第十六話 最強の殺し屋
【最強の殺し屋】
まるで次元が違った。
頭が、アランが、レフィアが、全力で戦うが歯が立たない。
それぞれが外、建物の二階と分かれて戦っている。
今、俺の目の前ではアランが戦っていた。
既に見たことのないほど蒸気を纏っていたアランが俺の後ろまで吹っ飛ばされる。
「アラン!」
俺は駆け寄り声をかけるが反応が無い。だが息はしている。
壁にぶつかった衝撃で意識を失ったようだった。
相手は分身し、ランとロン、ノーズ、アラン、レフィア、少年と、それぞれ一対一で戦っていたのにアランがやられた。
するとアランを倒したリージが俺を見据える。
「次はあなたですねぇ。」
そう言いとんでもないスピードで移動する。
俺には赤い光が線となって動いているようにしか見えなかった。
俺は集中し、圧感を使う。
すると、なんとか姿が見える程度には視覚が研ぎ澄まされた。
しかし、突然目の前から消えたリージが俺の後ろに現れて背中を蹴る。
「ぐぁぁ!」
今まで感じたことのない痛みだった。
隣の部屋まで飛ばされは俺は起き上がることも出来ず、ただ左手から剣を飛ばす。
相手は一度死角に隠れ、辺りは静まり返る。
俺は左手を向けたままゆっくり立ち上がり、ノーズの熱を飛ばす。
壁ごとあいつを溶かしてやろうと思ったが、既にあいつはいなくなっていた。
熱から出た湯気が部屋を漂う。
視界がなくなり、お互い均衡した時間が続くと思ったが、ズドーン!
と横から大きな音がする。
俺は反射的にその方向に向かって、壁を吸い込むために竜巻を出す。
すると、やはり壁の破片がいくつか俺の脳内の部屋に入ってきた。
「はぁ、はぁ、はぁぁ。」
痛みはまだ残るが、なんとか息を整えて俺は外に出る。
リージの姿は見えない。
俺は圧体を使い、建物の入り口まで移動する。
そこには、すでに倒れたノーズとレフィア、
そして三人のリージがいた。
「嘘だろ・・・。」
あの二人がやられた。
「君がこそこそ隠れている間に私が加勢したのですよ。」
そう言い一人のリージが俺の方へ歩いてくる。
俺のせいか。俺が相手にならないから、他の人に迷惑をかける。
俺は左手を伸ばし相手に駆け寄る。
圧体中の足の速さはかなり速かったが、相手はなんともない様子で歩いてくる。
あと少しで手が届くという状態から、左手に剣を握り相手に突き刺す。
「っ!これはこれは・・・」
慣れないスピードで突いたため、狙いが少しずれ左肩に剣が刺さる。
そして俺は後ろに下がりながら、残っている剣を全て放出する。
しかし、右手に赤い光を纏ったリージが、飛んでくる剣を全て打ち落とす。
「・・・は?」
俺は訳が分からずその場に立ち尽くす。
もう、できることがない。
リージは右手に纏っていた赤い光を全体に纏い、その瞬間その場から姿を消した。
俺は本能で後ろを向きシールドを出す。
とてつもなく大きな音が鳴り、シールドが壊れた。
しかしリージも殴った反動で後ろに飛んでいた。
「痛いですねぇ、君も凄く珍しい能力をお持ちのようだ。連盟に渡すのはやめよう、私が貰うよ。」
そう言いまた姿を消す。
いや、消えたと思える程のスピードで移動する。
また俺は咄嗟に後ろにシールドを出すが、そこには誰もおらず、
「ハズレですねぇ。」
後ろでリージの声が聞こえた。
終わった・・・そう思った瞬間、
ヒュッと何かが俺の頭の横を通り抜ける。
俺はシールドを消して前に倒れ、後ろを確認する。
そこには、直径三十センチくらいの穴が下まで続いた。
「いやーまさか、分身とはいえ敗れてしまうとは。」
リージが見る先には、ボロボロになった少年が二階の窓際に立っていた。
そして飛び降り、俺の方へと歩いてくる。
「おっ、やっともう一人の方も終わりましたか。ツインなんて珍しい力、意外と手こずってしまいました。」
そう言い、四人のリージが集まってくる。
ランとロンもやられた。
もう為す術がない、そう思ったとき、
「俺より弱い奴等が・・・俺のために戦ってんのに・・・はぁ・・・逃げる訳には行かねぇよな。」
少年はそう言い、俺とリージの間に立つ。
「君はどうでもいいので死んで貰いますよ。私は後ろの男性に興味があるので。」
そう言い四人だったリージが一つに重なり、
「「っ!?」」
近くにいるだけで押し潰されそうな圧を纏う。
少年は声を出すことが出来ず、ただ立ち尽くす。
「何やってんだ、逃げろよ。」
俺は少年に向かって言う。
しかし少年は動かない。
「ご立派な心がけですが、死んでしまっては意味がない。さようなら、アーノル君。」
そう言い少年の首を掴もうとしたとき、
唐突にリージの姿がまたもや消えた。
少年は膝から崩れ、涙を流す。
「怖かった・・・」
俺は何が起こったのか分からなかった。
すると、一人の男性がこっちに向かって歩いてきた。
「父を助けに行くだぁ?随分偉くなったなあアーノル。」
そう言い少年の手を掴み起き上がらせる。
「あとは任しとけ。」
それだけ言い少年の頭を撫でながら辺りを見渡す。
少年は涙を流しながらただ頷いていた。
「いやいや、それはないでしょう。貴方と戦うのなんて嫌ですよ。」
そう言い男性の見る方向からリージが姿を現す。
「世界でも三本の指に入る殺し屋?無理無理無理無理。許して下さいよぉー。」
そう言いながら正座で許しを請う。
俺は男性の方を見る。世界でも三本の指に入る殺し屋って、どんだけやばいやつなんだ。
「あんたも嘘くさい演技をやめろ。まあ、俺の息子に手出したんだ。許す訳はねぇけどなぁ。」
そう言われたリージは急に真顔になり立ち上がる。
「なら、本気でやるしかないですね。」
「その通りだ、頑張れよ!」
その瞬間、二人の姿が消えた。
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