顔を挙げられないエリオン様。肩が小刻みに震えている。


「ここからは私がお話します」


それを見かねたのか、フォルセ様が話出された。


「レンティエンス様は、今のファルシア王女様の事、ご存じでしょうか?」

「ええ、母様から聞き及んでおります」

「そうですか。では話は早いですね。単刀直入に申しますと、ファルシア王女様の心の苦しみを和らげて差し上げたいので相談したいのです」


フォルセ様の真剣な顔はこの事を真剣に考えている事がよく判る。

僕は最初、ファルシア王女様の加護の事を聞き、それで苦しまれている事で、その様な加護を与えた神様に対して少し嫌悪感を持っていたけど、こうして対峙して話してみると、神様にも何か事情があったのだろうと思えけど、どうしてこうなったのか聞く必要がありそうだ。


「相談の内容は判りました。では何故そうなったのか御教え下さいますか?」

「ええ、当然ですね」


フォルセ様が一瞬、俯くエリオン様を見つめてから僕に向き直り、語り始めてくれた。


「そもそも、ファルシア王女様には、私が生まれた時に加護を与えておりましたの。王妃に愛され、国に愛され、生まれた彼女に皆が願ったのです。心優しき姫になる事を。その願いが私のもとに届き、加護を授けたのです。それほど彼女は皆に愛されておりました」


それは良い事だと思う。特に問題は無いだろう。


「そして、ファルシア王女様の4才の誕生日となって、私は加護を授けた彼女を観察するために誕生会に訪れたの」

「え? フォルセ様が直々に、ですか? 神様が降臨されて大変な騒ぎになったのではないです?」

「あぁ、それは大丈夫です。私達は、特定の人間以外にその姿を見せる事はないですから」


つまり、見えないだけで意外と神様って、身近に居たりするってことだよね?

僕は気になって、自分の周りを見回してしまった。


「大丈夫ですよ。今、ここには私とエリオンしかいないから。それにレンティエンス様なら大抵の神を見る事はできますから、もしお会いになったら挨拶していただけると嬉しいですね」


ん~、それはそれで緊張するなぁあ。たぶん神様なら見れば雰囲気で判ると思うんだけどなぁ? 


「話を戻しますが、その誕生会に私はエリオンを連れていっておりました。エリオンもこの通り、どちらかと言いますと内気な性格で、あまり人の世界と関わる事が少ない上位神なのです。と、言ってもずっと引き籠っている訳にも行けませんので、私がファルシア王女様の観察に無理やり、付き合わせたのです」


神様でも性格が異なる様だ。確かに見た感じ内気な感じはするけど、このファルシア王女の件でさらに内向的になった感じに見える。


「そして、偶然にも、ファルシア王女様とエリオンが遭遇してしまったのです」


「あれ? でも、普通の人では神様を見る事が出来ないのでは?」

「それが、私の加護を受けていた事と、元々潜在的に神に愛されやすい資質があったのでしょう。ファルシア王女様は、エリオンをちゃんと認識されたのです」


ファルシア王女様も結構凄い資質を持っておられるということだ。僕と近い性質なのかな?


「それで、お二人は会われてどうされたのですか?」

「直ぐに友達になったようです。ファルシア王女様もエリオンを神とは思っていなかったようですし、エリオンも自分が神だと名乗らなかったようなので」


フォルセ様がエリオン様を見ている。フォルセ様にとってエリオン様は大切な方なのかもしれないな。見る目がとても優しいし、母親が子供を見るような目だもの。


「楽しかったの。内気な私に、ゆっくりと、とても優しく接してくれた初めての人だったの。だから嬉しかった。彼女と話すのがとても楽しかった。だから・・・別れるのが悲しくて、私との繋がりを持って欲しくて・・・つい加護を与えてしまった・・・」


突然、エリオン様が顔を上げ、話され出したと思ったら、また俯いてしまった。


「そう、ですか・・・」

「レンティエンス様、私、フォルセと、エリオンの加護はあまり相性が良くないとはいいませんが、こと、王侯貴族の社会では、その二つの加護を授かるのは、地獄の仕打ちになるはずです」


そう、貴族社会、これは見た目の華やかさに比べて、その裏では、金が動き、血が流れ、策略と陰謀、誹謗中傷が日常で飛び交う世界。

顔の見てくれとは、大きく異なるその胸の内を、ファルシア王女様はその人を愛そうとする純粋な心で受け止めなくてはならないのだ。

その悪意を止めたくても加護の力で見続け、感じ続けることになる。


「その加護の力は、制御できないのですか?」

「それは可能です。レンティエンス様のように心身を鍛えれば可能ですが、彼女の場合はその鍛える為の指導者に近づく事も拒否してしまいますので・・ただ、システィーヌ様が時折指導されているようなので、以前に比べれば制御できるはずなのでしょうが、自信を完全に無くされておりますので、簡単にはその心を癒す事は出来ないのです」


そうか、母様が鍛えていると言うのはそう言う事の為でもあったのか。

やっぱり、心身を鍛えるのは必要だろう。だけどそれだけじゃ駄目なのかも・・・


「ん、事情は分かりました。ファルシア王女様の事、僕に任せていただけますか?」

「よろしいのですか? 私共は元々レンティエンス様にお願いしたく思ってまいりましたので」

「では、ファルシア王女の事は自信無いですけど、母様からもお願いされていますので、頑張ってみます」

「よろしくお願いいたします。なにぶん、一度与えた加護を取り上げる事など出来ませんし、神は基本、現世界には不干渉の立場をくずせませんので」


僕は、分かっていると首を大きく頷いてみせた。


「レンティエンス様、本当にファルシアちゃん、元気を取り戻せる事ができるの?」


エリオン様が、僕をじっと真剣な顔で見つめてくる。

僕は、席を立ち、エリオン様の座る横へと移動すると、片膝を付き、彼女の手を取りその甲へと軽く口付けした。


「!?」

「エリオン様、僕にお任せ下さい。必ず王女に笑顔になってもらいますので、あなた様もどおうか元気をお出しください。ファルシア王女様を守護する神様が、沈んでいますと影響が出るのではないのですか?」


僕の言葉にエリオン様が大きく瞳を開いた。


「そう、そうかも。私が沈んでいたらファルシアちゃんも悲しい気持ちになるのかも・・私も頑張る! もう俯かない! だからレンティエンス様! ファルシアちゃんをお願いします!」


僕の手を握り返すエリオン様。


「うん、やっぱり俯かない方が可愛いですね」

「え? あ、はい・・ありがとうございます・・」

「エリオン、良かったですね。私も当事者として少し安心しました。私の方からもどうかよろしくお願いします」


フォルセ様も僕に向かってお辞儀をされてくる。


さぁ、大変だ。だけど母様だけじゃなく、神様にも相談されちゃったから、頑張るしかないよな!

僕は、心の中で決意するのだった。


でも、神様からの相談ってこれからも続くのか? 

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