第48話 伝説の名槍の使い道

 見渡す限りの青い海と青い空。

 それだけ聞けば、まあ悪くはないんだが俺たちは端的に言って漂流している。


 これもすべてアホエレンが雷魔法でクラーケンもろとも牽引用の魔物まで殺してしまったせいだ。

 彼女のチートな力で別の魔物を捕まえれることができれば話は早かったけど、手ごろな魔物がいなかった。

 

 不幸中の幸いは、雷撃を浴びて浮かび上がった無数の魚がいるので食べるものには困らないし、魔法の水もあるので死ぬことはない。

 だが…、


「エレン、いい加減どうにかしてくれ」

「まったく君はいつでも他人に頼ってばかりだな。少しは自分でどうにかしようとは思わないのか」

「言ってることは正論だけどな。誰のせいでこうなったと思ってるんだよ。もう三日だぜ。三日」

「リュウ、落ち着いて」

「ルミエもなんか言ってやれよ。このバカ女に」

「なんですって!」

「ああ?やんのか、こら?勝負にならないぜ」


 俺が瞬殺されるからな!!


「せっかくストレージがあるんだからさ、なんか便利なもの入れてないのかよ。ほとんど食べ物しか入ってないし」

「うるさいな。おかげで食べるものに困らないんだからいいでしょ。それに、食べ物だけじゃないわよ。包丁もまな板も鍋もあるわよ」

「結局、食べ物だろうが」

「ほかにも着替えとか、タオルとかあるわよ。あんただって使ってるでしょ」


 おかげで海上にもかかわらず、べたつく肌をきれいさっぱり流させてもらったりしている。ん、っていうか、タオルか。


「タオルあるんだよな?」

「今言ったでしょ」

「帆船にするか?」

「帆船ってなんですか?」


 山奥にひっそり住んでいたルミエは知らないらしいので、詳しく説明する。


「よし、タオルとか布類を全部出せ。それと、何でもいいから柱を作りたい。この際氷の柱でもいいぞ」

「そんなことしなくても槍が数本あるわ」


 彼女がストレージから槍を数本と、無数の布を取り出した。


「あの、裁縫得意なんで僕がやります」


 さすがは男の娘、女子力たけぇな。

 そんなわけで、エレンが取り出したタオルをルミエが縫い合わせてパッチワークの帆ができる。槍を船に固定する。


「って、随分立派な槍だな」

「ああ、それは。ロンギヌスの槍と、カラドボルグの槍、あとなんだったっけ」

「……そんな御大層なものを使っていいのか」

「私には必要ないし」


 そういう問題か?

 聞くに相当な名槍だ。

 

 とにもかくにも、名槍を使って小舟をなんちゃって帆船に作り直した。固定部分はエレンの魔法で固定したから強度もばっちりだ。


「で、風は?」


 波もなくて穏やかなのはいいけど、しばらく凪だった。


「エレンに任せる!!」

「あほか!魔力がいくらあっても足りないわよ」

「そうじゃなくて、この船をけん引できる魔物がいるあたりまででいいんだ。ずっと漂流しててもしょうがないだろう。それに、風が吹いている間は、魔法使わなくてもいいからさ」

「な、なるほど」

「さすがです!」


 ルミエちゃんがそういって俺の手を握る。

 うん、顔が近い。


「よし、出発しようぜ!!」


 俺たちは三日間の漂流を経て、ようやく動き出したのだった。


「そこは、エレンに任せる。進行方向に向かって風があるときはそのままでいい。ないときは風を起こしてくれ」


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