第二十一話 降臨
【降臨】
俺は圧感を使い視覚を覚醒させる。
二人が交錯するたびに火花が散っているのが分かる。
俺はそのまま圧体を使い交戦しようとするが、あまりの速さについていけない。
一際大きな音が鳴った後、二人は一度距離を取る。
「思ったよりやれている。やっぱり功善さんは最上階に向かってくれ。」
バルトはそれだけ言いすぐに戦闘態勢に入る。
するとカムイの姿が突然消えた。
いや、俺には消えたように見えた。
視界の隅に閃光のようなものが見えた瞬間、目の前でバルトの腕とカムイの剣が衝突する。
「くっっ!」
若干押されていたが、バルトはなんとか剣を弾き返しカムイが後退する。
「はぁ、はぁ、そりゃあんなのが本気な訳ないよな。俺はとっくに全力だってのに。」
バルトはまたもや悔しそうにカムイを睨む。
「すまない、迷惑をかけて。」
完全な足手まといなことに謝罪をする。
「そんなこと無いさ。俺が全力で守るから、君は最上階を目指して走ってくれ!王女様の力が戻ればきっと解決する!」
そう言いさっきよりもより一層明るい光を纏う。
「あぁ、頼んだ!」
俺は圧芯を足に使い全力で走った。
横から何かが向かってくるのが見えたが、俺は気にせず走り続ける。
キィン!!
「ぐぁぁ!」
後ろでバルトの悲鳴が聞こえる。
やられたのか!?
だが、もう止まらない。
階段を駆け登り、遂に十階に着く。
すると、言っていた通り真ん中にケースのようなものに入った琴が目に入る。
俺は左手を伸ばしソティラを出そうとする。
しかし、床が突き破られカムイが目の前に立ちはだかる。
そしてすぐに剣を構えたかと思うと、またもや姿が消えた。
俺は迷わず左手を伸ばしソティラを琴の近くに飛ばす。
「うわぁ!」
ソティラが琴の近くで起き上がったことを確認し、圧芯を右腕に使い後ろを振り向く。
いない!後ろだと思ったのに、そう思った瞬間上からカムイが飛んでくる。
振り下ろされた剣になんとか反応し右腕でガードするが、弾かれ吹っ飛ばされ壁に打ち付けられる。
するとカムイは剣の先端を俺に向け、電撃のようなものを溜める。
避けられない・・・
そう思い覚悟した時、突然カムイが吹き飛ばされた。
「ありがとうございます、トーマさん。あとは任せて下さい。」
部屋の中央には、さっきより少しだけ大人っぽくなったソティラが立っていた。
無事力を取り戻せたみたいだった。
「とりあえず外に出ましょう。」
ソティラはそう言ってミサイルを飛ばし、壁を破壊してカムイを外へ飛ばす。
しかしソティラは外には出ずに、下の階へ降りる。
俺もソティラに連れて下へ降りていく。
そこには気絶しているバルト、そしてまだ戦闘中のアランと、倒れている敵の前で座っているレフィアがいた。
「おいおい、カムイは何やってんだ?」
とゼルは壁を壊して外へ飛び出す。
「はぁ、はぁ。」
俺は今にも倒れそうなアランを消して階段を駆け降りる。
既に下にはレフィアとバルトを抱えたソティラが立っていた。
「レフィアさん、トーマさんは二人をお願いします。」
それだけ言いソティラは外に出て行ってしまう。
俺はすぐにアランを出し、
「レフィア、二人の治療を頼めるか?俺は中に誰も入らないよう外を見張っておく。」
するとレフィアは頷き治療に取り掛かった。
外に出た俺は辺りを見渡す。
そこには既にソティラにやられたであろうゼルが倒れていて、その前方ではカムイとソティラがまさに戦っている最中だった。
市民の人達の姿が全く見えないが、避難したのだろうか。
そんなことを考えている間にも勝敗はつきそうだった。
倒れているゼルの近くまで飛ばされたカムイが、倒れたままソティラに向かって電撃を飛ばす。
しかしソティラはシールドを纏い一切のダメージも入っていないようだった。
そしてゆっくりカムイに近づき剣を向ける。
「お前の負けだ。」
そう言ったのはソティラではなく、カムイだった。
「来たか!」
ソティラはそう言い上空を見上げる。
そこにはいつのまにか黒い雲がかかっていた。
俺は何が起きているのか分からずただ呆然としていた。
すると雲が一度黄色く光り、その光が落ちて来た。
ソティラはシールドを纏ったまま上空へ飛び剣を突き刺す。
ズドーーーーン!
光と剣が衝突した衝撃で、俺やゼルとカムイ、近くにあった建物までもが吹き飛ばされた。
「何だ!?」
俺はゆっくり起き上がり衝突した場所を見る。
そこにはソティラと、そしてソティラと同じくらいの背の青年が立っていた。
「俺の仲間に何してんだ?」
そう言い青年は黄色い光を纏いソティラを睨む。
「そちらの仲間に襲撃を受けたので追い返していました。何が問題でも?」
ソティラはそう言い悪気無さそうに青年を見る。
「そうか、それは俺の仲間が失礼なことをしたな。注意しておくよ。」
「えぇ、是非そうしてください。」
すると青年はカムイ、ゼル、そして城の中で倒れている女性を連れ空へ飛んで行ってしまった。
終わったのだろうか。
そう思いソティラの元へ行こうとすると、
「来てはいけません、まだ終わっていませんよ。」
ソティラはそう言いその場から動かない。
そこから数秒して、再度光と共に青年が落ちて来た。
「おい女、ここからは俺の趣味だ。戦え。」
青年はそう言いソティラを見る。
「それは構いませんが、私以外に危害は加えないと約束して下さい。」
ソティラはそう言い、俺と城の一階にいる皆を見渡す。
「そんなことはしない、一対一だ。お前ほどの実力者は久しぶりなんだ。楽しませてくれよ?」
「あなたほどの方にそう言ってもらえて嬉しいです。私が戦って来た中でも、あなたはぶっちぎりでレベルが高いですから。」
ソティラがそう言っている。何者なんだあいつは。
「じゃあやろうか。本気でこいよ?」
「勿論です!レベル40000の力見せて下さい、イザナギさん。」
そう言って戦い始めた二人の頭上には、さっきよりも広範囲に雲ができていた。
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