第7話 『死に戻り』していたようです!?



 指に見たこともない骸骨の頭が乗っかってるという異常事態に気付いた僕は、有耶無耶な説明をしながら彼女を家の前まで届けた。


 ユウキは僕の説明を聞くと、非常に微妙な反応を示した。


「え、えっと、じゃあ、その……あんまり変な趣味には走らないでくれると嬉しいな。幼馴染としては」


「う、うん! 大丈夫!! なんかちょっとした気の迷いだったんだよ。あはははははっ!」


「ほんと、骸骨趣味なんてカルマくんらしくないから! それに、リングが欲しいなら、その……私がお揃いの買ってあげるし」


「……え?」


「な、なんでもない!! じゃあね!!」


 何故か再び顔を真っ赤にしたユウキは、バタァン! と勢いよくドアを閉めた。

 僕はちょっと唖然としたけれど、


「……帰るか」


 いつまでも女の子の家の前に立っているわけにもいかないので、帰路を歩いた。

 まぁ、僕の家は正面にあるから、帰路っていうほどの距離もないんだけど。


 それにしてもドクロって男の子としてはカッコイイと思うんだけどなぁ……。

 女子からは嫌われるのかな。

 分からんなぁ……。

 まぁ、他の女の子がどう思おうがどうでもいいけど、ユウキが嫌がるならやめておこう。


「よし、外しちゃおう」


 そう思い、リングを取ろうと手で引っ張ってみるが……、


「……ん?」


 何度も引っ張ってみるが……、


「んん!?」


 何なら噛みついて無理やりにでも外そうとするが……、


「取れ、ない!?」


 髑髏のリングは、どうやら呪いの装備の類だったみたいです……。



 ―――



 僕は家に帰ると、さっそく、ある機械の前にたった。


「……ごくり」


 能力値アビリティ測定機メジャー

 文庫本くらいの薄型の四角い機械で、能力値を調べることができる装置である。

 冒険者の家には割と普通に置いてあるが、僕は分け前が少なかったので、ようやくこの前購入したのだ。五万ゴールドした。結構な買い物である。


「よし、やるか」


 とはいえ、初めて測定するというわけではない。

 ギルド会館に共用のものがあるので、何度か経験したことはあるのだ。

 まぁ、共用測定機は月に一度という制限があるし、やるときも並ぶからこうやって自分用のものを購入するのである。


 僕は家に帰ったら使おうと思っていた新品のそれを、スイッチを押して起動させる。


「き、緊張するなぁ」


 なんせ、死んだのに、今は確かな現実に生きているという不可思議な現象。

 そして、外そうとしても外れない、呪われた指輪。

 僕の中で何かが起こっているのは、もはや明白であろう。


 手筈は分かっているので、僕は机の中から、細長い箱を取り出した。

 さらにその中から金属の針を取り出すと、


「……えいっ」


 と、自分の親指の腹に刺した。

 ちょっぴり出てきた血が付着した針を、測定機にある穴の中にあてがった。

 すると血は穴の中へと入っていき、機械はガガガガという音を立てながら駆動した。


 やがて再び大層な音を鳴らしながら、装置から一枚の紙が排出される。

 スキルシートと呼ばれる紙だ。

 測定した者の能力値を可視化されたものである。


 僕はそれを手に取り、思わず目を閉じていた。


「……さて。鬼が出るか蛇が出るか……」


 僕は緊張の面持ちで、ゆっくりと閉じていた瞼を開けた。



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 名前:カルマ・ジレンマ

 職業:中級冒険者

 魔力値:C+

 魔法:炎球

 所持スキル:ユニークスキル『危機察知』、ユニークスキル『死に戻り』

 呪宝具:『髑髏輪廻ドクロリンネ


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「んんん?」


 明らかに見慣れない文字がある。『死に戻り』? 『髑髏輪廻』?

 訳が分からず、頭の中に?マークを浮かべていると、


 ――ガガガガ!!


「わわわわ!?」


 再び機械が動き出した。

 そこからもう一枚、紙が印刷されて出てくる。


 スキルシートが二枚排出されるなんて、聞いたことないけど……。

 僕は嫌な予感がしながらも、恐る恐るそれに目を通した。



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 ※これは特殊スキルシートである。


 呪宝具:『髑髏輪廻ドクロリンネ

 概要……この宝具の装備者に『死に戻り』のスキルを付与する。装備を取り外すこと、また、破壊することは不可能である。


 ユニークスキル:『死に戻り』

 概要……使用者が絶命した際、ある一定期間時間を巻き戻し、対象を蘇生させる。蘇生ポイントを指定することはできない。


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 ……ふむふむ。

 僕は何度も何度も出てきたシートを読み返して、

 にわかには信じがたいが、一つの結論を導き出した。



 どうやら僕は、『死に戻り』しているようである、という結論である。


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