第二十五話 実力

【実力】


受け付けの人に案内されフィールドの中に入る。

Cフィールドは森のフィールドと確定なのかもしれない。

待機ラインに並んだ俺達は目の前の森を見る。

高さ十メートル位の木々が大量に配置されていて、地面からは膝くらいまでの長さの雑草が生い茂っていた。隠れられる場所が非常に多いフィールドだろう。

そして、

ピーーっと、笛のような音が鳴る。

これが試合開始の合図だった。

俺達はすぐに森へ入り、地面を走りながら前へ進む。

既にアランは能力を使用して、もう見えないところまで先に走って行った。

「俺は大丈夫だからレフィアも行ってもらって大丈夫だぞ。」

俺は真横を走っていたレフィアにそう告げる。

「分かりました、ではお互い頑張りましょう!」

そう言って青い光を纏い、もの凄いジャンプ力で先へ跳んで行った。

俺も圧体を使って走ってはいるが、流石に二人には追いつけない。

それに木の根っこのせいで、全力で走ることが中々出来なかった。

そろそろフィールドの真ん中に来たかというところで、目の前の木の上から急に矢が飛んできた。

咄嗟に身をよじって矢を躱し、別の木の後ろに隠れる。

「どんな反射神経してんだよ。」

そうすると男の声が聞こえてきた。

今までイザナギやリージの戦闘を目の前で見てきたおかげか、あの程度のスピードなら全然目は追いつくし体も動く。

俺は隠れていた木の後ろからいきなり体を出し、矢が飛んできた方向に向かって剣を飛ばす。

「は!?」

惜しくも体の横に飛び、剣は木に刺さるがそれに驚いた相手が体勢を崩し木から落ちた。

俺はそれを見逃さず、着地地点に向かってもう一度剣を飛ばした。

相手はそれを持っていた弓で弾くが、そのまま弓も弾かれ後ろへ飛んでいってしまう。

「くそ!」

そう悔しそうに立ち上がり、圧を拳に纏って走ってきた。

終わりだ。

そう心の中で確信し右手を相手に構えた瞬間、

ピーーっと試合終了の笛が鳴る。

「ただいまの試合は、リークのネック選手が戦闘不能になったため魔王軍の勝利です。」

そう放送がなり、俺はC受け付けへと戻った。

「二人ともお疲れ、どっちがやったんだ?」

チーム内で一人でも戦闘不能になると試合が終わってしまうので、誰がどう倒したか分からないのだ。

「僕が倒したよ、一瞬だった。」

つまらなさそうにアランが答えた。

「まあまだワンステージですし、しょうがないですね。」

そう言ってくれたレフィアもどこか退屈そうだった。

「最近強いやつばかり見てきたからな。ギャップで余計に弱く感じたんじゃないか?」

俺も確かにこんなものか?とは思った。

だがこの世界に来て殆ど足手まといだった俺からしたら、自信を貰える良い勝負だった。

「絶対そうですよ、なんか目が慣れてます。」

しかしまだ暫くこのステージで戦うとなると、二人は退屈そうだな。

「ステージ入れ替えは一週間ごとに行われますから、あと十回程度勝てばツーステージに上がれますね。」

レフィアがそう教えてくれる。

このリーグ戦では、勝ちは+1、引き分けは0、負けは−1されるしくみになっている。

今の対戦相手のリークは十四位の8ポイントだったから、今は十六位の7ポイントってことだ。

ちなみに俺達は1ポイントの二十五位で最下位だ。

「どんどん試合して早く上に行きましょ!」

アランが元気にそう言ってくれる。

「おー。」

俺も元気にそう答えた。

それからはひたすら試合の連続だった。

どれも数分でアランかレフィアが終わらせてしまうので、俺は対して何もやっていない。

そして初日で俺達は五連勝を達成し、既に十七位まで上がっていた。

「やっぱりレベルが低すぎますよね。圧体とかすらまともに出来てませんでしたよ。」

アランは相手の弱さに愚痴を吐いていた。

確かに組織の幹部クラスが出るレベルではないな。

俺ですら一対一なら負ける気はしない相手ばかりだった。

「一週間に一回だから、次上がれるのは三日後だな。」

「遠いー。それまでずっとあいつらと試合しないといけないのかよー。」

アランは怠そうにそう呟く。

「とりあえず今日は帰るか。」

俺がそう言い、二人とも頷いて付いてくる。

「ですが、今一位のチームはダントツでトップですし、良い勝負になると思いますよ。」

レフィアがそう言いモニターを指差す。

確かに一位のセクレイルというチームは二位と二十ポイント以上の差をつけていた。

「じゃあ、そいつらに勝ってツーステージ行ってやりましょう!」

アランが嬉しそうにそう言ってくる。

「どれだけ戦いが好きなんだよ。」

あまりの喜びようについそう言ってしまう。

「戦いの中で相手の弱点を突いて倒すのがたまらなく気持ちよくありません?」

アランが俺にそう同意を求めてくるが全く分からない。そもそもそんなレベルに付いていけない。

「もしかしたら明日にでも戦えるかもね。」

レフィアも少し楽しそうにそう言う。

俺達はそのまま島を出てカナタ王国へ戻ってきた。

そして昨日借りたホテルにもう一度泊まり、次の朝すぐにまた島へ向かった。

「この島にもホテル有れば絶対儲かりますよね。」

島に着きアランがそう言う。

「まず間違い無いだろうな。」

俺も一々カナタ王国へ戻る手間を無くせるし、是非建てて貰いたいものだ。

建物へ入り受付を済ませ、ワンステージへ戻ってきた。

「一試合目はこれからすぐですね、行きましょう。」

レフィアにそう言われ俺達は付いていく。

しかし残念ながら対戦相手は一位のチームでは無かった。

そしてこの試合も数分で終わり、俺達は次のフィールドへ向かった。

「宜しくな!魔王軍のみんな!」

するとAフィールドへ着くと、帽子を被った一人の男にそう言われた。

「もしかしてあなた、今一位のセクレイルの人?」

レフィアが男に質問する。

「そう!セクレイルのロスト!」

そうやって自己紹介をして、俺に握手を求めた。

「俺は功善だ、宜しくな。」

俺は手を握り返しそう答える。

そうするとロストは満足気にどこかへ行ってしまった。

どうやら次の対戦相手はセクレイルのようだ。

ようやく強敵と思われる相手に俺も少しは緊張してきた。

「待ってました!」

アランは凄く嬉しそうで、すぐに受け付けの前まで行ってしまった。

「レフィアはどうだ?大丈夫そうか?」

俺がそう聞くと、

「私も大丈夫ですよ。頑張りましょう!」

レフィアも力強くそう答える。

それから少しして放送が流れ、俺はA受け付けへと向かった。

それからすぐにフィールドに通され、待機ラインに並ぶ。

「功善さん、この試合各自やりたいように暴れません?」

アランが突然そんなことを言ってくる。

「相手は一位ですよ?一応慎重に行くべきでしょう。」

とレフィアが冷静にそう答える。

確かにこういう時こそ上手く連携を取って戦うべきなのだろう。

だが、

「良いんじゃないか?俺も試したいことがあるしな。」

俺はアランの意見に賛成しそう答えた。

「じゃあ決まりですね!」

そう言うとアランは真剣な表情に戻り試合への準備をする。

俺はその間、この空間にある空気を消していた。




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