メイド達の狂騒 5
浴場の入り口から右側の壁側に設けられた、洗い場に向かった僕は、洗い場の前に立つと、全身が映る鏡が壁に設置されていたので何気なしに自分の姿を見る事になった。
ガク!
最後の管理神様の言葉が思い出される。たしか両方って言ってたな。
そう、こういうことだったのか・・・・
僕は一瞬目眩を越し、膝と両手を石床につけて四つん這いになっていた。
「レンティエンス様! 大丈夫ですか?!」
レコナが駆け寄ってくれる。また心配掛けてしまっただろうか? でも、仕方ないじゃないか。
まさか、自分がこんな姿だったなんて! 僕は一度大きく深呼吸をすると、勇気を振り絞って立ち上がり、再度鏡の前に立つ。
「ウッ、ウウウ、やっぱり変わらないか」
独り言を呟きながら僕は、鏡に映る自分の姿をじっくりと見ることにした。
結論から言えば、美少女だ。
自分が覚醒する前の記憶がまだ混乱しているところはあるが、確かに自分はよく、可愛らしいと周囲から言われていた事を思い出す。
「それにしても・・・」
そう、髪の色は父様似で赤い髪なのだが、それ以外が母様を幼くしてそれに輪を掛けて美しくなった感じ? それなのに、作られた人形の様とか、この世と思えないとか云う形容詞ではなく、ごく自然に嫌味の無い可愛いらしさの、まさしく天使のような子だ。
自分で言ってて恥ずかしくなって来た。なんか自分に惚れてしまいそうだ。
だけど、あそこは・・・・
「男の子だよね。ちゃんと男の子が付いてましたよね?」
「レンティエンス様? どうかされました?」
レコナさんが心配顔で僕に近づいてくる。
「ねえ、レコナさん。僕ってみんなにどう見られてるんだろうか? どう見ても、男の子の顔じゃ無いよね?」
つい、僕は心配になった事をレコナさんに聞いてみてしまった。
「だ、誰ですか、そんな事を言う人は・・・」
レコナさんの様子がおかしい。
怒っている? 下を向いて顔がはっきり見えないけど、肩を奮わせ泣いているようにも見える。
「レンティエンス様は、とても頭が良くて、魔法も、剣技も、体術も、奥様が絶賛するほど素晴らしくて、そして私達メイドや使用人にも優しく接してくださいます。とても素晴らしい殿方です。女の子の様な顔がどうしたって言うんですか。とても可愛らしくて天使のようで素晴らしいじゃないですか。私は大好きです! この家の者全員がレンティエンス様の事がとても好きで大事なんです。そんなふざけた事を言う人がいるなら、私達が誰であろうと生かしておきません!」
レコナさんの言葉は真剣だった。僕は、この姿でも堂々としてれば良いんだと思えた。
ただ、レコナさんがこれだけ言うのだから、少なからずこの姿に違和感を持つ人もいるのだろう事は解った。特に男性はそう思う者もいるんだろうな。
とにかく自分がしっかりしていれば問題ないか。
それでも、こうして僕を良く思ってくれるのは嬉しいな。
「ありがとうね、レコナさん」
無意識だったと思う。僕はそう言ってレコナさんを抱きしめていた。
「こんなふうに僕はみんなに思われているんだね。とても心強いよ。でも、人殺しは駄目だよ」
抱きしめて動かなくなったレコナさん・・・レコナさん?
「あれ? 本当に全然動かないぞ? レコナさん!」
僕はレコナさんを揺さぶる。
「エへへ、へ、へ、へ」
うわあ~! どうしよう!? レコナさん、変な笑いかたしながら鼻血出して気絶してしまってるよ!
「誰か! 誰かいませんか! レコナさんが!」
「どうかなさいましたか!」
僕が慌てて人を呼ぶとメイドのクミさんが駆けつけてくれた。
「レコナさんが倒れたんだ! 早く、医務室へ・・」
バタン!
「え?」
目の前でクミさんが倒れてしまった!
「え? え? ク、クミさん?!」
クミさんまで鼻血出して倒れてしまったよ、どうして? それから数人のメイドさんが駆けつけてくれたが、皆同じように倒れてしまって大変な騒ぎになってしまった。母様が来てくれて収まったけど、
「そんな裸でウロウロするから、免疫の無い子が耐えられるわけないでしょ? あぁそんな泣きそうな顔して助けを求めないの!」
と、母様にものすごく怒られてしまいました。
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