第三話 部隊

【部隊】


魔王様に俺の部屋を案内され別れた後、俺は自分の能力について考えていた。

なんでもこの世界では全員が能力を持っている訳ではないらしく、親の腹の中に命として誕生した瞬間からすでに、能力を持つ子と持たない子で別れるらしい。

だが俺は日本で生まれた時から能力を持っている訳ではなく、この世界に転生が決まった瞬間から能力を持つ人として転生して来たってことだ。

そして、この世界には能力以外にも地球では考えられなかった力が二つほどあるらしい。

[圧]と[種族]だ。

圧とはどんな生物にも宿っている力で、それを極めることで、能力者にも引けを取らない力を持てるという。

そして種族だ。俺は人間なので他の種族より知能が高いくらいしか取り柄はない。

他に竜、エルフ、ウィッチなど様々な種族がいるみたいだ。そして二つの種族の力を持つハーフもいるみたいで、最高幹部のイズハとギンはハーフらしい。

「にしても、俺の能力はなんなのだろうか」

能力は宿った時から、自分で理解している訳ではない。何か力を込めたり、感情によって無意識に発動することで自分の能力を知る人が多いみたいだ。

中には他人の能力を引き出す能力なんてものもあるみたいだが、残念ながら魔王軍にはその能力を持ったやつはいないらしい。

ある程度この世界の力について魔王様には教えてもらい、後は自分でなんとかやってみるとは言ったものの中々難しいな。力を込めたり、感情によって無意識にか。

試しに手や足に力を込めて自分の能力を探している時、部屋のドアがノックされる。

「功善様、いらっしゃいますか?」

誰だろう、初めて聞く声だ。

それに功善様ってことは自分よりも立場が下の人なのかもしれない。

「あぁ、いるよ」

とりあえず返事をし相手の反応を待つ。

「あ、私は今日から功善様の部下に配属されましたレフィアと言います。少々話があるのですが宜しいでしょうか?」

ドアの外から聞こえてきたのは、とても綺麗な女性の声だった。

これは部屋に入ってもいいですか?ってことだよな。このまま話をするのもおかしいだろうし。

「わかった、どうぞ」

そう言い承諾をすると、ゆっくりドアが開けられ俺と同じくらいの身長の女性が入ってきた。

「改めてレフィアと言います、宜しいお願い致します。」

そう言って笑顔で頭を下げた彼女を見て一瞬で人間ではない分かった。

背中から羽が生えていたのだ。

鳥類だろうかと一瞬思ったが、羽が生えていること以外は人間とそっくりだ。

さっき言っていたハーフなのかもしれない。

「俺は冬馬功善だ。部下と言っていたが、話を聞かせてくれ。」

この人についても聞きたいことは沢山あるが、まずは話を進めよう。

「はい、まずはこの魔王軍の部隊についてお話しします。」

部隊か、確か魔王様も他の最高幹部三人に同じことを言っていたな。

「この魔王軍は、魔王様の下に功善様を含めた四人の最高幹部がいます。そして、その最高幹部四人にそれぞれ二人の幹部が付いています。それが私ということです。」

なるほど、最高幹部や個人ではなく、下のものを含めたチームとして行動するわけか。

「そしてその幹部の下に各部隊それぞれ八名の頭がいます。そしてさらにその頭の下には、人によっては違いますが、約三十人の兵士がいます。」

なるほど、その計算でいくと一つの部隊は俺を含めた二百五十一人で構成されているということになる。

しかし多いな。そんな人数をまとめられる自信なんてないんだが。

「あ、でも安心して下さい。功善様が命令を下すのは幹部である私達にだけですので。」

つまり俺が下した命令は幹部、頭を通って全員に届くわけか。確かにそれなら大丈夫そうだ。

「ある程度部隊については分かって頂けたと思うのですが、何か質問はございますか?」

「いや大体は理解した、ありがとう。」

一つの部隊にそんなにも力があるとは思わなかったが、これはあいつらを滅ぼすうえでは良い戦力だ。

「それでは私についてきてもらっても宜しいですか?功善様の部隊、[フォース]の方々が集まっています。そこで、新最高幹部として登場してもらいたいのですが。」

いきなりか、かなり緊張するが行かない訳にもいかないだろう。しかし最高幹部が能力を分かっていない状態で指揮なんてとれるのだろうか。

今だって兵士の一人にすら勝てないだろうに。

「分かった、とりあえず行くよ。」

「ありがとうございます。では付いて来て下さい。」

いきなり今後を決める山場になってしまった気がするが、

(私の能力でみた君はとても強かった)

未来が見える魔王様がそう言ってくれてたんだ。

部屋を出てドアノブを握り後ろでドアを閉める。

自信を持とう


こんなのは恐怖でもピンチでもない


あのときに比べれば


前を歩くレフィアの後をついていく。

何か違和感を覚え後ろを向くと、さっき俺が座っていた椅子が見えた。

つまりドアがなくなっていたのだ。

すぐにでも色々確認したかったが、レフィアが先に行ってしまったので後回しにすることにした。


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