第二十二話 決着

【決着】


レベル40000・・・

もうそこまで来たら驚くことも恐がることもない、

むしろどんなやつなのか見たい。

そんな風に思っていた。

だが、一方的な戦いではなかった。

体に電気を纏い、ものすごいスピードで多方向から攻撃。

そんなイザナギの攻撃をソティラはシールドと圧波、ミサイルを上手く使い、防ぐどころかカウンターまでしていた。

すると、イザナギの纏っていた電気が一層大きくなり、この距離で痺れを感じるほどだった。

イザナギはその状態で右手から高速の電撃を無数に飛ばす。

ソティラはシールドのみを纏い、ただ耐えているだけだった。

電撃が自分めがけて飛んで来るのだ。

見えるはずもないし、避けるなんてもっと無理だろう。

するとイザナギはシールドを纏いただ耐えていたソティラを地面に蹴り落とす。

そしてイザナギが右腕を上げたと思った瞬間、

ズドーーーーン!!

ソティラが蹴り落とされた場所に雷が落ちた。

「まじかよ・・・。」

そんな反応しかできなかった。

「ソティラ!」

俺はそう叫びソティラの元へ向かおうとする。

しかし、土煙の中から何十発ものミサイルがイザナギめがけて飛んでいく。

だがイザナギは体から周囲に放電させ、全てのミサイルを打ち落とす。

ミサイルの爆発の勢いで土煙が晴れソティラの姿を認識できたが、その体はボロボロだった。

そこにイザナギが歩いて行く。

「能力も才能もあるが、経験が全くないな。」

体に纏っていた電気は解除されていて、空にあった雲は綺麗に無くなっていく。

「俺はな、強い相手と戦うのが好きなんだ。お前には才能があるな、だから強くなれ。」

そう言い帰ろうとする。

見逃してくれるのか?とそう思ったが、そんな甘いはずがなかった。

「ただ俺の仲間を傷つけたことは許さねぇ、頑張って生き残るんだな。」

そう言うと空へ帰っていった。

頑張って生き残る?どういう意味だ。

とりあえず俺はソティラの方へ向かう。

するとソティラはなんとか立ち上がり俺を見る。

「すみません・・・負けてしまいました。早くここから・・・離れて下さい・・・。」

そしてヨロヨロと城の方へ歩いて行く。

「おい、そんな怪我じゃ動けないだろう。すぐにレフィアを呼ぶから寝ておけ。」

そう言いレフィアの元へ向かおうとすると、

「早く・・・離れてください!」

ソティラは泣きそうな顔で俺にそう告げる。

さっきから何を言っているんだ。

そう思っていたとき、空が光った。

そして、黄色い隕石のようなものが、この都に落ちてくる。

そこまで大きくはないが、明らかに電気が流れていると分かった。

「もうダメです・・・早く逃げて下さい!」

そう俺に叫ぶソティラは泣いていた。

もう死ぬと、悟ったのかもしれない。

こんな年の子が、俺たちを守って、いきなり現れた強敵に立ち向かって、死ぬと分かっても俺たちの心配をする。

そんなソティラにやってあげられることは、

「色々迷惑かけてすみません。だから・・・

次は守ってみせます。」

俺がそう言うと、レフィアは涙を流しながら笑ってくれた。

俺は隕石を見据える。

一度に消せるほどの大きさではない。

なんとか半分くらいまで小さくできれば、二度に分けて受け止められる。

そう思い、この数日間ずっと練習して来た圧波を飛ばした。

しかしあれが砕けるほどの威力はない。

だが届いた。威力さえ有れば割ることはできる。

もう隕石はすぐそこまで来ていた。

俺は両手を構え、全ての力を使って両腕を振り圧波を飛ばす。

「おらぁ!」

すると両腕から飛ばされた圧波が二重に飛び隕石と衝突する。

ガン!!と大きな音が鳴る。

しかし、隕石にヒビは入ったがそこまでだった。

大きさは変わることなく、既に城の真横まで落ちて来ていた。

ダメかっ!

そう思ったとき別の方向から圧波が飛んできて、隕石を砕いた。

それを見た俺はすぐに右腕を構え一番大きな破片を消し、すぐにそれを都の外へ飛ばした。

そして残ったもう地面に落ちるだろうギリギリだった破片をなんとか消し終え、辺りは静まり返った。

「流石ですね、トーマさん!」

ソティラはそう言って笑ってくれた。

そして城の入り口からバルト、アラン、レフィアが歩いて来た。

すぐにレフィアはソティラの治療にとりかかった。

「最後の圧波はバルトか?」

あれがなければ全員死んでいたかもしれない。

そう思うと今更恐くなってきた。

「いや、あれはアラン君が飛ばしたものだよ。」

あれはアランだったみたいだ。

「そうか、助かったよ。」

「助けられたのは俺たちですよー。あれが降って来たとき、終わったって思いましたもんね。」

「それにしても、この子は何者なんですか?あのイザナギと張り合えてましたけど。」

治療をしながらレフィアがバルトに聞く。

「本当にただの王女様だよ。争いが嫌いなね。」

そう言いバルトがソティラの頭を撫でる。

「逆にイザナギってやつは何者なんだよ。」

俺は一番気になっていたことを聞く。

最初にバルトからその名を聞いたときの皆の表情から、やばいやつなんだろうとは思っていたが。

「あれは、目的がいまいちよく分かっていない、ただ争いが好きな戦闘狂です。」

アランは苦笑しながらそう言う。

「現在、この世界で三番目にレベルが高いのがイザナギなんですよ。」

「三番目!?」

そんなのが戦おうぜっていきなり現れるのか、迷惑なやつだな。

というか、結局あいつらの目的は何だったのだろうか。

気になったが、ソティラの治療が終わったので全員で城に帰った。

国民の人達は、もう一人の護衛のカーディが避難させてくれていたみたいだった。

事情を説明し、国民の力も借りて城や壊れた建物の修復作業が始まる。

その間俺達は、客室でソティラと四人でご飯を食べ、約束の通り強力な剣を八本と、普通の剣を何十本と受け取った。

「じゃあ俺達、そろそろ行くよ。」

辺りは暗くなり、人影も少なくなって来たところでそう言う。

「もう行ってしまうのですか・・・。」

ソティラは残念そうにそう言うが、それでも城の入り口まで送って来てくれた。

「次会うときはお互いゆっくりしたいねー。」

アランがそう言い、レフィアもそうねと返す。

そこにバルトが走ってきて、

「アランさん、レフィアさん、トーマさん、今回は本当にありがとうございました。皆さんがピンチのときはいつでも呼んで下さい!」

とそう言い頭を下げる。

その横でソティラも頭を下げていた。

「あぁ、そのときは頼むよ。」

俺はそう言い二人に別れを告げ、城を出る。

「じゃあ、カナタ王国目指すぞ。」

「「おー。」」

そんなやりとりをして歩き出そうとしたとき、

「トーマさん!」

名前を呼ばれ振り返ると、ソティラが抱きついて来た。

「え・・・え?なにっ?」

俺もここまで動揺するとは思わなかった。

人を駒や道具だと思う心が消えてしまったせいかもしれない。

今の俺は普通の人間だ。

こんな反応になるのは普通だろう。

「守ってくれたとき、とても格好良かったですよ!

また来て下さいね!」

それだけ言い、離れて城へ帰って行く。

未だにドクンドクンいっている心臓を押さえ二人を見る。

「ほ〜〜」

そこにはニヤニヤしたアランと、

「へーー」

何故か真顔のレフィアがいた。

「よし、行くか。」

俺は何事もなかったかのように歩き出す。

二人とも付いてくるが、未だにへー、ほ〜が聞こえてくる。

だが、そんな時間が、とても楽しく感じられた。


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