第二話 新たな世界
【新たな世界】
目を開けると、俺は小さな部屋に立っていた。
ここはどこだろう・・・確か俺は死んだんだ。日本で。そして・・・ここにいる。その間に何かがあった。しかしそれは思い出せない。
けど一つだけ分かっているのは、俺は転生したんだ。
これだけははっきり脳が覚えている。
そして何故だろう、とても気分が良い。
思い出せないその間に何かいい事でもあったんだろうか。
まあいいか、この世界で俺がする事はもう決めている。どうせこの世界にもいるんだろろ。偽善者面したクズが。
そいつらを根絶やしにして、そのクズ共を信じる愚かな奴等も消してやろう。
あー楽しい。こんなに夢広がる想像があるだろうか。
「ふーっ」
まあとりあえず落ち着こう。
まずやるべき事はこの世界を知ることだ。とりあえずこの建物を調べるか。
ドアを開け廊下に出る。部屋の中もそうだったが、中々綺麗で頑丈そうな建物だな。
廊下を渡り階段を登る。すると奥の部屋から何か声が聞こえてきた。日本語では無いみたいだが意味は分かる。転生時にこの世界の言語はもう覚えているのだろうか。ドアの前に立ち、少し話を聞いてみる。
「魔王様はいつ来るんだ?」
「私が知ってるわけないでしょー」
「まあ待てよ、まだ五分も経ってないぞ」
魔王?なんかそんな言葉さっき聞いたような・・・。
「待たせたな」
そんなとき、とても低い声が聞こえてきた。
「あ、やっときた」
「おい無礼だぞ!頭を下げろ!」
やっときたってことは、今のが魔王なのだろうか。声は割と若かったように感じるが。
俺の想像している魔王とは結構違うのかもしれない。
「頭を上げろウィルイン、私とお前らの間にそんな堅苦しさは要らんと何度も言ってるだろう。」
これもまた俺の想像している魔王とは違うな。
もっと独裁者っぽいのをイメージしていたんだけどな。
「まあいい、今回君達を呼んだのは新たなメンバーについてだ。ドアの前にいる者入って来なさい。」
バレている。音は出してなかったのに。
けど新たなメンバーってことは、入っていきなり殺されるなんてことはないだろう。
緊張するがとりあえず入るか。
ガチャッ。
ゆっくりドアを開け中に入る。
「どうも」
全員の視線が一斉にこちらに向けられる。
「よくきたね、遥々遠い所から」
魔王と呼ばれていた人物が俺に言ってくる。
見た目は想像していたものと全く違っていた。身長は185センチ位だろうか。年も四十前後と結構若そうに見える。
そして普通に人型だ。本当にこれが魔王なのだろうか。
だが、遥々遠い所からってことは、俺が日本から転生してきたってこと知っているのかもしれない。
「新しいメンバーってこの人ー?なんか弱そー」
いきなり失礼なことを言ってくるこの女は、年は俺と同じくらいに見える。白い瞳に白い肌、白いショートの髪を持つこの女も、魔王の部下になんて見えない。
「魔王様!この方は?」
この人は先程ウィルインと呼ばれていたやつだろう。眼鏡といい敬語といい、しっかりしてそうなやつだ。
問題は次だ。
「誰だっていいじゃねーか。俺らに会わせたってことは最高幹部ってことだろ?よろしくな!」
そう言い手を伸ばしてくるこの男は魔王よりも背が高く筋肉だって見たことがないほどガッチリしていた。この中では1番強そうな人だ。
とういか、明らかに人ではない。
伸ばしてきた大きな手に両手で返す。
握手をしただけで力を感じる。
「ああ、ギンの言う通りだ。彼は今日から我ら魔王軍の最高幹部の四人目として仲間になった功善君だ。みんな仲良くね」
この人は一体俺のことをどこまで知っているのだろう。この三人を呼んでいたってことは俺が転生してくるのも知ってたってことだ。
気になるが今は置いておくか。
「功善君、君も簡単な自己紹介を頼むよ」
自己紹介か、どこまで話せばいいだろう。転生してきたこと、日本でのこと、これを言うべきなのだろうか。
「冬馬功善です、この組織やここにいる人達のことなど分からないことが多いですが、これから宜しくお願いします。」
転生や日本のことは伏せておこう。言ってもメリットは無さそうだし、安易に自分の情報を漏らすのはやめておく。
「うん、よろしくね功善君。さっそく私についてきてくれ。君たち三人は各自の部隊に戻っていなさい。」
そう言われ、三人は立ち上がり部屋から出ようとした。
「まだあまりよく分からないが、宜しくね功善君」
「よろしく〜」
「よろしくな功善!」
そう言い残し三人は部屋から出て行った。
「さあ付いて来なさい。」
そう言い魔王は奥の扉から出て行ってしまう。
とりあえず付いて行ってみる。三分ほど歩いて屋上に出た。
かなり大きな建物だな。
そこから見える景色は霧にかかった山だけだった。魔王軍の本拠地、そう言われると納得するような場所だ。
「功善君、色々聞きたいことがあるだろうけどまずは魔王軍へようこそ。」
そう言い両手を広げて歓迎してくれる。
「君が魔王軍に来ることは私は知っていたんだ。私の能力によってね。」
能力!?確かそうだった。この世界は俺が期待している通りの世界だと誰かが言ってたな。
それが誰かは覚えていないが、実際に能力なんてものがあると言われ、そんなことはどうでも良かった。
「能力ってどんな能力なんですか?」
つい聞いてしまう。能力があると知りテンションが上がってしまっているみたいだ。
「私の能力はね、未来を見る力さ。」
未来を見る?いきなりとんでもない能力を聞かされ驚いたが、魔王なんてレベルなら有り得る話だろう。
「私はね未来を見たんだ。正義に不満と苛立ちを持つという能力者が、私の仲間になるというね。」
正義に不満と苛立ちを持つ能力者?それは間違いなく俺のことだ。
しかも能力者ってことは、俺にも能力があるのか。
「どんな能力かはまだ私も分からない。だけど私の能力で見た君はとても強かった。だから最高幹部に任命した。色々混乱することも多いだろうけど、改めて魔王軍へようこそ。」
そういい魔王様は握手を求めてくる。
「はい、こちらこそ宜しくお願いします。」
何度でも思い出すだろう、死ぬ間際の俺を笑っていた奴等を。
自分らの都合の為に、無関係の人を犠牲にしたあいつらを。
これが復讐への第1歩だ。
俺は魔王様の手を強く握った。
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