第九話 戦闘開始

【戦闘開始】


目が覚める。時間を見ると朝の八時だ。

約束の時間まではあと三時間ある。

外に出て能力の練習でもしておこうか。

そう思い部屋から出て外へ向かう。

そこにはアランとギラン、そしてガイがいた。

「「功善様、おはようございます。」」

俺が近くに行くとギランとガイが挨拶をしてくれる。

「あぁ、おはよう。」

それだけ言い俺はアランの元へ向かう。

「あの二人が今回連れて行く頭か?」

「はい。ガイとギランです。」

単純に戦闘力が高い二人を選んだのか。

それとも他に理由があるのか。

「あの二人を呼んだのに何か理由はあるのか?」

「いえ、ただ行きたいと言った二人を連れて来ただけです。」

最高幹部でも頭でも変わらないな。

俺はそれだけ聞き終え、別の場所に移動する。

そして能力の練習を始める。

脳内の部屋からイメージをし、左手から出す。

出てきたのは手のひらサイズの石だ。

俺はこれをすぐに掴もうとするが、指先が少し触れただけで、掴めずに飛んでいってしまう。

俺はその後も消して出してを繰り返し、できるだけ掴めるように練習する。

ゆっくり出してすぐ掴む。

中々難しいが、これができないと脅威にはならない。

ただ飛ばしてくるだけだと知られたら、避けるだけでいいのだから。

懸命に練習していると、

「功善様、少し宜しいですか?」

後ろからレフィアに声をかけられる。

「どうした?」

体は前を向けたまま声だけで返事をする。

時間はあまりないからな。少しでも練習する時間に使いたい。

「功善様は左手から出すとき、どのようなイメージをされていますか?」

唐突にそんなことを聞かれた。

そういえばこいつには能力の詳細を全部言ったんだったな。

「部屋の中の何かをイメージし、それを左手から出すようにしているだけだ。」

というか、今はそれしかできない。

他にももっと使い方があるかもしれないがな。

「功善様は、ゆっくり出して掴もうとしていますよね?多分それは、最初に左手の能力を使ったのが放出だったからだと思うんです。」

何を言っているんだ?俺の左手の能力が放出じゃないってことだろうか。

「出したいものを、左手で持つイメージをしてみたらどうでしょう。」

左手で持つか。確かに俺は左手の能力を飛ばすものだと思っていた。

だからできるだけゆっくり出して掴もうとしていたが、そうじゃないのなら。

俺は部屋の中の石を選び、そして左手で持つイメージをする。

「なるほど、左手は出すには出すだが、出し方は自由なのか。」

左手には石が掴まれていた。

「ありがとうレフィア。できるようになった。」

素直に感謝する。

今後も困ったことがあれば助けてもらおう。

「いえ、力になれて嬉しいです。頑張ってください。」

そう言い笑ったレフィアはアランの方へ向かう。

本当にあんな子が戦うのだろうか。

あんな優しいやつを危ない目に合わせなくないよな。

せっかく能力が発言したんだ、俺がしっかりしないとな。

左手に持つことが完璧にできるようになった俺は、集合までの時間まで三十分あることを確認し、武器倉庫に向かった。


「よし全員いるな。では順番に来てくれ。」

十一時になり入り口へ集まると、既に全員が集合していた。

軽いエールをウィルインからもらい、順番に呼ばれる。

ウィルインが両手を前に掲げると、そこに丸いゲートのようなものが現れた。

皆は躊躇なくその穴に入り消えて行く。

これがウィルインの能力なのだろう。

テレポートというよりは、空間移動だな。

最後に俺とギンが中に入り、すぐに出口から出ると、大きな工場が見える。

周りを見渡すと辺り一面海だった。

本当にワープしたのか、すごいな。

「よしお前ら、昨日言った通りの配置につけ。」

ギンがそう言い、ファーストのメンバーがバラける。

こっちはアランが指示し、残りは俺とアランだけになる。

「私は功善様と行動するので。」

そう言い海の方を見るアランに、

「ありがとな。」

つい口から出てしまう。日本にいた頃は仲間なんていなかったからな。そのせいだろう。

アランは驚いた表情でこっちを見ていたが

「はい!」

そう言って笑い、また海の方へ向き直る。

良い仲間を持った。

本当にそう思う。

俺は時間までの間工場を見学していた。

この世界には様々な能力があるが、それでも武器を使うのはやはり武器が優秀なのだろうか。

剣や盾によって、能力なんかがあるのかもしれないな。

そんな風に思い工場の周りを見ていたときだ。

「功善様、来ましたよ。」

アランに呼ばれ海の方を見ると、向こうから五隻の船が向かってくるのが見えた。

その船の前にはコトが使ったいたシールドのようなものが貼られていた。

今ここで俺にできることはないな。

船が上陸するであろう陸の近くへ行き様子を伺う。

すると五隻の船が別れ、島を囲うようにして突っ込んでくる。

ギンの戦略は見事に的中したわけか。

これで全ての船に戦力を当てられる。

船が上陸し、青い服を着た人が六人、その後ろに青と白の服を着た人が一人いる。

「二等六人と上等一人ですね。」

アランがそう言い奴等に向き直る。

あいつらの位なんて知らないが、七人か。

俺はどこまでやれるか。

「やはりバレてるようだねぇ。マーダーグループにも中々優秀な方がいるようだ。」

上等がそんなことを言ってくる。

「お前の遺言はしっかり伝えておいてやるよ。」

アランがそう言い体の周りに白いモヤのようなものがかかる。

アランの能力だ。何倍かはわからないが、少なくてもランとロンと戦ったときよりは低い気がする。

「全員戦闘準備。行け!」

上等がそう言い、前の六人が距離を詰めてくる。

俺も構え、左手を伸ばす。」



「さあ。皆殺しだ。」

誰かがそう言った気がしたと思ったら、俺の意識は薄れていった。

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