第十三話 過去

【過去】


俺は当時十九歳だった。

かなりレベルが高い方の大学に通い、運動も勉強もできるエリートだった。

その日俺は大学の友達と飲食店に飲みに行ったいた。

目立たないところにあるその店は客が少なく、俺たちにとって、居心地の良い場所だった。

男四人で笑い合い、酔っ払わない程度に酒を飲み、二十三時を少し過ぎたくらいでその店を出た。

「あー楽しかったなー!」

「どうせまたすぐ来るけどな!」

「お前は留年しないように頑張れよ!」

そうやって笑い合い、いつものように帰ったいた。

「助けてっ!誰かぁ!」

そのとき女性の叫び声が聞こえた。

俺達はすぐに声のする方へ走り、その現場を捉えた。

「あぁ!助けてっ!お願い!」

そこでは警察官二人に服を脱がされ、助けを求める女性がいた。

すると警察官は俺たちに気づき、

「まさかこんなとこに人がいるとはな。」

「おいお前ら、妙な事考えるなよ?俺達は警察官だ。もし暴力でも振るえば即牢獄行きだからな?」

「分かったらさっさと去れよぉ。」

そう言い女性の口を塞ぎ覆いかぶさる。

俺は女性を助けに行こうとし、友達に小声で呼びかけた。

「おい、四人なら助けられる。行こう。」

しかし三人は気まずそうにこちらを見る。

「どうした!いくぞ!」

俺は更に呼びかけ肩を揺らす。

しかし三人は何も言わない。それどころか、

「関わるのはやめよう、警察だぞ。」

そんなことを言い出した。

そんなやりとりをしている間にも、女性はなんとかしようと全力でもがいている。

俺は見ていられず一人で駆け寄り、振り返った警察官の顔を蹴り飛ばした。

「いってぇなぁおい!」

そう言い突っ込んでくる警察官の脇腹に手刀、そして回し蹴りを食らわす。

空手黒帯の実績が役に立っていた。

様子見をしていたもう一人の警察官も突っ込んでくるが、股間に蹴りを入れ、首を掴み地面に倒す。

「かはぁ!」

その警察官は意識を失い動かなくなり、場は静まり返った。

「大丈夫ですか?」

そう言い女性に手を差し伸ばした瞬間

パァン!!

突然発砲音がし、後ろを振り返る。

「あーあ、外しちまった。」

「ぁ・・・ぅ・・・」

ばさっと、後ろで人が倒れる音がする。

もう何が起きたかはわかった。

女性が撃たれたんだ。

俺は警察官から目を離さずゆっくり手をあげ後ろに下がる。

「「「うわぁぁぁぁあ!」」」

そのとき、後ろで見守っていた仲間が一斉に逃げる。

しかし、

パァン!!

と、一番後ろにいたやつの背中に弾丸が突き刺さる。

声もなく倒れ、すぐに動かなくなってしまう。

俺は恐怖で動けなくなってしまった。

何も言わず、ただその場に立ち尽くしていた。

「残りの二人も始末しねえとなぁ。」

そのときパトカーのサイレンの音が鳴り響いた。

あいつらが呼んでくれたのか?

動くな、このまま、何もするな。

恐怖で今にも逃げ出したい自分に言い聞かせる。

しかし俺はその場から一歩も動かない警察官に違和感を覚える。何故逃げないんだ?

すると警察官は無線機のようなものを持ち奥に歩いて行く。

助かったのか?

しかし思うように立ち上がれない。恐怖で腰が抜けてしまったみたいだ。

そして数十秒後、さっきの警察官が戻ってきた。

二人の警察官、そして俺の友達一人を連れて。

「おい少年、今回の事件の真実を述べろ。」

そう言い俺の友達の肩に手を乗せる。

「は、はい。一人の青年が同じ大学仲間である男性二人と、一般人の女性を一人殺害。証人は僕です。」

・・・は?

何を言ってるんだ?脅されているのか?

後ろの警官は何をしてんだよ!

すると、二人の警官が俺の所へ来て手錠をかける。

「悪いね。あの人僕達の上司でね。言うこと聞いてるだけで大量の金が入るんだ。」

そう言い、俺は連れて行かれパトカーに乗せられる。


そして・・・


「残念。相手が悪かったねぇ。」

そう言い俺を台の上に乗せた警官が笑う。

それが俺が最後に見た光景だった。


仲間も・・・正義も・・・そんなものはただの偽りだ。ゴミだ。

だろう?



ゆっくり目をあける。

俺は・・・どっちだ?


いや、俺の記憶がある。

ついさっきまで夢を見ていたこと、レフィアと話していたこと。


しかし、知らない記憶もある。

レフィアと戦っている記憶、連盟の奴等と戦っている記憶。


イズハのところに行こう。

分からなかったら聞きにこいと言っていた。

俺は急ぎ足でイズハのところへ向かう。


途中フォースの駒とすれ違ったが、とくに俺に対して違和感はないようだった。


駒?


あぁ、俺はもう、ダメかもしれない。






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