第38話 協力者
「
先輩も俺の考えを悟ったのか、話を続けた。
『頭を下げてるっつーか、床に這いつくばって頭をつけてるからもうありゃ土下座だな』
「土下座って……なんでそんなことになってるんだ?」
『それがよぉ、オレも教室の外から覗いてるだけだから詳しくはわからねえんだが、なんか白髪姫はクラスのヤツに片っ端から何か頼んでるみたいだな』
「何かを頼む……?」
そこまで言われて、俺はひとつの可能性にたどり着く。
なら錆川が周りに頼むことといえば、『痛みを肩代わりすること』しかない。
『
「ああ。“空白”のアルジャーノンはやはり
『オレからしちゃ、白髪姫なんざ恨んで当然だがなぁ。まあそれでだ、白髪姫はどうもその女のことも嗅ぎまわってるようだぜ』
「なに?」
『剣道部に一年A組のヤツがいてなあ、白髪姫に聞かれたんだとよ』
「聞かれた?」
『蜜蝋さんには私以外に頼れる人がいるのか』
「……どういう意味だそれは?」
『さあねえ、とりあえず白髪姫も必死なようだ。どうやら
「なんか楽しそうだな……」
『白髪姫の思い通りにならねえならオレとしちゃ喜ばしいに決まってんだろ? それでだ、
「……」
倉敷先輩が言っているのは“潔白”のバルマーの正体についてだろう。現状、俺はその正体を錆川本人だと推測している。アイツが襲撃者たちのリーダー格なら、蜜蝋さんたちに正体を隠していた理由も説明がつくからだ。
しかしそれを倉敷先輩に伝えてしまって大丈夫だろうか? 倉敷先輩は元から錆川を嫌っている。その上、
「……蜜蝋さんもバルマーの正体については知らないそうだ。また一から調べるしかない」
『そうかい。まあ俺の方でも調べてみるが、あんまりのんびりやってられねえなあこれは。うかうかしてりゃ白髪姫は死んじまうぜ?』
「確かにな。錆川が前以上に積極的に痛みを引き受ければ限界を迎えるのも早まる」
『そういうこった。それじゃまた何かわかったら連絡しな』
通話を終えると、
「おい
「まだ確証がない。中途半端な情報を伝えてあの人に下手なことをされても困るからな。伏せておいた方がいいだろう」
「ですがこれからどうなさるおつもりですの? 錆川さんに直接お聞きするのですか?」
蜜蝋さんはそう言いながらも、どこか俺を牽制するような表情だった。“潔白”のバルマーが錆川であるなら俺はアイツと敵対するかもしれない。そうなれば蜜蝋さんとしても俺に協力するわけにはいかないだろう。
「いや、錆川を問いただすのは俺じゃない」
「え?」
「蜜蝋さんに頼みたいんだ」
「……! 佐久間くん、それって……」
錆川は『蜜蝋さんには自分以外に頼れる人間がいるのか』と聞いて回っていた。つまり錆川は蜜蝋さんの苦痛を今すぐにでも『肩代わり』したいと思っている。それに蜜蝋さんとしても俺が錆川と話をするよりも、自分で直接アイツの真意を確かめる方が納得するだろう。
「錆川が本当に“潔白”のバルマーなのか……確かめてほしい」
どちらにしろ、錆川紗雨の本心を確かめなければ俺たちは前に進まない。
「……わかりました。
「でもよ、蜜蝋さんが単独で錆川さんに接触して大丈夫なのか? もし佐久間の推測が当たってたら、錆川さんには協力者がいるんだろ?」
青田の言う通り、錆川がバルマーだとしても俺を刺した人間が別にいる。仮に蜜蝋さんが錆川を追及すれば、その協力者が蜜蝋さんに襲い掛かるかもしれない。
だが協力者がいるとわかっているなら対処はできる。
「単独で接触しろとは言ってない。青田、お前にも協力してもらうぞ」
「え?」
「もし錆川に協力者がいるなら、その正体がどうあれ錆川の目的に賛同しているはずだ。つまり“潔白”のバルマーが錆川であると明らかになるのはそいつにとっても不都合だ。ならそれを利用して、俺たちでそいつをあぶり出す」
「おい、それってつまり……」
「蜜蝋さんには錆川を呼び出してもらって、その場所に現れるもう一人の人間を俺たちが捕まえるんだ」
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