第十五話 サイトスクール

【サイトスクール】


レフィア達との手合わせを終えた俺は、傷を癒してもらい自分の部屋でくつろいでいた。

二重人格だった俺の中のもう一人の俺は、もういない。

スッキリはした。しかし、あいつが俺を守るために生まれてきたものだと知ると、少し寂しさは残る。

だが、あいつの心は引き継いでいる。

俺も守るよ、自分を。

そんなことを考えていると、脳内に声が聞こえた。

「功善君聞こえるかな。すぐにいつもの会議室に来て欲しい。」

と魔王様の声だった。

そんな能力もあるのかと思いながら会議室に向かう。

部屋に着くと、そこには魔王様しかいなかった。

「来てくれてありがとう。君に少し頼みたいことがあってね。」

俺個人にか。俺だけ呼ばれることなんて今までなかったから少し緊張する。

「とある組織がね、世界連盟協会に強力な武器を送り続けていることが分かったんだ。」

強力な武器?確かにそれは面倒だな。

「そこで、君達にその組織を攻撃して欲しいんだ。もちろん全壊させろとは言はない、奴等に緊張感を持たせる程度で構わない。」

なるほど、確かにそれなら出来るかもしれないな。

「その組織の場所や名前って分かるんですか?」

「あぁ、つい先日ウィルインにお願いしたんだ。私が目星をつけたところを周ってもらってね。組織の名はサイトスクール。」

場所が分かっているならはやいな。

「分かりました、いつ頃行けばよろしいですか?」

「いつでも構わない、ただ三日以内には行ってもらいたいな。次の作戦を考えないといけないからね。」

「分かりました。」

なら明日の早朝から行こう。

また準備もしなければならないしな。

魔王様に礼をし、部屋から出ようとする。

「あぁそうだ功善君。君にもレベルがついていたよ。300だけどね。」

魔王様は少し笑ってそう言ってくれる。

「もっと脅威になれるよう頑張ります。」

魔王様は嬉しそうに微笑み手を振ってくれる。

300か。まあ一回の戦闘じゃそんなものか。

サイトスクールね。

全壊させてやる気持ちで行こう。


次の日の朝、俺はレフィアとアラン、そして頭三人を連れてウィルインの元へ向かう。

かなり大きな戦力だが、一つの組織を相手にするのだから妥当だろう。

「功善様からお声頂けて嬉しいですよ。」

アランがそう言ってくれる。

「この間一人で行くって言ったときは驚きましたものね。」

レフィアがからかうようにそう言ってくる。

「今後は、もっと働いてもらうよ。」

過去のことには触れず、そうとだけ伝えておく。

城の入り口へ出ると、ウィルインが既に待っていた。

「おはよう功善君、それにみんなも。」

アランやレフィア達が丁寧にお辞儀をする。

「じゃあ早速送るからね。」

そう言いウィルインはゲートをつくる。

俺たちはそのゲートに入り外へ出る。

「でかいな。」

最初に出たのがその言葉だった。

世界連盟協会の奴等に物資を送る組織。

そんなことを聞いていたからもう少し小さな建物だと思っていたが、魔王城と同じくらいあるな。

「じゃあ行くぞ。」

俺はそう言い、入り口の反対に周る。

右手を突き出し、壁の一部を消そうとする。

その瞬間、

ファーン、ファーン、ファーンとサイレンが鳴り出した。

俺はとっさに身構えるが何も起こらない。

しかしレフィア達は何か気づいたようだった。

「ものすごい量の圧が放出されています。私達の他にも、この建物に攻撃をしている方がいるのかもしれません。」

同時に同じタイミングで攻撃?

本当にそんなことがあるのかと思うが、

「なら今がチャンスだな、行こう。」

そう言い壁の一部を消して中へ入る。

続いて残りの仲間がこの建物に入ってくる。

サイレン以外の音は聞こえない。

俺はこの部屋にある武器や道具を次々と消していく。

残りの仲間は、武器を作るのに必要であろう機械などを壊していく。

すると、ズドーン!!と建物の外に何かが落ちて来た音がした。

急いで外を見てみると、一人の少年が仰向けになって倒れていた。

「明らかにこの組織の者じゃないですね。あれがさっきの攻撃者だと思います。」

レフィアが俺にそう言う。

となると、あいつは誰かにやられたのか。

すると少年はゆっくりと起き上がり、この建物に入ってくる。

アランが能力を使い白い蒸気を出す。

中に入ってきた少年は俺たちに気づき立ち止まる。

「お前ら、この組織の者じゃないな?何してる。」

「お前の方こそ、一人で何してる。」

俺は左手を構えた状態で少年に話かける。

「俺は行方不明になった父を探しにここまで来た。

本当にここにいるのかは分からないが。」

それだけ言われ、警戒心を解いたのかアランが元に戻る。

その時、さっきよりも大きな衝撃と音で、外に誰かが落ちてきた。

「くそがっ。」

少年は悔しそうに舌打ちをし俺たちに向き直る。

「頼む手を貸してくれ、お前らもこの組織を潰しに来たんだろう?この部屋を見れば分かるよ。」

ぐちゃぐちゃの部屋を見て少年がそういう。

そして建物にさっき落ちて来たであろう人が入ってくる。

「まずいっ。」

少年は急いで俺たちのところへ来る。

「おやおやぁ、鼠が一匹潜り込んでいると思ったら、七匹も潜入していましたか。」

そう言いながらそいつはゆっくりこっちに向かってくる。

「では改めて、私はサイトスクール副館長のリージと申します。」

そうやって名乗りながらも一歩ずつ俺たちとの距離を埋めてくる。

「おやおや?よく見たらマーダーグループの方々じゃありませんか。その幹部が二人もおられるとは、面倒ですねぇ。」

そう言いやっと歩を止めたリージと俺たちの距離は五メートル程度。

「侵入者を捕まえるのは当然のことなんですが、なんと今この組織で戦えるものは、私だけなんですよねぇ。」

アランやレフィア達が一斉に戦闘態勢に入る。

「功善様は少し下がってて下さい。」

「まだ圧の特訓中の身では、あいつと戦うのは厳しいと思います。」

そう言われ俺は不甲斐なくも後ろへ下がる。

確かに今やっても足手まといになるだけかもしれない。

「面倒ですねぇ。君たちは見逃してあげるから、そこの鼠一匹を渡してくれないか?」

とリージが少年を指差し交渉してくる。

するとアランが、

「お前も戦えよ。」

と少年にそう言いリージに突っ込んでいく。

「はやっ」

なんとかギリギリアランの蹴りを躱したリージが驚いたようにそう言う。

しかし・・・

「精々頑張りたまえ。」

そうやって赤い光を纏ったリージが・・・

五人に増えた。

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