勇者パーティから追放された僕。目覚めた『死に戻り』のスキルで【死の未来が確定しているサブヒロイン(幼馴染)】を救うために、死ぬほど努力してみます!!
第1話 どうやら僕は勇者パーティを追放されたようです……
勇者パーティから追放された僕。目覚めた『死に戻り』のスキルで【死の未来が確定しているサブヒロイン(幼馴染)】を救うために、死ぬほど努力してみます!!
雷撃
第1話 どうやら僕は勇者パーティを追放されたようです……
世の中には、主役と脇役が存在する。
すべてを手に入れる者がいれば、役割に徹して生きるしかない者もいるだろう。
そして、才能や力ってのは、それを見極めるのに明確な指標となる。
そういう意味では、僕は間違いなく『脇役』だった。
……でも、それでも。
過酷な運命の全てを甘んじて受け入れられるほど、僕は利口ではないから。
滴り落ちる血。繋がった手のひらから失われていく、愛する者の温度。
離してなるものか。
諦めてなるものか。
「僕が、君を――――っ」
次の瞬間、『僕』の頭はトマトが潰されるみたいにはじけ飛んだ。
こうして。
僕は――、カルマ・ジレンマは、これで何度目かも分からぬ死を迎えたのである。
―――
「悪いけどカルマ、君はクビだ」
「……へあっ?」
パーティで迷宮を探索した後。
リーダーであり、勇者候補とも言われているアクセルにいきなりこんなことを言われ、僕は思わず変な声を出してしまった。
「理由なら、分かってんだろ?」
「……」
そう凄まれると、僕は押し黙るしかない。
アクセルの言いたいことも、分かるのだ。
僕が所属しているパーティは今、急成長を遂げている。
おそらく、これからさらに危険な任務も受けていくのだろう。
前衛に剣聖であるアクセルと、ユウキという天才がいて。
他のメンツも、若手にして上級の冒険者で固められている。
対して僕は荷物持ちや雑用、索敵係をするばかり。
正直、客観的に見ても、僕はパーティのお荷物だ。
でも、僕には、どうしてもこのパーティを抜けたくない理由があるのだ。
個人的な理由だから、とても人には話せたものじゃないんだけど……。
と、僕がウジウジしていると、そこに換金を終えた『彼女』が戻ってきた。
「なんの話をしてたの?」
リンとした鈴の音のような声に、僕は思わず振り返った。
軽い調子で話しかけてきただけのはずなのに、
空気の色がパァっと明るくなるようだった。
彼女の名前はユウキ・アレンドール。
僕の幼馴染で、天才の剣聖にして。
僕の……想い人だ。
「アクセル! あなたまたカルマくんを虐めてたわけじゃないでしょうね!」
「……別に。してたのは、コイツが今日、無事にこのパーティを卒業するって話さ」
「もう! またそんな勝手なこと言って!! 気にしなくていいからね。馬鹿アクセルの言うことなんか。だいたい、カルマくんが抜けたら洗濯とかお料理とか、索敵も誰がやるっていうのよ!!」
「うるせぇなぁ。雑用も索敵も、別に代わりを雇えばいいだろ? 実力もあるやつをな」
ニヤリと笑うアクセルに、僕は腹の底から怒りが湧いた。
けれど、反論できなかった。
俯き、何も言えずに固まっている僕の元に、彼は近づき――、
『お前じゃ、あの女には釣り合わねぇよ』
ボソッと、そんなことを呟いた。
「――――ッ!!」
ハッとして顔を上げると、醜悪な笑みを浮かべたアクセルがいた。
そしてその薬指には、銀のリングがはめられていた。
そして、奥のユウキにも、同じものがはめられていたのだ。
薬指のリング交換は、この街では恋仲を証明するものであった。
「そういうわけだカルマ。今まで助かった。これを資金の足しにでもして、次の職でも探してくれ」
そう言って今日の分の報酬を渡してくるアクセル。
そういえば、今日は珍しく結成当初の三人で比較的安全な依頼を受けていたのだった。
たまにはこんな日もあるのだろうかと思っていたが、そうか。
最初から、決めていたのか。
頭の中の血管が全部ブチギレるくらいに腹が立った。
でも、言い返せなかった。
僕には、実力がないから。
「――わかった」
「カルマくん!?」
二人に背を向き、走り出した。
「待って!」
僕なんかより、数段も足の速いユウキが追いつき、すぐに僕の肩に手を振れた。
僕はそれを振りほどいて、
「ごめん、今は顔も見たくない」
そうやって拒絶して、僕は酒場を後にした。
「待ってよ!!」という彼女の叫びだけが、耳の奥で木霊していた。
―――
僕は、走って、走った。
その衝動的な行動を、僕は後から強く後悔することになる。
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