第19話 『死に戻り』を検証してきました!!
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僕は今日もいつも通りの日常を過ごしていた。
朝からトレーニングをし、冒険者稼業を営んだ後は、家に帰って眠る。
そんな3年間続けてきた、当たり前の日常だ。
夜。
また僕の名前をトーマスと呼び間違えた祖母に舌打ちを打ちながら、僕はベッドへと潜る。
「ふぅ~……、今日も疲れたぁ……」
僕は枕に顔を埋めながら、襲い掛かる睡魔に親近感すら覚えていた。
三年間。
この『毎日』を欠かした日は、一度もない。
何だかゴブリンキングを倒してからというもの、ユウキに頻繁にお出かけの誘いを受けるのだが、
内心は飛び上がるくらいに嬉しいものの、丁重に断らせていただいている。
今は心に隙を与えるわけにはいかないのだ。
ただ只管に思考しながらこのルーティンをこなすことに全力を費やさなければ、到底『約束』を叶えることなどできないと思っていたからである。
「……でも、最初は上手く行かなかったんだよなぁ」
呟きながら、僕はここに至るまでの三年間を振り返っていた。
―――
ゴブリンキングを倒してからというもの、僕は自分の一日の行動を徹底的に管理した。
そしてその時から、『死ぬ気』の努力の日々が始まったのだ。
10kmは超えるランニングと100回の筋トレをメニューごとにこなすという精神強化+体力強化訓練。
慣れない内はこれだけでかなり体力を持っていかれた。
気絶し、何度も三途の川を見たことを覚えている。
そのトレーニングを終えたら、ソロで探索へと出掛ける。
新たにパーティを組むことも一瞬は考えたが、『死ぬ事』を前提として突き進むとするなら迷惑をかけると思って、やめた。
ゴブリンキングを倒したくらいの僕では、もちろんソロでの探索など、そう上手くいくはずもなかった。
最初は小型の魔獣に囲まれ頓死したり、
単純に実力的に叶わぬ相手に踏みつぶされたり喰われたりして何度も死んだ。
その度にゲロを吐いた。
時には血や内臓を吐いた。
100回を超えたあたりから、数えるのをやめた。
ただ、一つ気になることがあるとすれば、死ぬたびに蘇生するポイントが短くなっているような気がしていることだ。
例えば今日、僕が、今、この瞬間に死んだとして、
蘇生するポイントが昨日の朝10時だとすると、
同じように二回目ここで同じ時間に死んだとしても、蘇生ポイントはおそらく二時間ほど遅れ、12時くらいになっているだろう。
スキルシートの説明には、『蘇生ポイントを指定することはできない』とされていたが。
一度死に、蘇生ポイントが特定の日時に飛ばされた後、
もう一度死ねば、確実にその日時よりも遅れて蘇生する仕様となっているのかもしれない。
つまりは、蘇生ポイントは、死ぬたびに遅い時間にズレていくというわけである。
「……まぁ、別に関係ないんだけど」
そりゃあ死んだ後に、その死ぬ直前に蘇生される、なんてなったら大惨事だが、
そうでなければ、蘇生時間が変動しようがしまいが、
遅れようが遅れまいが、僕には関係ない。
まぁ、そんな話はともかく。
僕は死ぬたびに試行錯誤しながら、わざと危険度の高い迷宮やモンスター達を相手にしていった。
死んで、考えて、死んで、戦って、死んで。
そのたびにゲロや血反吐を吐いて後悔し、修正し、死亡率は下がっていった。
そして魔獣共を殺すたびに、確実に僕の実力は上がっていった。
周囲からすれば、つい数日前は大したことなかったくせに、
高難易度のクエストに挑戦しては超スピードでクリアしていく謎の人物に映ったであろう。
もっとも、急成長を遂げる僕に対して付けられた異名が、『
流星の如く、ここ三年で現れた超新星。
それが僕ということになっている。
これは僕が新しく開発した走法スキル『
このスキルを使いこなすのにも、かなりの時間と修練を必要とした。
魔力を一点に集め、解放し、超スピードで駆けるこのスキルは、
制御の問題や、そもそも使うたびに足の指が骨折する問題にブチ当たっていた。
僕は失敗するたびに魔獣に喰われ、殺され、そうやって熟練度を上げていった。
今ではもう、僕よりも速い冒険者は、この街にはいない。
―――
僕は不意にベッドから起き上がり、机の上の
机の中の引き出しから針を取り出し、それを親指の腹に刺す。
そうやって流れ出る血に含まれている『魂の情報』を測定機に読み込ませた。
ガガガガ! と動きだし、一枚の紙を印刷した。
===================
名前:カルマ・ジレンマ
職業:中級冒険者
魔力値:A
魔法:【
ユニークスキル:『危機察知』、『死に戻り』、『
所得スキル:『家事全般B』、『剣術B+』
呪宝具:『
===================
これが今の僕の
そして、
「うん……あと、少しだ……!」
これで剣術のスキルさえランクが上がれば、彼女と肩を並べることができる。
僕の夢は、もう後少しのところまで来ているのである。
興奮しながら、自分のステイタスの表記された紙を抱いて、
僕は再びベッドの中へと潜り込んでいった。
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