勇者パーティから追放された僕。目覚めた『死に戻り』のスキルで【死の未来が確定しているサブヒロイン(幼馴染)】を救うために、死ぬほど努力してみます!!
第2話 錯乱状態の僕はダンジョンの奥深くまで潜っていたようです。
第2話 錯乱状態の僕はダンジョンの奥深くまで潜っていたようです。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
悔しさと惨めさが頭の奥でベタっと張り付いた感覚を振り払うように、僕は涙を流しながらわき目もふらずに走った。
涙や鼻水でぐちゃぐちゃになる顔面を見て、街の皆は唖然としていた。
それでも、僕は他を気に掛けているような余裕はなかった。
「ああああああああああああっ!!!」
僕は考えることもなく、装備も所持品も心もとないまま、街を出た。
ギルドのクエストも受注せずに街の外に出たのは、これが初めてだった。
―――
「ここは……」
……どこだろうか。
周囲を見渡すと、魔獣たちの死骸がそこかしこに転がっていた。
辺りは暗く、壁に取り付けられた松明の炎だけがボゥボゥと青く燃えている。
「ああ、そうか」
どうやら僕は、錯乱したまま、迷宮の奥深くまで進んでいたらしい。
まぁ、僕だって元勇者パーティの一員だった。
初級魔法は使えるし、中級冒険者くらいの実力はある。
あのメンバーに囲まれていたから雑魚扱いだったが、そこそこは戦えるのだ。
……とはいえ。
「ボロボロ、だな」
装備も回復用のポーションも持参せずに剣を振り回していたせいか、体中には生々しい怪我の痕が残っていた。
胸部付近なんかは、ブラックウルフに引っ掛かれたらしい爪痕から、血が滲み出している。
「……帰らないと」
ここら辺はD級魔獣――初級冒険者が対応できる魔獣しか出てこないとはいえ、
このままここにいたら、命を失うのは明白だ。
長居していたって仕方がない。
「……帰ろう」
……しかし。
思い、立ち上がったときに思い出したのは、去り際に言っていたアクセルの一言だった。
『お前じゃ、あの女には釣り合わねえよ』
「――――ッ!!」
僕はギリと奥歯を噛み、立ち止まった。
帰ろうとしていた方向と、逆のほうを向いた。
そこにはビッシリと紋様が描かれた、巨大な門があった。
恐らく、ボス部屋。
このくらいのレベルのダンジョンなら、
いるのはゴブリンキングやジェネラルウルフだろう。
大型で、危険度としてはC級に位置する魔獣。
魔法だって使ってくるし、配下を使役するような魔獣だ。
普通に考えれば、僕程度が、単独で討伐できる相手ではない。
でも。
ここで諦めたくないと、そう思った。
このまま逃げ帰ってしまったら。
もう二度と、彼女に追いつけないような気がしたのだ。
彼女は優秀だ。パーティの実力も申し分ないから、彼等はこれから王都へと招集されるかもしれない。
だとしたら、そのときまでに強くなっていなくちゃ、僕はもう、彼女の顔も見ることができないのだ。
「いやだ……! そんなのはっ!」
僕は嘆くように言いながら、歩を進めた。
「僕を、置いていかないでくれ!」
何ともみっともないことを言いながら、僕は巨大な門を開いた。
奥で涎をダラダラと垂らした、ゴブリンたちの王の姿が目に飛び込んできた。
怖い。
けれど、何もしないことは、彼女を失うことは。
「もっと……怖いんだよ!!」
僕は震えあがる体を無理やり鞭打って、思いっきり地面を蹴って飛び掛かった。
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