第十七話 原点

【原点】


そこから先のことは何も分からなかった。

何が起きているのか、何をしているの、全てが分からない。

ただ一つだけわかるのは、リージが押されているってことだ。

時々吹っ飛ばされているリージの姿が見える。

その度にリージには電気のようなものが流れていた。

そして、空中から地面に叩き落とされたリージが、ついに動かなくなる。

「おいおい、もう終わりか?」

殺し屋はリージの前に立ちそう言い放つ。

「はぁ、はぁ、くそがっ」

もうリージには、動けるほどの体力は残っていないようだった。

大量に血を流し、死ぬのも時間の問題だろう。

「おいアーノル、帰るぞ。」

そう言い殺し屋はアーノルを連れて帰ろうとする。

「はぁ・・・逃げられると・・・思うなよ。」

リージは去っていく殺し屋に向かってそう告げる。

戦いは終わった。そう思い俺もレフィアを連れて建物の中へ入る。

するとそこにはウィルインがいた。

「功善君!急げ!撤退の準備を!」

いきなりそう言われて俺は疑問に思う。

「ここの副館長は死んだぞ。」

「違う!連盟の大将が一人こっちに向かっている!僕達なんかでは敵わない!早く逃げるぞ!」

そう言いゲートを開き、動けなくなった仲間を次々と送っていく。

焦った俺もレフィアと入ろうとした瞬間、リージが倒れているすぐ真横に一人の人間が現れた。

あれが言ってた大将なのか?

俺は急いでレフィアとゲートの中に入る。

「来た・・・」

そう言いランとロンを抱えたウィルインが急いでゲートに入る。

閉じかけのゲートから見えたのは、大きな砂嵐だった。

あれが大将の能力。

それが確定だと思えるくらい、あの場には不自然で大きな砂嵐だった。

魔王城の入り口に戻ってきた俺達は、ウィルインの部下達に治療された。

そしてそこには魔王様もいた。

「すまない、危険な目に合わせてしまったね。」

そう言い俺たちの元へ近づいてくる。

「いえ!力及ばずすみません!」

アランが頭を下げ謝罪している。

残りの頭達も頭を下げていた。

「俺の、力不足です。部下を危険に晒してしまって。」

俺は心からの思いで謝罪する。

「いや、今回は完全に私のミスだ。君たちは弱くない、ただ相手が悪かった。あいつはサイトスクールの館長リージ。今は連盟の本拠地に出向いているという情報があったんけど。残っていたようだね。」

あいつ館長だったのか。

確かに戦えるのは私一人しか残っていないと言っていたな。まさか館長自身が残っていたとは。

フォースのメンバー全員の治療を終え、セカンドのメンバーが帰っていく。

「功善君、君がもっとしっかりしないといけないよ。最高幹部としてね。」

ウィルインもそう言い残し、帰っていく。

確かに俺は過信していたのかもしれない。

能力を手に入れ、圧の才能があると言われ、二等兵二人を倒して、ただそれだけで俺は自分に酔っていたのだ。

「悪いな。俺がこんなんで、もっとしっかりした最高幹部になれるよう頑張るよ。」

俺は残った皆にそう告げ自分の部屋に戻る。

レフィアが何か言いたそうな顔をしていたが、何も言わなかった。

部屋に戻った俺は、ひたすら自分を責めていた。

仲間を危険に晒し、今日初めて出会った少年に庇われ、見知らぬ人に代わりに倒してもらい、仲間の力で逃げ帰ってきた。

こんなのが俺がしたかったことじゃない。

復讐するんだ、奴等に。

仲間を信じられるようになった。守りたいと思った。

それは俺が良い方向に変われたと思う。

だが、本来の目的すら忘れてしまっていたみたいだ。

連盟の奴等を倒す?

それだけじゃ足りない。

俺は、

魔王軍で世界を滅ぼしてやろうと思う。

俺が最強だと皆から恐れられるような、そんな存在になろう。

ここが俺の原点だ。





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