1-10:小話:唐揚げレモン。
〇望〇
唐揚げは中華料理にも通ずる。
これは僕の持論である。同意は求めていない。
晩御飯の当番なので、お風呂に入っている美怜を待つ間に作ってしまうことにする。
彼女は晩御飯前にお風呂に入ることが癖づいているというか、家に帰ったら先ず化粧(変装)を落とすという習慣が染みついている。
「さてさて」
先ず、調味料を用意する。基本的に中華では、調味料を混ぜ合わせて起きタレを先に作るのが基本だ。
ショウガ 1欠片をすりおろし。チューブでも代用可能。
ニンニク 1欠片をすりおろし。チューブでも代用可能。
オイスターソース、小さじ一杯。
紹興酒、大さじ一杯。
醤油、大さじ一杯。
砂糖、小さじ一杯。
これらを上から順に入れ、混ぜ合わせる。
「卵と……」
割り、軽く10回ほど混ぜる。
ここで混ぜすぎるのは良くない。
「次に鶏肉だ……!」
鶏肉もも肉を二枚洗い、切る。
ここで余計な筋を切ってあげると良い。
それを終えると先ほど作った調味料と鶏肉を混ぜ、十分間放置だ。
その間にコーンスターチと強力粉を混ぜ合わせたミックス粉を作り、鍋にたっぷりの油を入れてコンロに置いておく。
「これがカリカリになるコツだ!」
十分がたった鶏肉に溶き卵を吸わせるように揉むこむ。
終わったらミックス粉を混ぜ合わせ、粉気が無くなるまでよく混ぜる。
油が百六十度まで熱せられたら、鶏肉を入れる。
「ここで重要なのは七割火を通せばいい……!」
鶏肉をバットに引き上げて、余熱で中に火を通す。
その間に油を加熱し百八十度まで上げる。
「二度揚げ!」
そう二度揚げだ。
鶏肉を再び、油の中に投下し、更に強火で熱する。
これによりさっくり感が増すのだ!
「今だ!」
表面が唐揚げ色に上がったら引き上げて油をきって完成だ。
うまいぞー!
「さて付け合わせに、簡単なスープを鶏がらスープの素と卵で作って……っと」
更に作っておいた春雨とハムと胡瓜のサラダを冷蔵庫から取り出す。
これは簡単だ。
先ず、調味料は以下の通りのモノを混ぜ合わせて作っておく。
ごま油、大さじ一杯。
醤油、大さじ一杯。
黒酢、大さじ一杯。
砂糖、小さじ一杯。
湯がいた春雨を冷水にさらし、水分を飛ばす。
切ったハムと胡瓜を春雨と調味料を混ぜ合わせる。
最後に小皿に分けてすりごまをちらして、冷蔵庫に入れておけば完成だ。
後は美怜がきたら、ご飯をよそってやるだけで良い。
委員長の件で少し負担を掛けているから、老若男女問わず好まれる唐揚げがベストだというチョイスだ。
完璧だ。
「お先ー、あ、おいしそうだー……望が料理出来るって話、ホントだったんだね?」
ドライヤーで髪を乾かし終えた美怜が居間に入ってくる。
「僕に出来ないことはあまりないからね」
「……羨ましい限りだよ、それは」
美怜の眼を見やれば、青紫色。声色も落ち着いている。
学校での出来事も割と処理で来ている感じがする。
帰り道は酷かった。
誰もいないと判るや、赤色の上目づかいで僕を睨み、委員長何てムリだよムリ……と、泣き出しそうにしがみつかれながら歩いていた。
「私も料理するけど、和風か洋風だから……中華はあんまりやらないから新鮮、唐揚げも中華風にしてあるんでしょ?」
「鋭いね」
「だって、ニンニクやオイスターの香りがするもん」
鼻をヒクヒクさせる美怜はずばり言い当てる。
洞察力や違和感を感じる能力は美怜は高いのではないかと思う。
もしかしたら長年、地味にするための努力をしてきた賜物の可能性がある。
「そしたら食べないうちに食べたまえ」
「はーい」
座り、そして卓上のあるモノに手を掛ける美怜を見た。
〇美怜〇
平沼の家では、唐揚げと言えばレモン。
後で思えば、自分の小皿にとって自分の分だけ取れば良かったのだと理解できたのだが、この時はまだそれが理解できていなかった。
結論、大皿のから揚げにレモン果汁をぶちまけてしまったのだ。
中華風でカリカリ感を楽しめるのにだ。
なお、この後は口喧嘩――いや、違うかな、窘める望に一方的に私が反抗しただけだ。
異常だと理解できていなかった私は、当然だと言わんばかりに主張していたと思う。
唯莉さんと二人で生活していたために起きたことだと理解した望は、布団で一緒に寝ることもそういうことかと頭を抱えていたのは印象的だった。
後で見れば、私が悪いことだ。
でも、その時は委員長のことが再燃し、望のベットで威嚇し続ける羽目になった。
――後で思い返せば、穴に入りたい様な出来事だった。ごめんなさい。
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