第六話 仲間の力
【仲間の力】
目が覚める、朝だ。
服を着替え外に出る準備をする。
昨日あの後外に行き、色々試していて分かったことがある。
今のところ、消すのに大きさの限界は無かった。
一番大きなもので、高さ六メートル位の岩を消すことができた。
そしてそれを出すとき、他のものより力を込めないといけなかったが、それもなんら問題ではない。
あの大きさのものを出すのだから当然の話だ。
唯一欠点があったとすれば、脳内にある部屋だ。
あの部屋には限界があった。
まあ部屋なのだから当然なのだが。
あの大きな石を消したあと、脳内の部屋は半分程度埋め尽くされた。
確認するために似たような大きさの石を探して消してみる。
その石は消すことができたが、その後何も消すことが出来なかった。
当然、砂や砂利などは消せたが、椅子やドアほどのレベルの大きさのものも、消すために竜巻は出せるが、吸い込まれていく気配が全くなかった。
とりあえずそれくらいのことを確認し、あとは多少ゆっくりものを出す練習をして戻ってきた。
そして今日は、俺の部隊メンバーの力を把握するために外に行く。
俺はあいつらのことを全く知らない。
種族、能力、戦闘力、今後彼等と共に戦う仲間として理解しないといけない。
「名前も覚えないとな。」
部屋を出ると丁度迎えにきたレフィアと鉢合わせる。
「あ、おはようございます。今日は宜しくお願いします。」
そういい頭を下げてくる。
魔王様も言っていたが、確かにこういう堅苦しさは要らないかもな。
なんだかこっちまで丁寧になってしまう。
まあこいつらからしたら、やらなければならないことなんだろうけど。
「あぁ、おはよう。今日はレフィアの能力も見られるのか?」
この魔王軍では一応最も長く一緒にいるレフィアだが、俺はこいつのことを何も知らない。
「はい、今日は頭以上の位の者の力を分かって貰おうと思っています。」
てことは十人か、まあそれくらいなら覚えられるかもな。
「では、早速行きましょう。」
そう言い歩き出して行ってしまう。
外に出ると十人の生物が規則正しく並んでいる。
十人の生物って何だと自分でも思うが、一応人型なのでそう呼ぶ。
そしてこの間の演説のおかげだろうか、あのとき恐がりまくったおかげで今日は大丈夫そうだ。
列の先頭の真ん中にはやはりあの少年がいた。
「今日は宜しくお願いします。」
少年は俺にそういい、少年の後ろにいた二人を指名し何かを伝える。
「今日は、対戦形式で力を知って貰おうと思います。僕たちが順に一対一で戦っていくので、そこから情報を得て貰おうと。」
たしかに長々と話されるより、実際に見たほうがインパクトもあって記憶に残るかもな。
「じゃあ早速、初めはガイとノーズです。始めろ。」
少年がそういい戦いが始まる。
ガイと言われたやつは、見た目は鬼だ。
そしてそのガイが一歩を踏み出す瞬間だけ、足の筋肉が異常に膨れ上がっている。
そして飛んだら筋肉は戻っている。
たった一歩で相手との距離を一瞬で詰め、今度は異常に膨れ上がった右腕で相手を殴る。
ノーズと呼ばれていたやつは、ガイの攻撃を、赤い光を纏った左腕で受け止める。
そしてそのまま真っ赤な右腕で相手に触れようと手を伸ばす。しかしガイはジャンプしそれを避ける。
空ぶったノーズの伸ばした右手からは液体が溢れている。
その液体は地面を溶かして湯気を出す。
ノーズは次に左手を上に伸ばし、煙のようなものを飛ばす。
しかしガイは大きく息を吸い込んで、煙に向かって息を吹きかける。
その威力はまるで突風だ。
煙はノーズに直撃した。
大丈夫か?と思ったが、煙が晴れるとノーズはなんともない様子で立っていた。
「そこまで!」
少年が戦いを中断する。
先程戦っていた二人は握手をし、お互いに反省点を語り合っていた。
「ノーズは熱を出す力があり、ガイは[鬼]という種族で、筋力を通常の何倍も上げることができます。」
大体は予想通りだ。だから、ノーズが最初にガイの攻撃を受け止めた赤い光は圧だろう。
あれだけは他の攻撃と違っていたからな。
そして次の戦い、次の戦いと勝負が始まっていった。
セインという女性は透明化。
竜と人間のハーフであるギランは、戦いが始まった瞬間に竜の姿に変身し、空を飛んだり、火を吐いたり、大きな爪で、地面を掘り返すほどの引っ掻きをしていた。
もう一人いた鬼のカーズの相手は、シールドのようなものを出す、コトという女性だった。
シールドは守りだけではなく、細長くして剣のようにしたり、細かくしたシールドを相手に飛ばしたりできるみたいだった。
しかし中でも驚いたのは、[ツイン]と呼ばれる人達のことだ。ツインと呼ばれる二人は記憶、景色、思考、全てを共有することができ、戦うときも生活も二人で一人のような存在らしい。
しかしデメリットもあるらしく、片方が受けたダメージはもう一人の方にも反映みたいだ。
そしてそのツインであるランとロンの相手は、幹部であるアランだった。
ランとロンは二人という利点を生かし、多方向から攻撃を試みるが、擦りもしない。
しかし俺にはアランが何をしているのか分からなかった。ただの身体能力にしては高すぎる。
ランとロンも圧を使い、もの凄いスピードで攻撃をしている。
しかし当たらないのだ。
「アランの能力は身体能力を上げる力です。」
困っていると横で見ていたレフィアが教えてくれる。
「現在は最大で通常の八倍まで身体能力を上げることができるそうです。しかし倍率を上げれば上げるほど、使い終えた後の反動も大きいんですけどね。」
なるほど、反動というのは動けない、もしくは体にダメージがいくのだろうか。
「あれはそうですね、四倍といった所でしょうか。」
あの身体能力で四倍か。あの上に更に四段階あるとは。流石幹部といったところだろうか。
すると、バチン!という音が鳴る。
ついに当たったのかと思ったが、
「この辺でいいだろう。」
そういい両手で二人の攻撃を受け止めていた。
「「いやー、強すぎますよアランさん。」」
そういいランとロンは笑いながら離れていく。
「お前たちも悪くはなかったが、攻撃が短調過ぎるな。ただ速くするのではなく、変化を混ぜないと当たらないぞー。」
そうアドバイスをしアランはこっちに向かってくる。
「僕たちの力については、ある程度分かってもらえたと思います。」
ああ、たしかに凄く勉強になった。
今戦ってくれた全員の力はとりあえず頭に入っただろう。
「最後はレフィアなんですけど。」
アランはそういい気まずそうにこっちを見る。
まあこうなるだろうとは思っていたけどな。
「功善様、私と手合わせしてくれませんか?」
やっぱりか。
「まあ構わないが。」
薄々そんな気はしていた。
自分のことをあまり話さなかったのは、このためだろうか。
もしかしたら、俺の最高幹部としての立場を一番良く思って無かったのはレフィアなのかもな。
しかしアランの幹部の力を見て、勝てるなんて誰が思えるだろう。
「では、準備を始めてください。」
アランがそういい、レフィアと俺は戦闘準備に入る。
「本気で来て下さいね?」
そう言ったレフィアの笑った顔を
俺は初めて見た。
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