第49話 アルバイン大陸

 帆を張って二日目に、牽引用の魔物を捕まえ航海は順調に進んで俺たちの前にようやくアルバイン大陸が見えてきた。


 長かった。






 ってほどでもないか。

 魔王の城からここまで1か月もかかってないのだから。


「こっちにだれか近づいてくるわ。ルミエ、帽子をかぶってなさい」


 ルミエの頭には小さいが角が生えている。無用な衝突を避けるためには隠しているのが一番いい。ルミエはリビア大陸の港町で買った麦わら帽子みたいなものを目深にかぶると、大きな船が近づいてきた。


 鎧甲冑に身を包んだ兵士の姿が複数見える。


「貴様ら何者だ」


 まだ100メートル以上も離れたところから、リーダー格の男が声を上げる。それにこたえる様にエレンが船首に立つ。


「私の名はエレン。勇者エレンである!!」


 彼女はそう口にすると、ふだんは仕舞い込んでいる聖剣を高々と掲げた。

 太陽の反射ではない神聖な光が剣身からぶわっと広がった。それを目にした兵士たちが一斉に傅いた。


「おおお、勇者エレン様。ご帰還お待ちしておりました。どうぞこちらへ」


 船が横付けされて、俺たちは巨大な船の甲板に足を踏み入れる。その際、不審者を見るような視線を浴び去られるが、エレンが俺たちのことを同行者として説明してくれたことでこの場は収まった。


 船は港湾を守護する王国のものらしく、俺たちは兵士たちの船で港に入った。そこで俺たちは宿を与えられて、王国より迎えが来るまでの数日待機することとなった。


「なあ、エレン。俺たちも行く必要はあるか?」


 宿の食堂で食事をしていた。

 ぶっちゃけ、エレンの作る飯の方がうまい。


「別れても問題はないが、君は我々の魔王との戦いに巻き込まれた被害者なのだ。王都へ行けば、それなりの身分や生活費くらいはもらえるだろう。ルミエはリュウについてくるだろ」

「はい。もちろんです」

「けど、大丈夫なのか?」


 俺はルミエの方を見た。

 帽子をかぶっていればわからないけど、ルミエは厳密に魔族とは言えなくとも人族とも言えないわけだ。


「問題ない。魔族特有の気配も感じないからな」

「そうか、だったら、王都までついて行くか」


 そして数日後、迎えの馬車に乗り俺たちはエレンを魔王討伐に差し向けた王都に入ったのだ。


 

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