第41話 少女は魔眼の持ち主で

「っ痛ぇー!!なにすんだよ!!」


 思わず叫んだがさほど痛くはなかったので、二回転したところで立ち上がってにらみつけると、少女はしくしくと泣き出した。


「あ、いや、おい。何で泣く?」

「なんで…なんで、助けたの?」


 非難するような目で見られて、ようやく理解した。

 この子は死にたかったのだ。それを邪魔した俺のことが憎いのだろう。だけど、死は解決にはならない。


「うるせぇ。死んだらいろんな奴に影響があるんだよ」

「そんなことない。僕が死んでも、誰も悲しまない。それどころかきっとみんな喜ぶもの!!」


 彼女の叫びが俺の耳朶を打つ。彼女の絶望はたぶん根深い。いじめられていたのは間違いないけども、よそ者の俺が何かを言ったところで意味はないだろう。言葉一つで死にたい奴の気持ちを変える力なんかあるわけがないんだから。

 

 だから、俺は何も言えずに少女をただ見つめていただけだったのだが、力強い赤い瞳でにらみつけていた少女ははっとしたような表情になった。


「なんで?」

「ん?」


 少女の気配の変化においていかれて、俺は間の抜けた声を出した。


「なんで、平気なの?なんで、僕の目を見ていられるの?」

「どういう意味だ?」

「僕の魔眼を見て、何でそんなに普通でいられるの?」


 少女が不思議そうに覗き込むが、俺にはきれいな赤い瞳にしか見えない。この村の人間に共通する赤い目。炎とも血とも異なる原色の赤。不思議な輝きを感じられるが”魔眼”というような力があるとは思えない。


「何を言っているのかわからんがーーーー」


 とここで、いつものように俺は魔力枯渇で気絶した。

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