4話目
僕は教室の前で緊張を和らげるために深呼吸していた。
教室に入った途端に数名の同級生と目があった。
「ほら、あの子」と声が聞こえてくる。
そして声を小さくして何か話し始めた。
「よしなよ、病気が移るよ」とそんな声が聞こえてきた。
僕は気付かない振りをして目を合わせないようにしながら自分にあてがわれている机についた。
僕をあからさまに避けていく子までいた。
先生が教室に入ってくる。
「おはよう」と数名の同級生たちに挨拶を交わして簡単な会話をしていた。
「俊介くん、具合はどうだ?」と言いながら僕の方に先生が近づいてきた。
「ありがとうございます。変わりはないです」僕はそう返した。
よそよそしい感じで先生は
「そうか」とだけ言った。
先生は若干疲れているみたいだった。
先生もみんなの未来を任されている重圧の中で、自分の生活を守っているんだ、と考えに至るまでにはもっとずっと後になってからだった。
この時の僕には同級生と同じでない対応をただ寂しいと思った。
授業が始まり、みんなそれぞれの机に着いた。
家で勉強しているので、授業の内容は理解できた。
内容は若干、僕の方が進んでいた。
2時間目の授業が終わり休み時間になった。
名前すら知らない同級生たちがそれぞれ仲良しの席ではしゃぐ中、僕は一人席に座っていた。
同級生たちにとって僕は空気のようなものだった。
同級生たちと僕の間にはお互いに越えて行き来することのない壁があり、
そんな壁があることを否応なく僕に自覚させるから登校日は嫌いだった。
その壁は、僕の存在する世界と、同級生たちの存在している世界を明確に分けていた。僕にはまだその壁を壊す勇気はなかった。
ガヤガヤ騒がしい別世界の刺激を避けるため僕はミュージックプレーヤーを取り出して、お気に入りの曲をかけた。
「学校、どうだった?」母親が聞いてくる。
「まあまあ」と返して僕は部屋に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます