第二十三話 カナタ王国

【カナタ王国】


琴の都からカナタ王国までは徒歩だと三時間程度で着くらしいから、向こうに着くのは深夜になりそうだ。

「それにしても、功善さんって年下が好みだったんですか?」

とアランが聞いてくる。

こいつはいつまで言ってくるのだろうか。

「俺は何もしてないだろう。助けてくれてありがとうと言われただけだ。」

確かに抱きつかれた時は多少ドキドキしたかもしれないが、流石にそれくらいで好きになったりはしない。

というかこの話はもうやめたい。

さっきから真顔のレフィアが恐いしな。

「そういえば、俺が両腕で出した圧波があっただろう?やっぱり両腕で出すと威力が上がったりするのか?」

俺はあの隕石を砕くために両腕で圧波を放った。

そのおかげか、今までで一番威力のある圧波を飛ばすことが出来た。

まあ、それでも砕けなかったんだけどな。

「確かに腕を振るスピードや腕の太さで、圧波の調整はできると思いますけど、あれは単純に二つの圧波が重なって威力が上がっただけだと思います。」

そう言うとアランが腕を交互に振り、圧波を二つ飛ばした。

そしてその後、両手を握って腕を縦に振った。

確かにさっきよりも太いが、それは二つの圧波が横に並んでそう見えるだけだということか。

「ですが、あの状況でその判断を下せたのはとても凄い事だと思いますよ?」

レフィアがそう言って褒めてくれる。

ただ夢中に腕を振っただけだったんだが、結果は良かったのでいいだろう。

そんな感じで、たまに圧芯を使って速く移動したり、圧感で遠くのものを見たりと、多少圧の練習をしながらカナタ王国を目指した。

時刻は十一時半、俺達はカナタ王国に着いたが、深夜ということもあってとても静かだった。

「とりあえず宿に泊まりましょう。」

レフィアにそう言われ俺達は宿屋に向かう。

「もしかしてこの王国って、かなり強い方なんじゃないか?」

俺がそう思った理由は都市の発展具合だ。

琴の都は木の一軒家や、火で明かりの役割を果たしていたが、ここはコンクリートや鉄でできた建物に電球の光、飲食店らしい店の前には電光掲示板が置いてあったりした。

「この国は、セシア大陸の中で最も大きな王国なんです。他の大陸の国との貿易はこの国を通した行われるほどです。」

なるほどそういうことか。

昔貿易の場所となる国や村は発展が早いと習ったな。この国もその貿易の影響だろう。

周りを見ながら歩いていると、ホテルらしき場所に着いた。

「ここかな?」

アランがそう呟く。

「とりあえず入ってみるか。」

そう言い建物のロビーに行くと、一人の女性が立っていた。

「ようこそ、カナタホテル三号へ。今日はどういったご用件で?」

そう言って女性は案内してくれる。

「部屋を借りたいんだ、二部屋。明日の朝には出て行く。」

そう言うと少しお待ち下さいと言って何か調べて始めた。

「お待たせしました、二部屋空いていますのでどうぞお使い下さい。こちらに責任者の名前をお願いします。」

と一枚紙を渡される。

一応目を通すが特に怪しいことなどは書いていない。

「ありがとうございます、お支払いは退出する際にこちらまでお越し下さい。ではごゆっくり。」

そう言って鍵を二つ渡される。

隣同士の部屋みたいだ。

四階に着きレフィアに鍵を渡す。

「じゃあ、そっちの部屋を使ってくれ。」

「分かりました。」

そう言ってレフィアとアランが向こうへ行く。

「いや、アランはこっちだろ。」

俺が焦ってそう言うと、

「?」

という顔をされた。

「いや別に二人が良いなら良いんだけど。」

そう言って自分の部屋に入ろうとすると、

「僕そっちでも良いんですか?」

とアランが嬉しそうにこっちに来る。

いや普通そうだろ。

「では私も。」

そう言ってレフィアもこっちに来ようとする。

「レフィアはダメでしょ。女じゃんか。」

アランはそう言って部屋の中に入って行く。

その女と同じ部屋で寝ようとしてたやつが何を言っているのだろうか。

「いえ、冗談ですので。」

そう言って悲しそうに部屋へ戻る。

確かにこんなところに来てまで一人で寝るのは寂しいかもしれないが、そこは分かって欲しい。

「おやすみレフィア。」

俺がそういうと嬉しそうに笑ってくれた。

「はい、おやすみなさい。」

そして俺はアランと色々な話をして、いつの間にか眠っていた。


朝になり、支払いを済ませて俺たちはホテルを出る。

「チャレンジタワー行きの船があるみたいだが、そんなものどこにあるんだ?」

船はいくつもあるがどれも他の国や島へ行くやつだ。

俺達の目的の船は見当たらない。

「私もここは何度か来たことはありますが、チャレンジタワーには行ったことがないので。」

「僕もー。」

二人とも分からないといった感じだ。

しょうがない、誰かに聞くか。

そう思って通行人に何度か聞いてみるが、

「はー、そんな船が出ているというのは耳にしたことがあるが、どこから出ているのかは知らんなー。」

「名前は聞いたことありますけど、それも結局噂のままなんですよね。」

そんな感じの返答しかなかった。

その船は国民からすると全く縁のないものなんだろう。

すると向こうから明らかに普通じゃない数人がこっちへ歩いて来ていた。

「あれは、海賊か?」

先頭を歩いている人を見て瞬時にそう思った。

あのドクロの帽子がまるでそれにしか見えない。

「はい、あれはロキ海賊団ですね。」

そうレフィアが教えてくれる。

俺達は道を開けそいつらの通り道を作る。

「付いて行けば船に辿り着いたりしてな。」

アランがそういうが、俺も同じ事を考えたいた。

俺達は少し距離を開け付いて行ってみる。

すると廃ビルのようなところに入って行った。

「明らかに違うっぽいな。」

そうは思うが一応付いて行ってみると、そいつらは地下に向かって行った。

「どこに行くのでしょうか。」

レフィアも気になっているようだ。

下の状況を探りながらゆっくりと降りて行く。

そして地下に着くと、大勢の人達がいた。

特に俺達のことは気にせず、まるで当たり前かのようにそのまま話を続けている。

しばらくそこで待っていると、

「そろそろ出発しますよー。」

と誰かの声が聞こえ、全員が奥に歩いて行く。

俺達も着いて行ってみると、その道は潜水船に繋がっていた。

「もしかしてこれがチャレンジタワー行きの船か?」

そう言って潜水船に入るとアナウンスが流れた。

「では、チャレンジタワー島行きの船、出発します。」

「こんなんで行くのか、そりゃ誰も知らないだろ。」

「潜水船は初めて乗りますね。」

アランとレフィアは興味津々といった感じだ。

「まあとりあえず乗れて良かった。」

そう言い二人に向き直る。

「頑張ろう。」

小さくそう言うと、

「おー。」

「はい。」

と笑って答えてくれた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る