第42話 新たな仲間

 目が覚めたら村長さんの家の中で、心配そうに少女が俺の顔を覗き込んでいた。


「大丈夫ですか?」

「ああ、なんともない」


 強がりを言って立ち上がるが、穴があれば入りたい気分だ。かっこよく助けたつもりが、魔力枯渇で気絶するとかダサすぎる。

 

「エレンは?」

「すみません。僕のせいで、ほかの人はここにはいません」

「…というと?」

「あの、リュウさんには僕の魔眼が通じないみたいですけど、ほかの人にとって僕の目は危険なんです」


 彼女の説明によると、ヴァンパイアの魅了のような効果があり、他人をコントロールできるらしい。ただ、彼女はその力を制御しきれないせいで、自分の感情を伝染させてしまうそうだ。

 死を強く望んでいた彼女と目を合わせた俺は、一歩間違えば自殺してもおかしくなかったらしい。

 そんな呪われた力があるせいで、彼女は虐げられ苛められたいたということだろう。何度か目をつぶそうとしたそうだが、それはうまくいかなかったそうだ。


「なら、俺たちと一緒に来るか?」

「…え?」

「俺には君の魔眼ってのは通じないみたいだし、この村に居場所がないんだろ。下ばかり見て、石を投げられて生きるよりずっとよくないか?」


 俺はただ思い付きを口にしただけだったのだが、その言葉に雷を受けたような衝撃を受けて少女の目から大粒のしずくが零れ落ちた。


「…………いいんですか?」

「いいよ」


 勝手に決めてしまってエレンに怒られないかと一瞬脳裏によぎったが、あいつは勇者だし、たぶん大丈夫だろう。

 少女の両親はすでに他界しているらしいし、村でも持て余していたそうだ。だから、村の人たちにその話をしても喜ぶ人はいても引き止める人は一人もいなかった。それはとても悲しいことだけど、居場所が見つかったならそれでいいだろう。


 こうして魔眼の少女が同行することが決まった。

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