勇者パーティから追放された僕。目覚めた『死に戻り』のスキルで【死の未来が確定しているサブヒロイン(幼馴染)】を救うために、死ぬほど努力してみます!!
第17話 高鳴る胸の鼓動が止まらないから(ユウキ視点)
第17話 高鳴る胸の鼓動が止まらないから(ユウキ視点)
彼を地面の上で寝かせておくわけにもいかず、
かと言って、彼を運ぶのは怪我を悪化させるかとも思い、
私は昔のように彼の頭を膝の上に乗せて、彼の目覚めを待った。
昔は私が遊びに連れまわすと、体力の少ない彼は、すぐにバテてしまって。
こうやって膝枕することが普通だった。
顔をグリグリしておちょくって、彼によく怒られてたっけ。
「……」
でも、なんだろう。
膝枕なんて彼の「お姉ちゃん的役割」と思って何度もやってきたはずなのに。
久々にする膝枕は、昔のものとは明らかに異なっていた。
なんだか妙に胸のあたりがムズムズする。
チクチクとする彼の髪の毛が当たる瞬間。
彼が「うぅ」と寝言を言う瞬間。
なんでもないような、いつもの彼を前にしているはずなのに、妙にドキドキした。
「……って、違う違う! 私は、カルマくんのお姉さんなんだから!」
私は赤くなる顔を押さえながら思わず叫んだ。
そうだ。
昔から、私は彼の『お姉さん』だった。
彼よりも背が高く、剣も魔法も強かった私にとって、カルマくんは弟的存在だったのだ。
可愛らしいこの弟を、私が守る。
何があっても、誰が何を言おうとも。
たとえ彼自身が私を嫌おうとも、私だけは彼の味方になって、支え見守って見せる。
ずっとそう思ってきたから、きっと、これは違うのだ。
この胸の高鳴りは……、そうだ。母性だ。
彼の寝顔を見たことにより刺激された私の母性なのだ。
「お姉さんからお母さんにジョブチェンジかな?」なんて小言を言いながら、私は彼の頬にツンツンと人差し指を当てた。
―――
数分後、鼻血も止まったちょうどその時、
カルマくんは「んん」と呟きながら、ゆっくりと瞼を開けた。
「か、カルマくん? 大丈夫?」
言葉が思わず上擦ってしまう。
結局、数分間ずっと(原因は分からなかったけれど)緊張しっぱなしだったから、口元もカラカラだったからであろう。
私は不振に思われないように息を整えつつ、カルマくんの返答を待つ。
すると、彼はまだ寝ぼけているのか私に手を差し出してきた。
訳も分からず、私は彼の手に触れる。
すると、強くギュッと、彼に手を握られてしまった。
「え、か、カルマくん?」
ドクンドクンと跳ねる心臓の音が聞こえないか心配になるほどに、
私は指先から伝わる彼の温度に狼狽させられてしまっていた。
緊張を悟られまいと顔を背けようとするも、
彼のかつてないほどの真っ直ぐで情熱的な視線から逃れることなど、できるはずもなかった。
彼はしっかりと私を見据えて。
さらに遠くの何かを見据えるように、
確かな意志と熱意と、覚悟を持って、
一つ一つ丁寧に、言葉を紡いだ。
「……僕は、強く、なる」
「強く、なるよ。必ず、君に追いついてみせるから――」
「だから、僕が君に追いついた、その時は、僕と――」
彼の言葉は、ここで止まった。
再び閉じられる眼。力の抜けていく手。
でも、私はその手を離さなかった。
いや……、離せなかったのだ。
「カルマくん……」
言葉に出すと、自然と顔が綻んでしまう。
彼が言えなかった言葉の続きを、私は知っている。
覚えているのは自分だけだと思っていた。
「……カルマ、くん」
夢みたいだ。
ずっとずっと大切に、心の奥に仕舞っていた約束を、彼も覚えていてくれて。
そのために、こんなにボロボロになるまで戦ってくれている。
その事実が、恥ずかしくも、こんなにも、嬉しい。
……うん。
だから、もう、自分の心を誤魔化すのは、やめにしよう。
彼は『私の可愛らしい弟』なんかじゃない。
私は、『可愛らしい弟のお姉さん』なんかじゃない。
隠していた想いに。
偽り続けてきた自分の想いに、向き合う時が来たのだ。
ずっとずっと、「どうして」の理由を問い続けてきたけれど、今なら分かる。
高鳴るこの胸の鼓動が、止まらないから――、
私は、彼のことが好きなのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます