第44話 魔眼の男の娘もチートじゃないか
俺たちの旅は一気に加速した。
馬のような魔物でジップホースというのがいたのだが、エレンが力づくで捕獲して、そいつらをルミエが魅了した。制御が苦手といっても、知能の低い魔物であれば余裕でコントロールできたらしい。
恐ろしい鬼っ子である。
まあ、そんなわけで、俺たちはジップホースに乗って街道をひた走った。
問題は俺に乗馬のスキルがなかったことで、仕方なくルミエと相乗りした。彼女?の場合は乗馬スキルというよりも、魔眼で直接コントロールしているので必死にしがみついていればいい。
ドドドドドドっと蹄の音を響かせて時速60キロくらいでひた走る。はっきり言って異常な移動速度だ。競馬じゃないんだから、短距離走でもなく普通の馬はそんな速度で走り続けることはできない。
だが、そこは異世界の魔物である。
この速度で休みなく永遠走り続けるのだ。
「気持ちいいですね」
近い近い!!
手綱を握るルミエが後ろを振り返ってそんなことを言うけども、風の音に声がかき消されないようにと、顔がくっつきそうなほどの距離で話しかけられて俺は思わず赤面する。
ルミエが男だというのはわかっていても、見た目美少女なので俺の中の男の子が反応してしまうのだ。
しかも、密着していると風に乗っていい香りが漂ってくる。
俺たちは毎日キャンプというのに、エレンが風呂を用意するためいつだって体はフレッシュになっている。
正直に言おう。
もう、男の娘でもいいんじゃないかと思っている。
だって、めちゃくちゃかわいいのだ。
エレンはなんていうか、そっけない感じのクールビューティぶっているが、ルミエは甲斐甲斐しく俺のことを世話しようとしてくれる。一般人と比較して能力が低すぎるというのもあるし、ルミエの前で一度気絶してしまったこともあるのだろう。
朝は起こしに来てくれるし、魔物が出たときには、俺の前に両手を広げて守ろうとしてくれる。これでは立場が逆じゃないかと思うんだが、”モテ”とは真逆の生きてきた俺としては、見た目美少女にそんな風にされて色めき立たないわけがない。
「町が見えてきた」
少し前を走っているエレンの声が聞こえてくる。それと同時に、彼女は馬の速度を落としたようで、こちらと並走する形になった。
「おそらくここが港町だろう。潮のにおいがする」
俺は確認のためにリモコンを操作して、dメニューの天気図で現在地を確認する。間違いなくサルーナというリビア大陸東岸の町の近くがマップの中心になっていた。
「あってるよ。サルーナって町らしい」
「ここからは歩こう」
「そうですね」
馬を降りた俺たちは前方に見える街に向かって歩き出す。
いくつかの村を素通りしつつ見てきた村と違い、前方に見えるのは石造りの外壁のようなものに覆われていて、町の規模の大きさがうかがえる。
これまでの村でも十二分に共同体として機能している”魔族の村”には驚かされてきたけども、ここまで立派なものはなかったので、より衝撃は大きかった。
街道から続く先には、巨大な門があり門番らしき魔族もたっていた。今までは着ているのかどうかも怪しいような服だったが、その門番は鎧を身に着けていた。
人より体格のいい魔族である。
つまり、人族より奪ったものではなく、彼ら自身で作っているということである。
その事実にエレンの顔がゆがめられた。
「もはや、人族に未来はないのかもしれないな」
「何言ってるんですか!魔王様はそのようなことは考えていませんよ」
「かもしれん。かもしれんが…」
「とりあえず行ってみようぜ。まずは船だろ」
「そうですよ、海が初めてだから楽しみです」
そういって、俺の腕にルミエは腕を絡めてくる。なんだろう、ほのかに柔らかいものに当たっているような気が……。
この子はやっぱり女の子じゃ…。
ん。
あれ?
おかしくないか?
もしかして、俺ってすでに魅了にかかってるってことはないか?
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